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建設廃棄物⑩

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

廃棄物処理法第21条の3第3項(下請負人が行う廃棄物の運搬に係る例外)

 建設工事に伴い生ずる廃棄物(①環境省令で定めるものに限る。)について当該建設工事に係る②書面による請負契約で定めるところにより下請負人が自らその運搬を行う場合には、第七条第一項、第十二条第一項、第十二条の二第一項、第十四条第一項、第十四条の四第一項及び第十九条の三(同条の規定に係る罰則を含む。)の規定の適用については、第一項の規定にかかわらず、当該下請負人を事業者とみなし、③④当該廃棄物を当該下請負人の廃棄物とみなす

 今回は、廃棄物処理法第21条の3第3項の「書面による請負契約で定めるところ」の詳細を解説します。

② 請負契約の定め
 廃棄物処理法の条文に「建設工事に係る書面による請負契約で定めるところにより」とあるとおり、元請事業者と下請事業者の間で、書面で交わした合意事項が存在することが大前提となります。
具体的には、請負契約の中で定めた、「建設現場で発生した建設廃棄物については、下請が元請の指定する場所まで運ぶ」という取り決めを指します。
「請負契約」自体は当事者間の合意のみで有効に成立しますが、廃棄物処理法第21条の3第3項の特例の適用を受けるためには、「誰が」「何を」「どこまで」運ぶのかを、「書面」で証明することが不可欠となります。
 しかしながら、実際の建設工事の下請負契約においては、請負契約書が作成されることはそれほど多くなく、発注書と受注書のやり取りのみで、下請負契約が成立していることがほとんどです。請負金額が500万円以下という、法第21条の3第3項の対象となる小規模な建設工事であれば、なおさらその傾向が強まります。
 「請負契約書」によって、当事者間の合意事項を外部に証明させることが理想ではありますが、小規模な工事のためにわざわざ請負契約書を作成することは煩雑すぎます。そのため、環境省は、下記の通知で、「請負契約書」の代わりに「請負契約の内容を証明する書面」を作成・運用する方法でも良い、という判断基準を示しました。

平成23年2月4日付 環廃対発第110204005号 環廃産発第110204002号通知

 下請負人が法第21条の3第3項の規定により事業者とみなされるのは、環境省令で定める廃棄物について建設工事に係る書面による請負契約で定めるところにより自ら運搬を行う場合に限られることから、運搬を行う廃棄物が環境省令で定める廃棄物である旨について個別の建設工事における請負契約で定める必要があること。ただし、建設工事が基本契約書に基づくものである場合、建設工事に伴い生ずる廃棄物が(1)に掲げる要件に該当するものであるか否かについては個別の建設工事ごとに判断が必要であり、請負契約の基本契約書の締結時点では特定が困難であること。そこで、請負契約の基本契約書等の建設工事に係る書面による請負契約において、個別の建設工事ごとに次の事項を記載した別紙を交わす旨を記載し、個別の建設工事ごとに別紙を交わすことで足りるものとすること。別紙の作成については、別記様式を参考とすること。
① 元請業者及び下請負人の氏名又は名称、住所及び電話番号
② 当該廃棄物を生ずる事業場の所在地
③ 発注者の氏名又は名称及び住所
④ 運搬する廃棄物の種類及び一回当たりの運搬量
⑤ 運搬先の施設の所在地
⑥ 運搬先の施設について元請業者が所有権又は使用権原を有する旨の元請業者の誓約
⑦ 運搬を行う期間
⑧ 運搬を行う従業員の氏名
⑨ 運搬車の車両番号
⑩ 当該建設工事が維持修繕工事である場合には、請負代金の額が500万円以下である旨の元請業者の誓約
⑪ 当該建設工事が瑕疵補修工事である場合には、建築物等の引渡しがされた年月日及び請負代金相当額が500万円以下である旨の元請業者の誓約

(2020年07月)

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