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建設廃棄物⑬

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 通知ではありませんが、平成22年の廃棄物処理法改正に伴い、法第21条の3第3項に関して環境省がQ&Aを公開しています。
「建設系廃棄物に関する処理責任の元請一元化の例外」
http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/qa.html
1つ1つのQ&A自体は簡潔ですが、実務的に重要なポイントが簡潔にまとめられていますので、こちらにも解説を加えておきます。

Q1.法第21条の3第3項の「請負契約」とは誰と誰との間で締結された契約を指すのですか。

A1.元請業者と1次下請負人との間で締結された契約を指し、下請負人と下請負人の間で締結された契約は含みません。

※解説
 「元請事業者」と「1次下請事業者」の間で締結された請負契約において、「契約の対象となる建設工事」や「現場から廃棄物を運搬する目的地」等を具体的に決めておくことが必要となります。請負契約でそれらの詳細を決め難い場合は、平成23年2月4日付 環廃対発第110204005号 環廃産発第110204002号通知で、環境省が「別記様式」として示した書面に準じて、法第21条の3第3項に基づく運搬であることを証明しなければなりません。

Q2.下請負人が携行しなければならない別紙の押印については、建設工事の責任者又は基本契約書の締結者とされていますが、個人名ではなく、例えば「○○所長」のように役職名の印でも構いませんか。

A2.基本契約書と別紙を符号できればよいことから、基本契約書において、個人ではなく「○○所長」が法第21条の3第3項に基づき収集運搬することとされているのであれば、役職名でも問題ありません。

※解説
 そもそも当事者の押印が法律の要求事項ではありませんので、社内規程等で契約書などに押印する権限を委任された人であれば、肩書や役職名に関係なく、誰が押印したところで対外的な効力は変わりません。

Q3.別紙は、1回の収集運搬につき1枚用意する必要がありますか。例えば、3立方メートルの廃棄物を3回に分けて収集運搬する場合には、3枚の別紙が必要になるのですか。

A3.3回の収集運搬について、1枚の別紙にまとめることは可能です。ただし、その場合であっても、1回に収集運搬する廃棄物の量がそれぞれ1立方メートル以下であることが分かるよう別紙を作成する必要があります。

※解説
 「請負契約に基づく運搬であることを証する書面」は、運搬の際に車両に備え付けるべき書類であり、運搬のたびに新しい書類を作りなおさないといけないわけではありません。
 ただし、別の元請事業者から請け負った工事現場から廃棄物を搬出する場合は、その元請事業者との請負契約に基づく運搬であることを証する書面を別途作成しなければなりません。

Q4.法第21条の3第3項の適用を受け、下請負人が自ら運搬する場合、車両表示はどのように行うのですか。

A4.この場合において、当該下請負人は、「事業者」の立場を有していることから、「事業者」としての車両表示を行うこととなります。

※解説
 このQ&Aで書かれている車両表示とは、排出事業者が産業廃棄物を自ら運搬する場合に、車両側面に「産業廃棄物収集運搬車」と「社名」を表示しなければならないという義務のことです。
 下請事業者は建設廃棄物の本来の排出事業者ではありませんが、法第21条の3第3項の適用を受け廃棄物を運搬する場合に限り、(排出)事業者とみなされますので、運搬の際には、排出事業者と同様に、車両側面に産業廃棄物収集運搬車等の表示を行わねばなりません。

 表示例の詳細は、下記の環境省が公開しているURLでわかりやすくまとめられていますので、そちらもご参照ください。

環境省「産業廃棄物収集運搬車への表示・書面備え付け義務」
http://www.env.go.jp/recycle/waste/pamph/

(2020年10月)

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