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建設廃棄物⑭

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前号に引き続き、廃棄物処理法第21条の3第3項に関して示された環境省のQ&A「建設系廃棄物に関する処理責任の元請一元化の例外「(http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/qa.html)」を解説します。

Q5.法第21条の3第3項の適用を受け、下請負人が自ら運搬する場合、「事業者」としての書面の備え付けが必要となるのですか、それとも「法第21条の3第3項に規定する場合において第18条の2に規定する廃棄物の運搬を行う下請負人」としての書面の備え付けが必要となるのですか。

A5.この場合における下請負人は、「法第21条の3第3項に規定する場合において第18条の2に規定する廃棄物の運搬を行う下請負人」及び「事業者」の双方の立場を有することから、双方の立場として書面を備え付けることが必要となります。

 このQ&Aの内容の詳細については、既に当連載で解説しておりますので、要点を簡潔にまとめます。法第21条の3第3項に基づき下請業者が建設廃棄物を運搬する場合、「元請事業者との請負契約に基づく運搬であることを証する書面」と、「(排出)事業者としての書面」の両方の携行が必要でした。
 排出事業者として携行が必要な書類は、廃棄物処理法施行規則第7条の2第3項で下記のように定められています。

一  事業者 次に掲げる事項を記載した書面
 イ 氏名又は名称及び住所
 ロ 運搬する産業廃棄物の種類及び数量
 ハ 運搬する産業廃棄物を積載した日並びに積載した事業場の名称、所在地及び連絡先
 ニ 運搬先の事業場の名称、所在地及び連絡先

 上記のうち、「ハ」の「運搬する産業廃棄物を積載した日」と「ニ」の「運搬先の連絡先」は、環境省が平成23年2月4日付 環廃対発第110204005号 環廃産発第110204002号通知で提示された「別記様式」には含まれていませんので、「別記様式」を使用する場合は、「ハ」と「ニ」の内容を追記するか、「別記様式」とは別の書面を作成し、そこに「ハ」と「ニ」の記載をする必要があります。

Q6.建設工事に関する基本請負契約を修正するのは困難なため、発注書や注文書などに法第21条の3第3項の環境省令で定める廃棄物の運搬については下請負人が行う旨を記載することとしたいのですが、可能ですか。

A6.発注書や注文書が建設工事に関する請負契約の一部である場合には、可能です。

 請負契約に基づく運搬であることを証明する書面としては、「平成23年2月4日付 環廃対発第110204005号 環廃産発第110204002号通知の『別記様式』しか運用してはいけない」わけではなく、元請から下請への「発注書」や「注文書」に、廃棄物処理法第21条の3第3項に基づく運搬になる旨が記載されているのであれば、それらの書類を証明書として運用することも可能というものです。

Q7.平成23年2月4付け環廃対発第110204005号/環廃産発第110204002号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課/産業廃棄物課長通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」中の別記様式裏面中、「運搬を行う従業員の氏名」と「運搬車の車両番号」の記載欄がありますが、当該別記様式を取り交わす段階ではこれらの記載事項を把握することは難しく、現場で改めて追記するという運用は可能でしょうか。

A7.事前に記載しておくことが望ましいですが、事前に把握することが困難である場合には、元請業者と下請負人の合意の下、現場で記載することも差し支えありません。

 「別記様式」は法定された様式ではなく、環境省が推奨する記載例に過ぎませんので、仮に「従業員の氏名」や「運搬車の車両番号」の記載欄が無い証明書で運用をしたとしても、法律違反にはなりません。
 そのため、「元請事業者との請負契約に基づく運搬であることを証する書面」には、法定記載事項のみを記載するようにし、それ以外の情報は記載しない、という運用でも実務上は問題ありません。

(2020年11月)

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