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建設廃棄物⑮

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前号に引き続き、廃棄物処理法第21条の3第3項に関して示された環境省のQ&A「建設系廃棄物に関する処理責任の元請一元化の例外「(http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/qa.html)」を解説します。

Q8.下請負人が無許可で規則第18条の2の条件を満たさない廃棄物を運搬した場合、下請負人及び元請業者はどのような処分を受けるのでしょうか。また、下請負人が許可を持っていた場合はどうでしょうか。

A8.下請負人が無許可で規則第18条の2の条件を満たさない廃棄物を運搬した場合、書面による請負契約で定めるところにより運搬していたとしても、法第21条の3第3項に基づく運搬とは認められず、当該下請負人は無許可営業(法第25条第1号)又は受託禁止違反(法第25条第13号)等の罪に問われる可能性があります。このとき、元請業者は委託基準違反(法第25条第6号)等の罪に問われる可能性があります。
 また、下請負人が収集運搬の許可を有していた場合であっても、下請負人は産業廃棄物管理票に係る引受禁止違反(法第29条第7号)の罪に問われる可能性があり、このとき、元請業者は委託基準違反の罪に問われることとなります。
 なお、いずれの場合であっても、下請負人が不適正な運搬を行った結果、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、元請業者は措置命令の対象となり得ます。

 第1段落は、廃棄物処理法第21条の3第3項の対象とならない運搬については、下請事業者を排出事業者とみなすことはできないため、その場合は元請事業者に委託基準違反が生じ得ることを解説しています。
 第2段落は、産業廃棄物収集運搬業許可を所持している下請事業者が、元請事業者からマニフェストを交付されていないにもかかわらず、法第21条の3第3項の対象となる廃棄物と誤解をし、マニフェスト無しで運搬をした場合の法律違反の内容の解説です。この場合は、下請事業者は産業廃棄物収集運搬業者として、産業廃棄物を運搬する際には、排出事業者である元請事業者が交付したマニフェストを携行する義務があります。
 第3段落では、元請事業者の過失により、下請事業者が違法な運搬を行った結果、生活環境保全上の支障が発生、または発生するおそれが生じた場合には、元請事業者が措置命令の対象になることが解説されています。

Q9.法改正に伴い、平成6年8月31日付け衛産第82号厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知「建設工事から生じる産業廃棄物の処理に係る留意事項について」(いわゆるフジコー通知)の扱いは、どうなるのですか。

A9.当該通知は、平成23年3月30日付けで廃止いたしました。

 平成22年改正で、元請事業者を排出事業者として法律上で規定したため、平成6年8月31日付け衛産第82号通知で示された法律解釈に矛盾が生じることとなり、同通知は平成22年改正の内容が施行される日の前日付で廃止されました。

Q10.法第21条の3第1項について、元請業者と下請負人の契約により、下請負人を排出事業者とすることはできますか。

A10.できません。

 廃棄物処理法という法律によって、元請事業者が(唯一の)排出事業者と定められている以上、当事者間の契約によって、任意に排出事業者責任を移転させることはできません。その一例として、建設工事の発注者が元請事業者になり替わって排出事業者として振る舞うと廃棄物処理法違反になることについては、当メールマガジンで既に解説したとおりです。

(2020年12月)

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