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建設廃棄物⑯

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前号に引き続き、廃棄物処理法第21条の3第3項に関して示された環境省のQ&A「建設系廃棄物に関する処理責任の元請一元化の例外「(http://www.env.go.jp/recycle/waste_law/kaisei2010/qa.html)」を解説します。

Q11.法第21条の3第3項の適用を受けて下請負人が運搬を行う場合、処分の委託に係るマニフェストは下請負人が交付すればよいのですか。

A11.この場合であっても、元請業者がマニフェストを交付する必要があります。

 廃棄物処理法第21条の3第3項に基づく下請事業者の自ら運搬においては、下請は建設廃棄物の運搬に関してのみ排出事業者とみなされるだけですので、下請がその他のあらゆる局面で元請の代わりに排出事業者となるわけではありません。そのため、産業廃棄物処分業者への処理委託に伴うマニフェストについては、建設廃棄物のそもそもの排出事業者である元請事業者がマニフェストを交付する必要があります。

Q12.Q11の場合、下請負人の氏名等を運搬受託者欄に記入すればよいのですか。

A12.この場合、元請業者と下請負人の間に委託関係はないため、運搬受託者欄は空欄となります。

 まず、運搬受託者が空欄のままで良いと解釈される理由を解説します。
 上述したとおり、下請事業者は、法第21条の3第3項に基づく運搬を行っている際には排出事業者とみなされますので、収集運搬業務の受託者ではありません。下請は建設廃棄物の運搬自体は行いますが、法第21条の3第3項によって、元請と同じ排出事業者として「自ら運搬」しているとみなされます。
 そのため、下請が法第21条の3第3項に基づき建設廃棄物を運搬する場合、マニフェストの運搬受託者に掲載すべき収集運搬業者が存在しないことになりますので、A12では、「運搬受託者欄は空欄」とされています。
 法的な答えとしては上記の環境省の答えのとおりとなりますが、実務的に考えると、マニフェストの運搬受託者欄が空欄のままだと、元請事業者自身が自ら運搬しているのか、それとも下請事業者がみなし排出事業者として運搬しているのかが判然としません。
 これがどういう状況で問題の火種になるかというと、たとえば、下請による不法投棄が後で発覚した際に、「社内に運搬受託者が空欄のままのマニフェストしか存在しない」となると、「下請が独断で不法投棄をした」のか、「元請が自ら不法投棄をした」のかを立証するためには、工事請負契約等を遡って、元請は自社に責任がないことを立証する必要が生じます。
 そこでお奨めしたいのは、法的な記載義務はないものの、「運搬受託者」には「下請事業者の名称」等を括弧付きで記載(例:運搬受託者欄に「(株式会社下請建設」)と記載)し、収集運搬業務を委託した相手ではないが、実際の運搬を担った事業者として下請の名称を記録(マニフェスト)に残すということです。
 もう一手間かける余裕があるのであれば、括弧付きの運搬受託者欄に、「法第21条の3第3項に基づく自ら運搬」とスタンプなどで付記しておくと、さらにわかりやすい記録となります。
 もちろん、そこまで手間暇をかける法律上の義務はありませんので、記録の質にこだわらないのであれば、環境省の答えのように、運搬受託者欄は空欄のままにしておくのが最も簡単な方法ではあります。

(2021年1月)

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