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建設廃棄物⑰

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今回と次回で解説するテーマは、廃棄物処理法第21条の3第4項の「下請事業者を排出事業者とみなすケース」についてです。

廃棄物処理法第21条の3第4項(下請事業者を排出事業者とみなすケース)

建設工事に伴い生ずる廃棄物について下請負人がその運搬又は処分を他人に委託する場合(当該廃棄物が産業廃棄物であり、かつ、当該下請負人が産業廃棄物収集運搬業者若しくは産業廃棄物処分業者又は特別管理産業廃棄物収集運搬業者若しくは特別管理産業廃棄物処分業者である場合において、元請業者から委託を受けた当該廃棄物の運搬又は処分を他人に委託するときを除く。)には、第6条の2第6項及び第7項、第12条第5項から第7項まで、第12条の2第5項から第7項まで、第12条の3並びに第12条の5の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)の適用については、第1項の規定にかかわらず、当該下請負人を事業者とみなし、当該廃棄物を当該下請負人の廃棄物とみなす。

 「第4項」の条文を読むと、「下請事業者は、いつでも元請事業者の代わりに排出事業者となり得る」と書かれているように見えてしまいます。そうなると、同法第21条の3「第1項」の「元請事業者を建設廃棄物の排出事業者とする」という規定と矛盾が生じることになってしまいます。
 また、法律の条文からは、「第4項」が適用されるケースとして、下請が排出事業者とみなされる具体的な条件を読み取ることは困難です。
 そのため、環境省は、条文と条文に対する一般的理解の乖離を埋めるために、平成23年2月4日付環廃対発第110204004号、環廃産発第110204001号通知(通称「部長通知」)で、「第4項」の趣旨を次のように説明しています。

平成23年2月4日付環廃対発第110204004号、環廃産発第110204001号通知

第十七 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理責任を明確化するための措置
4 下請負人が行う廃棄物の処理の委託
 法第21条の3第1項の規定により建設工事に伴い生ずる廃棄物については元請業者が事業者とされることから、元請業者が廃棄物について自ら適正に処理を行い、又は委託基準に則って廃棄物処理業者に適正に処理を委託しなければならない。
しかし、元請業者が建設工事に伴い生ずる廃棄物を放置したまま破産等により消失した場合など、やむなく下請負人が自ら当該廃棄物の処理を委託するというような例外的な事例があった場合、下請負人は事業者でも廃棄物処理業者でもないことから、法に基づく規定が適用されず、下請負人により廃棄物が不適正に委託され、結果的に当該廃棄物の不適正処理につながるおそれがある。
 そこで、そのような事態を防止するため、下請負人が建設工事に伴い生ずる廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、当該下請負人を事業者とみなし、廃棄物の処理の委託に関する規定を適用することとした(法第21条の3第4項)。
 なお、この規定は、前述のような例外的な事例においても法の規定に基づく適正な処理が確保されるよう措置することとするものであり、下請負人が廃棄物の処理を委託することを推奨する趣旨ではない。

 環境省が法第21条の3第4項が適用される条件として想定しているケースは、「元請事業者が破産をし、それ以上建設工事を続けられない事態に陥った場合に、現場に残った廃棄物の処理を下請事業者の責任において行わせる」という趣旨のようです。
 実際にこのような事態が起きると、下請事業者は、元請から工事代金を受け取っていないのに建設廃棄物処理費を負担させられることとなりますので、あまりにも酷と言わざるを得ません。
 そのため、この「第4項」は、環境省が部長通知で例示しているとおり、「やむなく下請負人が自ら当該廃棄物の処理を委託するというような例外的な事例があった場合」にのみ使用される「秘密兵器」的な存在と考えた方が良さそうです。

(2021年2月)

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