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プラスチック資源循環促進法③

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 2021年8月2日に、「中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ合同会議(第9回)」が開催され、「プラスチック資源循環促進法」の政省令委任事項について議論されました。議論の模様は、YouTubeで同時生配信されていましたので、わざわざ東京へ行かずとも、冷房の効いた事務所から傍聴することができました。審議会の同時生配信は、傍聴者側のコストと時間削減に大いに役立っているのは間違いありませんが、「委員の発言が若干聞き取りにくい」「事務局の環境省職員の説明速度が異常に高速で、傍聴者の理解が追いつかない(←実際にYouTubeのコメント欄に「環境省の説明が速すぎる!」とコメントした方がいらっしゃいました)」という弊害も明らかになりました。新型コロナウイルス禍が収束した際には、審議会の開催方法は従来どおりの東京参集型に戻るのでしょうか?それとも、WEB開催が主流になるのでしょうか?個人的には、人と人とが集まって直接議論をする場には、独特の熱量や情報量がありますので、東京参集型に戻って欲しいと思っています。

 さて、今回の会議における議論の対象となった、プラスチック資源循環促進法から政省令への主な委任事項は下記の6点でした。
1.プラスチック資源循環促進の基本方針
2.プラスチック使用製品設計指針
3.特定プラスチック使用製品の使用の合理化
4.市区町村の分別収集・再商品化
5.製造・販売事業者等による自主回収
6.排出事業者の排出抑制・再資源化等
 今回は、上記の1から3の項目について、環境省が提示した原案や、今後の議論の方向性についてご紹介していきます。残りの4から6の項目は、次回のメールマガジンでご紹介いたします。

1.プラスチック資源循環促進の基本方針
 今回の会議では、環境省から方針に関する具体的な数値や項目に関する提案は出されませんでしたが、同法第3条自体に『基本方針は、海洋環境の保全及び地球温暖化防止を図るための施策に関する法律の規定による国の方針との調和が保たれたものでなければならない』という規定がありますので、それらの施策と連携、あるいは補完する内容となる模様です。

2.プラスチック使用製品設計指針
 環境省から、「プラスチック使用製品の設計に当たっての基本的な考え方」「プラスチック使用製品製造事業者等が取り組むべき事項及び配慮すべき事項」「設計認定を受けるに当たって適合すべき事項」に関する漠然とした方向性が提示されました。
 委員の関心が薄いテーマだったようで、それほど突っ込んだ質疑は発生しませんでした。他の先行法令の事例を参考にして、今後環境省内部で原案を詰めることとなりそうです。

3.特定プラスチック使用製品の使用の合理化
 同法第28条の「特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する判断基準」その他に関し、他の審議項目よりは具体的な方向性が、環境省から示されました。
 まず、プラスチック使用製品を無制限に「特定プラスチック使用製品」とするわけではなく、『提供量が多く使用の合理化の取組によってプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制が見こまれる観点、 過剰な使用の削減を促すべき観点、代替素材への転換を促す観点等から製品を指定すべき』という方向性が示されました。これについては、委員から異論は無く、一般的にも妥当な方針と思われますので、この方向で検討が進むこととなりそうです。
 次に、「特定プラスチック使用製品提供事業種」の対象として、『特定プラスチック使用製品を多く提供し、使用の合理化を行うことが特に必要な業種を指定すべき』『業種としては指定業種に該当しなくても、事業活動の一部で指定業種に属する事業を行っている場合には、その事業の範囲で対象とすべき』という方針が示されました。こちらも委員から異論はありませんでした。
 また、同法第30条の勧告や命令の対象となる「多量提供事業者」の具体的な定義については、まったく原案が示されず、『既存法令を参考に、特定プラスチック使用製品多量提供事業者の要件を規定することとしてはどうか』という、今後の検討方針が示された程度でした。

(2021年8月)

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