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申請手続きのオンライン化

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 少し古い話題になりますが、令和2年12月28日に「押印を求める手続の見直し等のための環境省関係省令の一部を改正する省令」が公布・施行され、一部の書類に関して押印が不要となりました。
 この省令により押印が不要となった書類の一覧は下記のとおりです。
・ 様式第2号の15 産業廃棄物管理票
・ 様式第5号の2 新規申請書 一体的処理
・ 様式第5号の3 資金調達・誓約書 一体的処理
・ 様式第5号の4 変更申請書 一体的処理
・ 様式第5号の5 変更・廃止届出書 一体的処理
・ 様式第5号の7 報告書 一体的処理
・ 様式第6号の2 産業廃棄物収集運搬業許可申請書添付書類

 上記のうち、多くの人にとって関わりがある書類は、「様式第2号の15 産業廃棄物管理票」だと思います。「運搬の受託担当者」と「処分の受託担当者」の氏名を明記する欄の右に位置する「押印欄」が「受領欄」へと変更されました。
 「押印不要」と聞くと、「記名や押印自体が不要」という状態をイメージするのが一般的だと思いますが、「受領欄」と名称が変わっただけですので、「産業廃棄物を受領した」証拠として、「署名(サイン)」あるいは「(記名)押印」することが推奨されていますので、実態としては相変わらず、運搬車両のドライバーが「サイン」あるいは「押印」しているケースがほとんどかと思います(苦笑)。
 「産業廃棄物管理票」以外の上記様式については、押印欄が廃止されたため、本当の意味での押印不要となりました。

 さて、上記の省令に関して、令和3年1月5日付で環境省から発出された事務連絡文書では、

1 改正の趣旨  令和2年7月に閣議決定された「規制改革実施計画」(令和2年7月17日閣議決定)において、「各府省は、緊急対応を行った手続だけでなく、原則として全ての見直し対象手続(※1)について、恒久的な制度的対応として、令和2年中に、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う」こととされている。

 とありますが、今のところ、廃棄物処理法に基づく申請手続きのオンライン化は実現していません。

 ちなみに、「(※1)見直し対象手続」とは、
『法令等又は慣行により、国民や事業者等に対して紙の書面の作成・提出等を求めているもの、押印を求めているもの、又は対面での手続を求めているものをいう。』
とされていますので、許可申請書や届出書類等の行政向けの手続きのほとんどすべてが対象に入ってきます。

 現代日本において、もっとも手続きのオンライン化が進んでいるお役所は、間違いなく「国税庁」ではないかと思います。一昔前までは、確定申告の際に「源泉徴収票」を添付することが不可欠でしたが、年々手続きの簡略化が進み、オンライン申請サービスの改良も続けられています。

 税額という数字に関する入力が中心であるため、元々税金関連の手続きはオンライン化しやすい性質があったと言えますが、「国税庁という単独の組織内だけで手続きが完結する」「情報入力や手続きに関する改良によって得られるスケールメリットが非常に大きい」ことから、一度改善が始まると、それが刺激となってさらなる改善が触発されるというイノベーションが起きやすい構造にあると言えます。

 国税庁の例を見ると、行政手続きのオンライン化を進めるためには、「書式の画一化」と「申請情報の簡略化」の2つが不可欠であると思いました。

 廃棄物処理法の行政手続きの場合、申請書に記載すべき内容が、「事業計画」といった抽象的な性質のものが多いため、対面等で行政と申請者の意思のすり合わせを行う必要性があります。また、国の行政機関だけで廃棄物行政を動かしているわけではないため、個々の地方自治体の意向によって添付書面の内容や審査レベルがバラバラになりがちです。
 こうした背景を考慮すると、廃棄物処理法に基づく行政手続きの大部分は、オンライン化をすぐに進めていくことは非常に困難と言えるでしょう。
 と、考えているところに、2021年10月8日付で公開された「プラスチック資源循環促進法の政省令案に関するパブリックコメント募集」において、同法に基づき主務大臣に申請する一部の手続きについては、「電子申請方式を可能とする」方針が示されました。廃棄物処理法関連の手続きにもオンライン化の流れが波及すると良いのですが。

(2021年10月)

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