大栄環境グループ

JP / EN

下取り回収③

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前号では、下取り回収通知の解釈の対象となるのは、「運送事業者」ではなく、「新製品の販売事業者」と考えるのが妥当であるため、販売事業者以外の者に「収集運搬業許可不要」という解釈をむやみに拡大するのは危険という問題提起をさせていただきました。

 今回から、下取り回収通知の内容とその定義を正確に吟味していきます。

平成12年9月29日付 衛産79号
 ①新しい製品を販売する際に②商慣習として③同種の製品で④使用済みのものを⑤無償で引き取り、⑥収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。

 下取り回収通知の結論である「産業廃棄物収集運搬業の許可は不要」となるためには、上記の平成12年通知文にあるとおり、6つの条件を満たす必要があります。論理的には、6つの条件をすべて満たさない限り、「産業廃棄物収集運搬業の許可は不要」とならないことがわかります。そのため、下取り回収を産業廃棄物処理業の許可無しに行う際には、慎重な判断が必要ということをご理解いただけると思います。

① 新しい製品を販売する際
 廃棄(予定)品の回収は、製品の販売との交換条件でなければならないという意味になります。新製品の販売とは無関係に、廃棄物を広く集めることだけを目的とした回収の場合は、販売とは無関係な廃棄物回収に該当しますので、産業廃棄物処理業の許可や環境大臣の広域認定等を取得する必要があります。
 では、実際に下取り回収を行うタイミングは、その製品を販売するのと同時でなければならないのでしょうか。製品の販売という売買契約自体は、売主と買主の意思が合致するだけで成立しますが、その契約成立と同時に不用品を回収するというのは現実的にはほぼ不可能です。そのため、実務的には、「製品を販売する際」は、「新製品を納入する際」や「新製品を引き渡す際」と解釈されています。
 ここで、「下取り回収をするのは、『製品納入時』あるいは『製品引渡し時』と同時でなければならないのか?」という疑問が湧きます。
 その疑問に対する答えは、平成21年3月31日に閣議決定された「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」の「Ⅱ重点計画事項」の中で、以下のように述べられています。

電子機器等の下取りに関する規制緩和要請が規制改革会議にも多く寄せられている。
 製品を販売した際に商慣習として下取り(同種の製品の無償引取)した使用済み製品の輸送を事業者自身が行う際には、「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務の取扱いについて」(平成12 年9月29日厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課産業廃棄物対策室長通知)によって、収集運搬業の許可が不要とされているところである。
 しかしながら、同種の商品であれば他社製品も下取りの対象になることや、そのタイミングが新製品の購入と必ずしも同時である必要はないことまで明確に言及されていないため、企業のCSR活動を始めとする優良事業者による自主的なリサイクルへの取組を遅らせてしまっている。
 したがって、同種の商品であれば他社製品の下取りも可能であること及びそのタイミングは必ずしも新製品の購入と同時である必要はないことを周知する。

 上記の内容は閣議決定をされた内容ですので、「(下取り回収の)タイミングは必ずしも新製品の購入と同時である必要はない」という一文には重みがあります。
 具体的には、新製品の納入時にそのまま旧製品を回収して帰らなくても良い、ということになります。もっとも、製品販売(納入)と同時に回収する必要はないとしても、販売から下取り回収までの期間が長期間になりすぎると、下取り回収とはみなしにくくなります。たとえば、新品販売の3か月後に旧製品を引き取るような場合は、下取り回収とは言えないように思えます。
 また、「同種の商品であれば他社製品も下取りの対象になる」という内容も、実務的な疑問を解消してくれる具体的な説明です。

(2018年11月)

PAGE TOP