大栄環境グループ

JP / EN

下取り回収④

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前号では、下取り回収を可能とする第1の条件「新しい製品を販売する際」の詳細を検討しました。
 今号では、次の「商慣習」の詳細を検討します。

平成12年9月29日付 衛産79号
 ①新しい製品を販売する際に②商慣習として③同種の製品で④使用済みのものを⑤無償で引き取り、⑥収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。

② 商慣習として
 これもあいまいな表現です。商慣習というたった3文字では意味するところがよくわからない、というのが率直な印象です。
 慣習というからには、江戸時代や明治時代から続くような、地域的にも歴史の古い商慣習の一環でないといけないようにも思えます。
 「商慣習」がどんなものかを定義づけた通知は存在しないのですが、昭和58年に近畿地方の自治体と当時の厚生省が廃棄物処理法の疑問について質疑応答した際、厚生省側が「商慣習ということを硬直的に考える必要はなく、一般的にメーカーが回収するようなものであれば回収者の廃棄物になる。」と口頭で回答したことがあります。
 上記の見解は口頭によるものであり、書面としての厚生省(当時)の公式見解ではありませんが、現代の行政機関においても、「商慣習」に関しては、昭和58年当時の厚生省の見解と異なるところはほとんどないと思います。製造者や販売者が、商品販売と引き換えに"自ら"廃棄(予定)品を回収して帰る行為は、多くの自治体担当者が商慣習の一環である下取り行為として考えている、と思っていただいて大丈夫です。
 実態としては、商「慣習」というよりも、商「行為」とした方がわかりやすいのではないか、と個人的には考えています。
 ただし、下取り回収通知は、本来なら廃棄物処理業の許可が必要となる場面で、特定の狭い条件に当てはまる不要物の回収に業許可不要とみなす、例外的、かつ慎重に扱う必要のある解釈基準であることに注意が必要です。「商慣習」が具体的に定義されていないことに付けこみ(?)、慣習とかけ離れた詭弁的な取引を創作しても良いわけではありません。
 例えば、不要物の回収を無償で行っている体を装うために、高額な「回収専用ボックス」や「回収サービスへの入会金」を徴収するような場合は、回収のタイミングでは費用を徴収していないかもしれませんが、売買代金とは別に「廃棄物回収費用」を徴収していると判断される余地があります。そうした局面では、通知の内容を牽強付会して解釈を捻じ曲げるよりも、「廃棄物処理業者に回収に行ってもらう」、あるいは「配達(と同時に回収する)運送業者に廃棄物処理業の許可を取得してもらう」方が安全と考えます。この内容については、下取り回収通知の対象条件をすべて検討し終わった後で、また再度取り上げる予定です。

(2018年12月)

PAGE TOP