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下取り回収⑤

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今号では、下取り回収を可能とする第3の条件「同種の製品」の詳細を検討します。

平成12年9月29日付 衛産79号
①新しい製品を販売する際に②商慣習として③同種の製品で④使用済みのものを⑤無償で引き取り、⑥収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。

③同種の製品
 もし仮に、「商品を買ってくれるなら、どんな廃棄物でも持って帰ります」という販売事業者がいたとします。「廃棄物回収によって、自社の商品の販売促進に少しでもつながれば」という熱意は理解できますが、1台で粗利が数千万円もあるような高額な商品でない限り、そのような後先考えない販売促進策(?)では、すぐに廃棄物処理費が工面できなくなるのは目に見えています。その結果、下取り回収されたはずの不要品が、大量に放置、あるいは不法投棄されることにつながります。
 このように考えると、下取り回収の対象として、不要品の無制限な回収が認められるわけではなく、一定の制限が必要なことがおわかりいただけると思います。
 地味ですが、その制限の重要な判断要素となるものが、今回考察する「同種の製品」です。
 「同種の製品であること」とは、下取り回収の対象が「販売する商品と同種類の不要品でなければならない」、という意味になります。また、前号で考察した「商慣習」として位置付けられる下取りであることが前提ですので、販売する商品とは無関係な不要品の回収も、やはり認められないことになります。
 では、同種の製品とは具体的にどのようなものかについてですが、これは統一的な基準があるわけではないため、常識に基づいて判断するしかありません。  例えば、携帯ゲーム機と携帯電話は、どちらも「小型電子機器」という意味では同種のカテゴリーと言えますが、ゲーム機と電話機といった「機能」に着目すると、同種の製品とは言えなさそうです。「デスクトップパソコン」と「ノートパソコン」の場合なら、機能的にも同じカテゴリーに入るので、問題なく同種の製品とみなせそうです。
 「下取り回収」の対象を考えるために、一般廃棄物と産業廃棄物の違いは抜きにして、色々なケースを考えてみます。家具の量販店がベッドを販売する代わりに、不要となった学習机を下取りする場合はどうでしょうか?ベッドと学習机を同種の製品と考える人はほとんどいないと思われます。通知の内容を忠実に解釈すると、ベッドを買ってもらう代わりに学習机を回収するケースは、下取り回収とは言えないように思えます。
 地味ですが、その制限の重要な判断要素となるものが、今回考察する「同種の製品」です。
 今度は、量販店の服売り場が不要な衣類の持参を地域に呼びかけ、服を購入してくれた人が持参した不要な衣類を回収する場合はどうでしょうか?こうした取組みは全国各地で既に広く行われていますが、「同種」に杓子定規にこだわり、「不要な靴下を回収できるのは、新品の靴下を買った人だけ」とするのは、やりすぎのように思えます。「肌着」であっても、「靴下」であっても、衣類というカテゴリーでは同じ種類になりますので、ある程度の解釈の幅は認められるべきかと思います。

(2019年01月)

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