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オリジン説その1

BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

<定説>
「一般廃棄物を処理して出てくる廃棄物(残渣物)は一般廃棄物」「産業廃棄物を処理して出てくる廃棄物(残渣物)は産業廃棄物」。

<解説>
処理する前に既に一般廃棄物であるものは、処理した後に出てくる物、残る物も一般廃棄物である。同様に、処理する前に既に産業廃棄物であるものは、処理後物も産業廃棄物である、というものです。
(もちろん、リサイクル工程を経て、製品という有価物になる部分は別ですよ。)
実感しやすいのは次の例でしょうか。
産業廃棄物である廃プラスチック類を焼却炉で焼却した後に残る燃え殻は産業廃棄物である。
これは産業廃棄物の場合は、「なんだ、あたりまえのことじゃないか」と思うかも知れません。
しかし、これが一般廃棄物だと、ある程度廃棄物処理法を知っている人ほど、矛盾を感じるケースがあるんですね。
廃棄物処理法第2条第4項第1号で「産業廃棄物」の定義を規定しているのですが、ここで「事業活動に伴って生じた」と言う形容詞が出てきます。
この「事業活動」ということも、後日改めて考えてみたいのですが、廃棄物処理法がスタートした直後の通知で、「国、都道府県、市町村といった公共団体の業務も事業活動である」旨があります。
そうであるならば、市町村のクリーンセンターにおける「一般廃棄物処理業務」も事業活動となる訳です。
産業廃棄物は(現時点では)法律と政令で20種類が規定されています。このうち、汚泥や金属くずなどは業種の指定がありません。
つまり、どのような事業活動から排出されたとしても産業廃棄物ということになります。
燃え殻も業種指定の無い産業廃棄物の種類です。
で、あるならば市町村のクリーンセンターから排出される「一般廃棄物である紙くずや厨芥類を焼却した後に排出される燃え殻も産業廃棄物ではないか」となる訳です。
たしかに、市町村の業務も事業活動であり、そこから排出される燃え殻は業種指定のない品目ですから、この理論から行くと産業廃棄物となってしまいます。
しかし、そんな論法が成立してしまえば、世の中の一般廃棄物は全て産業廃棄物に衣替えしてしまいすね。
し尿処理施設から出てくる汚泥も、粗大ごみを破砕した後に出てくる金属くずも、「事業活動に伴って生じた汚泥、金属くず」ですから。
これでは、廃棄物処理法で一般廃棄物と産業廃棄物を制度上区分したそもそもの意味がなくなってしまいます。
そこで登場するのが、「オリジン説」です。
元々一般廃棄物であった物はどこまで行っても(廃棄物を卒業しなければ)一般廃棄物。
元々産業廃棄物であった物はどこまで行っても(廃棄物を卒業しなければ)産業廃棄物。
ただ、BUNさんはこの業界に足を突っ込んでかれこれ40年になるのですが、この理屈を公的に明示している通知は、残念ながら未だに見つけられずにいます。
しかし、前述の通り、こう考えなければ廃棄物処理法の全ての制度が根幹から揺らいでしまいます。
と言うことで、第1回は意気込みの表明と<定説>の紹介で終わってしまいました。
 次回はいよいよオリジン説について<自説>を披露したいと思います。

(2019年05月)

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