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「産業廃棄物の種類」その9<ガラスくず、コンクリートくず>

BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

このシリーズは、廃棄物処理法の条文に明示していないような事柄について、定説と伴にBUNさんの主張(自説や妄説)を聞いていただくという企画です。
 一応、「定説」とされているレベルの箇所には<定説>と明示し、BUNさんの独りよがりと思われるようなところには<自説>、さらに根拠が薄いなぁというようなところには<妄説>と明示して話を進めていきます。
 読者の皆さんも、<定説>部分は信じてもかまいませんが、<妄説>の箇所は盲信することなく、眉に唾を付けて読んで下さいね。
 さて、ここのところ「産業廃棄物の種類」をテーマに、あ~でもない、こ~でもないと述べてますが、今回は「ガラスくず、コンクリートくず」について取り上げてみましょう。
(次の「定説」は法令の条文と通知の紹介ですから、既にご存じの方、めんどくさい方は、飛ばして「自説」から先に読んでもいいかも)

<定説>
正式な「産業廃棄物の種類」の表記として、条文の規定を見てみましょう。
政令第二条 法第二条第四項第一号の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
七 ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものを除く。)及び陶磁器くず
九 工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物

もうちょっと解説が欲しいですよね。このシリーズでは何度か登場しました産廃20種について詳しく解説した通知では次のように記載しています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う留意事項について(抜粋)
昭和46年10月25日環整第45号、最終改正:平成14年5月21日
第一 廃棄物の範囲等に関すること
令第二条第七号に掲げる産業廃棄物......「ガラスくず」という。ガラスくず、耐火れんがくず、コンクリートくず、陶磁器くず等が含まれるものであること。ただし、コンクリートくずについては、令第二条第九号に掲げる産業廃棄物に含まれるものは除かれること
令第二条第九号に掲げる産業廃棄物......「がれき類」という。工作物の除去に伴って生じたコンクリートの破片、その他各種の廃材の混合物を含むものであって、もっぱら土地造成の目的となる土砂に準じた物を除くものであること。ただし、地下鉄の工事現場等から排出される含水率が高く、粒子の微細なでい状のものにあっては、無機性の汚でいとして取り扱うものであること。

<自説>
一般的に政令7号で規定する産業廃棄物を「ガラス陶磁器くず」、9号を「がれき類」と呼称しています。
ただ、この呼び方も果たしてこれでいいものやら、わるいものやら・・・。
まず、「まちがいのないところ」から取り上げましょうか。
「ガラスくず」。これは、常識のある日本人が「ガラスだなぁ」と認識するもので、不要になった物が「ガラスくず」です。事業活動を伴えば産業廃棄物です。だから、排出の形態を問いません。ガラス製造工場から排出される物も、運搬途中で割れてしまった物も、建物を解体して出てくる物も、「ガラス」であれば、この品目「ガラスくず」になります。
なぜ、こんなにしつこく書いたかと言うと、実は次に登場する「コンクリートくず」や「レンガくず」ではこういった「要因」「要素」により「7号」になるのか「9号」になるかで扱いが変わってしまうからなんです。
この点で法令上、一番やっかいなのが第15条で規定する産業廃棄物処理施設の扱いなんです。
設置に当たって許可の必要な産業廃棄物処理施設は法律第15条の規定を受けて、政令第7条で具体的に規定しています。今回問題になる号(箇所)のみ紹介します。

政令第七条(産業廃棄物処理施設)
 法第十五条第一項の政令で定める産業廃棄物の処理施設は、次のとおりとする。
八の二 第二条第二号に掲げる廃棄物(事業活動に伴つて生じたものに限る。)又はがれき類の破砕施設であつて、一日当たりの処理能力が五トンを超えるもの
「第二条第二号に掲げる廃棄物」とは「木くず」です。
つまり、この条文では「木くずとがれき類の破砕施設は設置許可が必要です」という規定です。
では、「ガラスくず(7号)の破砕施設は?」と見ていくと規定がありません。
と言うことは、9号だと設置許可の対象になり7号だといくら大きな破砕施設を設置しても許可は要らない、となります。これは大きな問題です。無許可設置は最高刑懲役5年の罰則が規定されていますから。
「ガラス陶磁器くずの破砕施設だから設置許可は要らないだろう」と思って設置したところ、「これはがれき類の破砕施設だ」と言われると、とたんに無許可設置となってしまうってことです。

では、ここで問題を出します。レンガくずの破砕施設は設置許可は要るでしょうか?
難しいですね。
レンガで作られた建物ってありますよね。
札幌の道庁舎、横浜の馬車道通りなどレンガ造りの建物や道路などは日本国中至る所にあるでしょ。
あれを解体した時に出てくる廃棄物って、7号なの9号なの?
「タイル」も迷いますよね。タイル工場から不良品で出て来るタイルは7号のような気もするけど、古い建物の風呂場を壊したときに出てくるタイル床や浴槽のタイルは9号のような気もする。
「瓦」はもっと迷うかも。瓦屋根の建物を解体したときにコンクリートや木くず、金属くずと一緒に排出されると9号「がれき類」のような気もするけど、解体する前に、きれいに瓦だけを取り外した「瓦」となると、これは瓦製造工場から排出される不良品と同じく7号の「ガラス陶磁器くず」でいいようにも感じます。

「産業廃棄物の種類」その9<ガラスくず、コンクリートくず>画像1

<定説>
実は以前は9号を「建設廃材」って呼んでいたんです。「建設廃材」は今で言う「がれき類」ですから、安定型最終処分場で処分できます。木くず、紙くずは管理型産業廃棄物ですから、安定型最終処分場では処分できません。「建設廃棄物」は広く建設工事に伴って排出される廃棄物ということで、木くずや紙くずもこれに含まれます。ところが、「建設廃材」と「建設廃棄物」は言葉が似ているものですから、よく勘違いされて木くず、紙くずも安定型最終処分場に持ち込まれることがあったんです。
そこで、平成12年の政令改正を期に「がれき類」と呼び方を変えたんです。もっとも、前述のとおり、公式な条文としての政令には「建設廃材」という名称は登場せず、「がれき類」という名称も産廃の定義を規定している令第二条には登場せずに、埋立基準を規定している政令第六条にわざわざ呼び直して登場するんです。

<妄説>
この「がれき類」という呼称も日本語としてはおかしいですよね。だって、日本語の辞書で「がれき」って調べると「破壊された建造物の破片など」と出てきます。
最近は災害が多くて、時折テレビからも「大地震が起き大きなビルが瓦礫の山とかしています。」とか「洪水に飲み込まれた家屋が瓦礫と化しています。」とか耳にします。このように、日本語のイメージとしては「新品のがれき」って想定していないと思うんですよ。
だから、「工作物の除去に伴って生じた」物は「がれき」でいいと思うんですが、「新築」で生じた物は「がれき」って言うんでしょうかねぇ。私はどうも違和感を覚えます。

<定説>
9号はもともとは「工作物の除去に伴つて生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物」だったんです。これが何回か前に取り上げた「木くず」の改正に合わせて、9号も同じような表現で「新築」と「改築」を追加したためのようです。

<自説>
まぁ、そんなこんなで、「建設廃棄物」と混同しないようにと「建設廃材」という文言を「がれき類」と呼び名を変えた。ところが、今度は「新築」と「改築」も追加したことで、「新築工事から出てくる場合も<がれき類>」と呼ぶようになってしまった。
ちなみに、「新築工事の時に出てくるがれき類」としては、コンクリートの強度を測定するために円柱状のコンクリートの塊を作るのですが、測定が終了後に廃棄される「コンクリート柱」などが9号に該当するとされているようです。
一方、コンクリート製品製造工場から排出される不良製品、たとえば、U字溝やコンクリートブロックなどは7号に該当するようです。

「産業廃棄物の種類」その9<ガラスくず、コンクリートくず>画像2

<妄説>
先に紹介している通知は現在でも「生きている(有効)」通知なのですが、今もってわからない、理解できない箇所もあります。9号の解説に「もっぱら土地造成の目的となる土砂に準じた物を除くものであること。」とあるんですね。いったいこれは何なのか?コンクリート殻を細かく砕いて土地造成に使用していれば、それは「がれき類」とは呼ばないということなのか?しかし、そんなことを容認すれば、ちょっと砕いて、窪地に入れれば「土地造成だ」となって不法投棄罪は成立しないのか?
いやいや、待てよ。この通知では「がれき類ではない」としか言っていない。「有価物である」「自然界の土石として扱ってよい」とも言っていない。しかも次に続く「ただし書き」では、「含水率が高く、粒子の微細なでい状のものにあっては、無機性の汚でいとして取り扱うものである」とまで言っている。
と言うことは、土地造成に使用してよいのは、総合判断説により有価物として認められる「物」だけであり、有価物として認められない「物」で「もっぱら土地造成の目的となる土砂に準じた物」は7号の「ガラス陶磁器くず」として扱えってことなのか?

「産業廃棄物の種類」その9<ガラスくず、コンクリートくず>画像3

そんなことを堂々巡りで考えて、最後の最後に「どうして、こんな訳の分からない解説を、わざわざ通知に書いてしまったのか。理解させるための通知ではなく、後世の人間を惑わすために書いたのではないか」とまで邪推してしまうのでありました。

などなど、ガラスくず、コンクリートくずも今もって、よくわからない┐(´-`)┌

(2021年02月)

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