環境コラム

コラム環境コラム

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第66回】2019年4月施行の改正土壌汚染対策法のポイントは?
~キーワードは「有害物質使用特定施設」。稼働中も要注意!

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 2019年4月、改正土壌汚染対策法(2018年5月公布)がいよいよ全面施行されます。

 それに伴い、1月下旬には、土壌汚染対策法施行規則の改正省令などの関連規則等が相次いで公布されました。
 改正省令等を含めた、改正法の概要は、次の図表の通りです。

図表:改正土壌汚染対策法の概要
主に1~3の措置を講じ、土壌汚染に関する「適切なリスク管理」を推進
1 規制強化■土壌汚染状況調査の実施対象となる土地の拡大
3条1項ただし書により、土壌汚染調査が猶予されている場合でも、土地の形質変更を行う場合には、届出を行う(⇒汚染調査
900平方メートル未満の土地形質変更などは届出不要

稼働中の有害物質使用特定施設がある場合でも、900平方メートル以上の土地の形質変更のときなどは、届出を行う(⇒汚染調査
2 ■汚染の除去等の措置内容に関する計画提出命令の創設等
都道府県知事は、要措置区域内における措置内容に関する計画の提出の命令、措置が技術的基準に適合しない場合の変更命令等を行うことができる
3規制緩和 ■リスクに応じた規制の合理化
臨海部の工業専用地域など、健康被害のおそれがない土地の形質変更は、あらかじめ都道府県知事の確認を受けた場合、工事ごとの事前届出に代えて年1回程度の事後届出とする
基準不適合が自然由来等による土壌は、都道府県知事へ届け出ることにより、同一の地層の自然由来等による基準不適合の土壌がある他の区域への移動も可能とする

 このうち、事業者にとって特に注意を要する規制は、「1」の土壌汚染状況調査の実施対象となる土地の拡大に関する規制強化です。

 本法3条1項では、有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法の特定施設で特定有害物質を製造・使用等していたもの)の使用を廃止した場合、土地の所有者等は、汚染の状況について調査させて、その結果を都道府県知事に報告しなければならないことを義務づけています。

 ただし、3条1項には「ただし書」があり、その土地について予定されている利用の方法からみて土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずるおそれがない旨の都道府県知事の確認を受けたときは、この限りでないとされています。

 例えば、有害物質使用特定施設を廃止したとしても、工場としての操業を続けるのであれば、敷地外から人が入ることもありませんし、健康被害のおそれはありません。そうした状況を都道府県が確認すれば、汚染調査を猶予することができる特例が、3条1項ただし書なのです。

 しかし、猶予措置がとられてしまうと、汚染調査をする必要がなく、その間に汚染されている可能性がある土壌を外に持ち出しても、何の規制も受けなくなってしまいます。

 そこで、今回の改正法では、3条1項ただし書の土地の所有者等に対して、土地の形質の変更をするときには、「軽易な行為等」を除き、都道府県知事に届出を行うことを義務付け、都道府県知事は、その届出を受けた場合に汚染調査命令を出すことができるようにしたのです。
 これまで3条1項ただし書の適用を受けてきた工場でも、今後は状況によっては汚染調査をしなければならなくなったので、関係する工場にとっては大きな法改正と言えるでしょう。

 ただし、上記のとおり、「軽易な行為等」であれば、届出が不要となります。この行為を具体的に述べると、次の2つとなります(3条7項ただし書)。

①軽易な行為その他の行為であって、「環境省令」で定めるもの
②非常災害のために必要な応急措置として行う行為

 この「環境省令」で定めていることは、次のとおりです(本法施行規則21条の4)。

1 対象となる土地の面積が900平方メートル未満の土地の形質の変更
2 対象となる土地の面積が900平方メートル以上の土地の形質の変更であって、次のいずれにも該当しない行為又は鉱山関係の土地において行われる土地の形質の変更
 〇土壌を当該土地の形質の変更の対象となる土地の区域外へ搬出すること。
 〇土壌の飛散又は流出を伴う土地の形質の変更を行うこと。
 〇土地の形質の変更に係る部分の深さが五十センチメートル以上であること。
 規制に注釈が多く、頭が混乱される方もいるかもしれません。

 結局、本法3条の新規制をわかりやすく(?)整理すると、次のように、「ただし書のただし書のただし書」の規制となるようです。

本法3条の新規制
有害物質使用特定施設を廃止したときは汚染調査が原則
 ⇒ただし、工場の操業継続の場合などは調査を猶予できる
  ⇒ただし、そんなときでも、土地の形質変更などをするなら調査をする
   ⇒ただし、そんなときでも、900平方メートル未満の形質変更などであれば調査をしなくてもよい。


 以上が、4月からの新3条の規制の概要となります。

 最後に、この3条の新規制とは別に、本法4条についても重要な改正が行われているので、触れておきます。

 本法4条では、これまで、3,000平方メートル以上の土地の形質変更をする場合、都道府県知事へ届出を行い、都道府県知事から汚染調査命令が出たときには汚染調査をすることが義務付けていました。
 これに対して、2019年1月28日公布の改正省令では、「3,000平方メートル」という規模要件を原則として維持しつつも、「現に有害物質使用特定施設が設置されている工場若しくは事業場の敷地又は法第3条第1項本文に規定する使用が廃止された有害物質使用特定施設に係る工場若しくは事業場の敷地(同項本文の報告をした工場若しくは事業場の敷地又は同項ただし書の確認を受けた土地を除く。)の土地の形質の変更」については、「900平方メートル」とすることが決められたのです。

 つまり、今後は、有害物質使用特定施設を廃止していなくても、そうした施設がある工場などで900平方メートル以上の土地の形質変更をしようとする場合について届出義務を課し、都道府県知事に汚染調査を命じることができるようにしたのです。

 有害物質使用特定施設が過去にあったり、現にあったりする場合は、改正土壌汚染対策法が適用される余地が広がったということです。
 キーワードは「有害物質使用特定施設」。それに関わる工場・事業場は十分に気をつけてください。


(2019年2月)

  • ◎「土壌汚染対策法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び意見募集(パブリックコメント)の結果について」(環境省)
    http://www.env.go.jp/press/106397.html

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