環境コラム

コラムここに注目!環境法

環境コンサルタント講師の解説による、環境法のポイントをご紹介します。

執筆:環境コンサルタント 安達宏之氏 (洛思社 代表取締役/環境経営部門 チーフディレクター)

安達宏之氏
プロフィール
2002年より現職。主なテーマは「企業向け環境法」「環境経営」。
執筆のほか、企業の法令管理システムやISO14001等の構築、個別調査・コンサルティングなどを行う。
ISO14001主任審査員、エコアクション参与・審査員として、審査業務にも携わる。
各地で企業の環境法担当者向けの環境法セミナー講師を務める。

【第75回】レベル3規制強化で、石綿障害予防規則も改正!
~解体工事ではすべてのアスベストに注意する

安達 宏之氏
洛思社 代表取締役/ 環境経営部門チーフディレクター

 
 2020年7月1日、石綿障害予防規則(石綿則)等が改正されました。

 石綿(アスベスト)規制の新たな動きについては、本連載記事では、大気汚染防止法の改正の動きについて伝えたことがあります(【第71回】アスベスト規制強化で、大気汚染防止法改正へ!)。

 この改正大気汚染防止法案は、2020年6月に成立・公布されました。2021年4月などから施行されることになっています。
 大気汚染防止法は、解体工事におけるアスベスト飛散を規制しています。具体的な対象として現在レベル1とレベル2のアスベストを規制していますが、この改正法では、さらにレベル3も規制することになりました。

 レベル1とは、吹付けアスベストのことです。レベル2とは、アスベストを含有する保温材、耐火被覆材及び断熱材のことです。一方、レベル3とは、スレートやPタイルなどその他アスベスト含有建材を指します。

 大気汚染防止法は、言うまでもなく大気の環境汚染を防止するための法律であり、その中でアスベスト規制を実施しています。

 ただし、アスベスト規制は、大気汚染防止法がすべてではありません。様々な法令が関連してきますが、その中でも、石綿則が重要です。
 石綿則は、労働安全衛生法の下位法令です。大気汚染防止法の規制とは異なり、環境汚染防止を目的とせず、解体工事等における労働者の健康被害防止を目的としていると言えます。

 今回、この石綿則等も改正されました。その概要は、次の図表の通りです。

石綿障害予防規則等の改正のポイント
現行 見直し後
レベル1
石綿含有吹き付け材
計画届※十四日前 事前調査

作業計画

掲示

湿潤な状態にする

マスク等着用

作業主任者の選任

作業者に対する特別教育

健康診断
負圧隔離

集じん・排気装置の初回時点検

作業開始前の負圧点検等
レベル1
石綿含有吹き付け材
事前調査結果等の届出
※一定規模以上の工事
計画届(レベル2も)
※十四日前
事前調査(方法明確化)

資格者による調査

調査結果3年保存 、現場への備え付け


作業計画

作業状況等の写真等による記録・3年保存

掲示

湿潤な状態にする

マスク等着用作業主任者の選任

作業者に対する特別教育

健康診断
負圧隔離

集じん・排気装置の初回時、変更時点検

作業開始前、中断時の負圧点検

隔離解除前の取り残し確認
レベル2
石綿含有吹き付け材、耐火被覆材、断熱材
作業届
※工事開始前
レベル2
石綿含有吹き付け材、耐火被覆材、断熱材
レベル3
スレート、Pタイル、ケイ酸カルシウム板1種等その他石綿含有建材
    ケイ酸カルシウム板1種(破砕時)
仕上げ塗材(電動工具での除去時)
  隔離
※負圧は不要
レベル3
スレート、Pタイル、その他石綿含有建材
   
出典:「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会報告書(概要)」を基にまとめる。

 改正石綿則の最大のポイントは、改正大気汚染防止法と同じく、レベル3についても規制対象に本格的に加えられたことです。

 従来、レベル3に関する規制としては、解体工事を実施する際に、事前調査や作業計画、掲示、マスク等着用、作業主任者の選任等に関する基準等の順守を求めるものにとどめていたところを、改正規則では、規制を大幅に強化しました。

 まず、次の基準に該当する工事は、アスベストの含有有無に関わりなく、原則として、あらかじめ労働基準監督署に届け出なければなりません。

 ①解体工事部分の床面積の合計が80m2以上の建築物の解体工事
 ②請負金額が100万円以上である特定の工作物の解体工事
 ③請負金額が100万円以上である建築物又は特定の工作物の改修工事

 ※特定の工作物は、反応槽、加熱炉、ボイラー・圧力容器、配管設備、焼却設備、煙突など、石綿等が使用されている可能性が高い工作物をいう。


 また、レベル3の材料については、破砕を行わずに除去することを原則とするとともに、アスベストを含有するケイ酸カルシウム板第1種をやむを得ず破砕する場合は、湿潤な状態にすることに加えて、作業場所の周囲を隔離しなければなりません(負圧までは求めず、養生シート等で囲うような措置)。

 この他に、図表の赤字にある箇所が規制強化されたものです。

 例えば、「資格者による調査」とあるものは、一定の講習(現行の建築物石綿含有建材調査者講習を想定)を修了した者やそれと同等以上の知識・経験を有する者(制度改正前に日本アスベスト調査診断協会に登録された者)でなければアスベストの含有有無等の調査ができなくなります。
 レベル3だけでなく、レベル1及びレベル2の作業においても適用されるものであり、解体工事全般についての規制が強化されています。

 こうした改正石綿則等の施行日は、原則として令和3年4月1日となります。
 ただし、事前調査の結果の届出は令和4年4月から、資格者による調査は令和5年4月からとなります。

 このように、令和3年4月からは、改正大気汚染防止法とともに改正石綿則等が施行されることになりますので、十分な注意が必要です。

 また、そもそもアスベストは「静かな時限爆弾」とも呼ばれ、迂闊に吸入すれば、数十年後に重篤な疾病を招くこともある物質です。解体工事においては、元請業者などの工事関係者はもちろんのこと、工事の発注者もその飛散リスクがあることを認識して対応したいものです。

◎「「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会」の報告書を公表します」(厚生労働省)
 ⇒ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08741.html   


(2020年8月)

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