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転売防止、食品リサイクル法関連省令を改正へ~ダイコー事件が法改正へ影響

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

平成28年1月、廃棄処理したはずの食品廃棄物がスーパーの店頭などで販売されていた事件が判明し、大きな社会問題となりました。いわゆる「ダイコー事件」です。

これは、食品製造業者等が食品廃棄物の処分を産業廃棄物処分業者であるダイコーに委託したところ、同社が不適正に転売したことによって起きた事件です。
 これを受けて、3月14日には環境省より再発防止策が発表され、①電子マニフェストの機能強化、②廃棄物処理業への監視体制の強化、③排出事業者への食品廃棄物の不適正な転売防止対策の強化に取り組むこととされました。

上記①及び②については、主に廃棄物処理法の制度改革によって行われることになります。
 特に、①については9月1日に公表された廃棄物処理制度専門委員会の「論点整理(案)」において、電子マニフェスト不正防止システム導入策が掲げられたので、今後の法改正を含む動向に注意が必要でしょう。

一方、上記③については、食品リサイクル法の制度改革によって行われることになります。
 具体的には、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する食品関連事業者の判断の基準となるべき事項を定める省令」(以下、判断基準省令と略)を見直すとともに、食品廃棄物等の不適正な転売防止のための措置に関するガイドラインを策定することになりました。

11月25日、判断基準省令の改正案に関するパブリックコメントが実施され、主に次の3点が追加されることが明らかとなりました(12月24日締切)。

追加的に転売防止措置が必要と認められる場合には、食品廃棄物等が食用と誤認されないよう「適切な措置」を講ずる。また、委託の内容通りに収集・運搬、特定肥飼料等の製造・利用がなされるよう「確認する措置」を講ずる。

食品関連事業者が食品循環資源の再生利用等を実施する際に、不適正な転売を含む不適正処理がなされないよう適切な措置を講ずる。その際にその措置が再生利用の阻害につながらないようにもする。

食品関連事業者が、食品循環資源の再生利用として他人に特定肥飼料等の製造を委託するに当たっては、再生利用の実態や、周辺地域で公示された料金等を踏まえた適正な料金で再生利用を行っている委託先を選定する。

判断基準省令は、29年1月中に公布され、同日施行される予定です。

上記①・②・③とも、食品廃棄物の処理委託を行う事業者にとって悩ましい問題がいくつもあります。例えば、①の「適切な措置」や「確認する措置」が何を意味するのかによって、対応方法が大きく異なってくるからです。

この点、「食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の不適正な転売の防止の取組強化のための食品関連事業者向けガイドライン」(同月に公表予定)に具体的な運用方針が示されています。

 例えば、不適正な転売のリスクが相対的に高いと考えられる場合、通常の業務管理に加え、処理委託前の段階での包装の除去や毀損などの措置や、食品廃棄物等の破砕や他の食品廃棄物等との混合などの対応方法例が提示されています。
 さらに、食品循環資源の再生利用等施設への搬入に食品関連事業者が立ち会い、再生利用等設備への投入を目視により確認する方法例も掲げられています。

その一方、「ただし、食品循環資源の再生利用の取組を阻害しない方法を選択してください」といった記述も各所で見られます。
 結局、実際の対応方法を決めるのには、なかなか慎重な検討が求められることになります。少なくても判断基準省令とガイドラインをよく読み込みながら、処理業者等と綿密に協議をして対応方法を決めていくこととなるでしょう。

(2017年01月)

▶︎ ◎食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律関係省令の一部改正案に対する意見の募集(パブリックコメント)について(環境省)
http://www.env.go.jp/press/103155.html

▶︎ ◎食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の不適正な転売の防止の取組強化のための食品関連事業者向けガイドライン(案)(農水省)[PDF]
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokusan/bukai_21/attach/pdf/index-28.pdf

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