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有効性評価へ「不可欠な監視」を探せ~ISO14001:2015年版「9.1.1一般(監視、測定、分析及び評価)」を読む

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

ISO14001:2015年版の箇条9は「パフォーマンス評価」です。
そのうちの細分箇条9.1.1は「監視,測定,分析及び評価(一般)」となります。

旧規格では「監視」と「測定」の箇条でしたが、2015年版では、これに「分析」と「評価」が加わりました。
単に監視等しているだけでなく、その結果を分析し、今後の改善につなげるために評価することも明示したわけです。箇条9のタイトルの通り、よりパフォーマンスを重視した要求事項になったと言ってよいでしょう。

具体的にはまず、環境パフォーマンスを監視・測定・分析・評価することを求めています。

環境パフォーマンスとは、「環境側面のマネジメントに関連するパフォーマンス(測定可能な結果)」とされています。難解な表現ですが、実務上は、EMSの活動状況をチェックし、評価することを求めていると考えれば十分だと思います。

また、規格では、次の事項を決定することも求めています。

監視及び測定が必要な対象
該当する場合には、必ず、妥当な結果を確実にするための、監視、測定、分析及び評価の方法
組織が環境パフォーマンスを評価するための基準及び適切な指標
監視及び測定の実施時期
監視及び測定の結果の、分析及び評価の時期

そして、必要に応じて、校正された又は検証された監視機器及び測定機器が使用され、維持されていることも求めています。

いずれも監視等を行うに際して対応すべき常識的な内容が並んでいると思います。
ただし、実務の中でこれら対応が形骸化していることも少なくありません。

例えば、上記③で考えてみましょう。
何事でも、物事を評価するうえで、ある種の基準や指標は不可欠です。エネルギー使用状況の監視や評価等を行う場合は、前年同月比の電気使用量などを基準や指標として適切に管理する企業が多いことでしょう。

しかし、例えば、産業廃棄物の保管状況のように定量的に管理しにくいテーマについて、基準や指標が形骸化しがちです。
現場を見ることなく、単に漫然と監視表にチェックを入れるのではなく、月1回の現場目視や撮影した写真を環境委員会で確認するなど、実効性のあるプロセスを確立することが求められます。

規格は上記事項に続けて、環境パフォーマンスやEMSの有効性を評価すること、順守義務による要求に従って、関連する環境パフォーマンス情報について内部と外部の双方のコミュニケーションを行うことも求めています。
監視や評価結果の証拠として適切な文書化した情報の保持も求めています。

ここで「EMSの有効性」という言葉が出てきました。
言うまでもなく、規格の基本的な仕組みは「PDCA」です。計画を打ち立て(PLAN)、計画通り実施し(DO)、それをチェックし(CHECK)、見直していく(ACTION)。これは旧規格から続いているものです。

本来、このPDCAサイクルを有効に回していくために大切なのは「チェック」のステージです。 想定と一致しないおかしな事象を見極めて、それを課題と認識する場面がなければ、「見直し」にはつながりません。

単なるデータチェックの場が監視等の意味ではないのです。
長くEMS活動を展開している組織ほど、この点が見過ごされがちです。内部監査なども含めて「チェック」の様々な機会を通して、「本当に現在のプロセスがチェックに値するものなのか」を改めて検証していくとよいのではないでしょうか。

(2017年07月)

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