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広がるライフサイクル思考~環境経営の進展が規格の中へ

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

2015年9月、ISO14001の2015年版がいよいよ発行されようとしています。
認証取得企業における対応スケジュールや規格の箇条ごとの対応方法などについては、次号以降で取り上げます。
今号では、改正ISO14001のポイントでまだ触れていないものうち、重要なものとして「ライフサイクル思考」について解説していきます。

現在のISO14001(2004年版)では、組織に対して、環境側面を特定し、その中から著しい環境側面を決定することを求めています。環境マネジメントシステム(EMS)活動を行う上で、著しい環境側面を確実に考慮に入れなければなりません。

改正ISO14001の最終国際規格案(FDIS)においても、抽出した環境側面の中から著しい環境側面を決定するという流れは維持されています。 ただし、環境側面を抽出し、それらに伴う環境影響を決定する場合には、「ライフサイクルの視点」を考慮することも求めています(箇条6.1.2)。

組織の活動や製品、サービスへのライフサイクルアセスメントまでも求めているわけではないものの、規格の中に新たに「ライフサイクル」の文字が入れられ、その推進が求められるようになったのです。

さらに、FDISの別の箇所でもライフサイクル思考が具体的に書かれています(箇条8.1)。
そこでは、組織に対して、ライフサイクルの各段階を考慮して、必要に応じて製品・サービスの設計・開発プロセスで環境上の要求事項が取り組まれていることを確実にするために管理を確立することを求めているのです。

そればかりではありません。必要に応じて、製品・サービスの調達に関する環境上の要求事項を決定しなければなりません。
また、必要に応じて、製品・サービスの開発・配送・使用・使用後の処理のプロセスの設計で環境上の要求事項が考慮されていることを確実にするための管理を確立することも求めています。

さらに、請負者などへの環境上の要求事項の伝達などについても触れており、ライフサイクルの視点に従ってEMS活動を行うことを強く求めていると言えるでしょう。

実は、こうしたライフサイクル思考をもってEMS活動を推進している企業は珍しくありません。

環境側面には「組織が管理できる環境側面」と「組織が影響を及ぼすことができる環境側面」の2種類があります。後者の環境側面は、製品やサービス等のライフサイクルを考慮して取り上げる環境側面とも言えるでしょう。

環境経営の進展とともに、例えばメーカーであれば、工場内での製造プロセスのみに着目した狭いEMS活動から、原料調達や販売後の使用、使用後の廃棄・リサイクルなど、製品のライフサイクルに着目した広いEMS活動に舵を切っている企業も多く登場しています。

現在の規格においても、こうした企業では、「組織が影響を及ぼすことができる環境側面」を上手に利用し、ライフサイクル思考を取り入れたEMS活動を推進しているのです。

ところが、前者の環境側面のみでEMS活動を行っていた企業にとっては、今回のライフサイクル思考をどのように活動に取り入れていくか、対応を迫られていると言えます。

(2015年08月)

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