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「PFOS」「PFOA」規制とは? ~化審法施行令改正など、有機フッ素化合物「PFAS」規制が進む

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

最近、「PFOS」(ぴーふぉす)や「PFOA」(ぴーふぉあ)がニュースで度々取り上げられています。

全国各地の河川や井戸などから「基準を超えるPFOSが検出された。」という報道に接し、不安に感じている企業担当者もいることでしょう。
PFOSやPFOAを含む「PFAS」(ぴーふぁす)は幅広く利用されており、工場等の製造工程に使用している企業も少なくないからです。

環境法においても、これらに関連して、水質汚濁防止法施行令や化学物質審査規制法(化審法)施行令が改正されています。
今号では、このPFASの基本を確認するとともに、法改正の動向を見ていきましょう。

まず、PFASとは、有機フッ素化合物のうち、「ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物」の総称です。その種類は実に1万種類以上あるとされています。

撥水性や撥油性があり、熱・化学的安定性等の物性を示すことから幅広く利用されています。
一方、難分解性や高蓄積性の性質があるために、人の健康や環境へ影響を及ぼす可能性も指摘されています。そのため、「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」と呼び、その利用に警鐘を鳴らす見解もあります(ジョン・ミッチェルほか著『永遠の化学物質 水のPFAS汚染』(岩波書店・2020年)参照)。

PFASのうち、近年、規制措置が進む物質に、PFOSとPFOAがあります。

PFOSは、ペルフルオロオクタンスルホン酸のことであり、その用途は、半導体用反射防止剤・レジスト、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などです。
PFOAは、ペルフルオロオクタン酸のことであり、その用途は、フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤などです。

PFASを巡る法改正の概要は、次の図表の通りです。

PFASを巡る法改正

法令名 概要
2009年10月 改正化審法施行令
  • ○「PFOS又はその塩」を第一種特定化学物質に指定。原則として製造・輸入が禁止された。2010年4月施行
2020年4月 厚生労働省局長通知の改正
  • ○水道の水質管理目標設定項目に関する局長通知を改正し、暫定目標値として、PFOSとPFOAの合計で50ng/Lを設定(水道法の水質基準項目は変更せず)。
2021年4月 改正化審法施行令
  • ○「PFOA又はその塩」を第一種特定化学物質に指定。原則として製造・輸入が禁止された。2021年10月施行。
2022年12月 改正水質汚濁防止施行令
  • 事故時の措置の対象となる指定物質に、「PFOA及びその塩」と「PFOS及びその塩」を追加。2023年2月施行。
  • ○これら物質を対象施設から事故で公共用水域に流出等した場合、応急措置と都道府県等への届出義務がある。
2023年12月 改正化審法施行令
  • PFHxSを第一種特定化学物質に指定。原則として製造・輸入が禁止された。施行日は公布後2カ月以内。対象は、「PFHxS若しくはその異性体又はこれらの塩」。

日本におけるPFAS規制のきっかけは、「POPs条約」と言ってよいでしょう。
この条約の正式名称は、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」のことです。2001年に採択され、日本は2002年に締結し、2004年に発効しました。

POPsとは、「Persistent Organic Pollutants」(残留性有機汚染物質)の略です。毒性があり、難分解性を有し、生物中に蓄積され、長距離を移動する物質を指します。
条約は、POPsによる汚染防止のため、国際的にその廃絶と削減等を目指しています。
各国が講ずべき対策としては、主に次のものがあります。

  • ① 附属書Aに掲載された物質:原則として製造・使用を禁止(PCBなど。適用除外の規定あり)。
  • ② 附属書Bに掲載された物質:原則として製造・使用を制限(DDTなど。認められる目的及び適用除外の規定あり)。2009年にPFOSが掲載。
  • ③ 附属書C:非意図的生成から生ずる放出を削減(ダイオキシンなど)

PFASに関連した規制では、2009年にPFOSが附属書Bに、2019年にPFOAが附属書Aに、2022年にPFHxSが附属書Aにそれぞれ掲載されました。
これを踏まえて、日本においても国内法の整備が進んでいったのです。

2009年10月には、改正化審法施行令が公布されました。
「PFOS又はその塩」を第一種特定化学物質に指定し、原則として製造・輸入が禁止されました。2010年4月に施行されています。

2020年4月には、厚生労働省において、水道の水質管理目標設定項目に関する局長通知が改正され、暫定目標値として、PFOSとPFOAの合計で50ng/Lを設定しました(厚生労働省健康局長通知「水質基準に関する省令の制定及び水道法施行規則の一部改正等について」(平成15年10月10日健発第1010004号)。水道法の水質基準項目は変更されず)。
なお、水環境についても2020年5月に、環境省が要監視項目として、暫定的な指針値として同じ値が設定されています。

2021年4月には、改正化審法施行令が公布され、「PFOA又はその塩」を第一種特定化学物質に指定し、原則として製造・輸入が禁止されました。2021年10月に施行されています。

また、2022年12月には、改正水質汚濁防止施行令が公布され、事故時の措置の対象となる指定物質に、「PFOA及びその塩」と「PFOS及びその塩」が追加されました。2023年2月に施行されています。
これら物質を対象施設から事故で公共用水域に流出等した場合、応急措置と都道府県等への届出義務があります。

最近では、2023年12月に改正化審法施行令が公布されました。PFOSやPFOAの代替品として利用され、同様の性質を持つペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)の規制措置を定めるためです。

この改正では、PFHxSを第一種特定化学物質に指定し、原則として製造・輸入が禁止されました。施行日は公布後2カ月以内です。対象は、「PFHxS若しくはその異性体又はこれらの塩」です。
第一種特定化学物質が使用されている場合に輸入することができない製品として、「はつ水性能又ははつ油性能を与えるための処理をした生地」など10の製品も指定されました。この施行日は公布後6カ月以内です。

さらに、取扱い時に国が定める技術上の基準に従わなければならない製品として、当分の間、PFHxS等が使用されている消火器、消火器用消火薬剤及び泡消火薬剤も定めました。施行日は公布後6カ月以内とされています。

このように、PFASに関連した規制が年々強化されています。
これら物質を取り扱っている企業は、法改正の動向に最新の注意を払いながら、今後の対応方針を検討すべきでしょう。

◎「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令の閣議決定について」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/press_02450.html

(2024年01月)

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