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水質汚濁防止法、事故時の措置が改正!

Author

環境コンサルタント
安達宏之 氏

水質汚濁防止法では、「事故時の措置」が定められています。
事故が起き、河川等に汚水が流出等した場合、応急措置と都道府県への届出を義務付けています。

この事故時の措置の対象は、主に3つあり、①特定事業場、②指定事業場、③貯油事業場です。
①は、言うまでもなく、本法に基づく特定施設の届け出をしている事業場となります。
これに対して、②と③は「事故時の措置」を定める本法第14条の2のみに登場してくる規制対象です。有名なのは、③です。原油、重油、潤滑油、軽油、灯油、揮発油、動植物油を貯蔵する貯油施設や油水分離施設のことです。

令和4年11月、本法施行令の改正案が公表されました。
上記のうち、②に新たに物質を追加することになったのです。具体的には、LAS、アニリン、PFOS(及びその塩)、PFOA(及びその塩)について指定物質に追加されようとしています。

では、この指定事業場の事故時の措置がどのようなものか、次の図表をご覧ください。

 水質汚濁防止法における指定事業場の事故時の措置

まず、今回の改正の直接的な規制対象は、「指定事業場」です。
これは、「指定施設を設置する工場又は事業場」となります。では、「指定施設」とは何かというと、次の2つから成ります。

●有害物質を貯蔵・使用する施設
●指定物質を製造・貯蔵・使用・処理する施設

このうち、「有害物質」とは、カドミウム及びその化合物、シアン化合物など、28物質を指します。

一方、「指定物質」とは、ホルムアルデヒド、ヒドラジンなど56物質となります。
この指定物質について、本改正案により、LAS、アニリン、PFOS(及びその塩)、PFOA(及びその塩)が追加されようとしているのです。

したがって、これら化学物質を製造・貯蔵・使用・処理する施設は要注意です。

では、該当する場合、何をしなければいけないのか。
本法の事故時の措置のフローは次の通りです。

まず、指定事業場で事故が発生し、有害物質又は指定物質が公共用水域に排出され、又は地下に浸透したとします。それにより、人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるとき、この指定事業場の設置者は、①直ちに、応急の措置を講ずなければならず、また、②速やかに事故状況及び措置の概要を都道府県知事に届け出なければなりません。

かりに応急措置を講じていないと認めるときは、都道府県知事は応急措置を命令することができます。命令に違反すれば、罰則が適用されます。

一般に、特定施設を設置している事業所では、水質汚濁防止法に基づき設置届出をしているので、自らが同法の規制対象であるという認識があり、それに伴いこの事故時の措置の規定をよく知っていると思います。

一方、指定施設や貯油施設等を設置している事業所では、同法に基づく設置届出の義務はありません。事故時の措置のときのみ、同法が適用されます。そうなると、同法の規制対象であるという認識が欠け、社内の緊急事態の手順書等においてもこれら規制がすっぽりと抜け落ちていることがあります。

今回の改正により追加される化学物質とともに、すでに指定されている化学物質や油について改めて事業所内の有無を確認するとよいでしょう。

◎「水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令案に関する意見募集(パブリックコメント)について(環境省)
https://www.env.go.jp/press/press_00964.html

(2022年12月)

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