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改正省エネ法、施行! ~非化石エネルギー対策のポイントとは?

Author

環境コンサルタント
安達宏之 氏

2023年4月、改正省エネ法が施行されました。
今回の法改正では、法律の名称が変更されるほど、大きな改正です。すなわち、この4月から省エネ法の名称は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」から「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーの転換等に関する法律」に変わりました。
今回は改めてこの法改正のポイントと対応方法について解説します。

改正法のポイントは、次の図表の通りです。今回の改正は、法律、政令、省令、告示それぞれにおいて大幅な改正となっており、法令原文の変更点を見ていると、何がポイントとなるかわからなくなるかもしれません。
しかし、改正のポイントはあくまでもシンプルですので、まずはこれを押さえることです。
なお、次の図表中の②及び③については、国への報告が義務付けられています。この報告義務がある対象事業者は、これまでと同じ特定事業者(原油換算で年間1500キロリットル以上のエネルギーを使用する事業者など)となります。

改正省エネ法のポイント

改正前 改正後
①省エネの範囲
  • ・化石エネルギーの省エネ(石油、揮発油、可燃性天然ガス、石炭など)
  • ・化石エネルギーの省エネ
  • 非化石エネルギーの省エネ(黒液、木材、廃タイヤ、廃プラスチック、廃プラスチック、水素、アンモニア、太陽熱などの非化石熱、太陽光発電などの非化石電気等)
②目標設定、報告
  • ・省エネの中長期計画、定期報告の提出
  • ・省エネの中長期計画、定期報告の提出
  • 非化石エネルギー転換の中長期計画、定期報告の提出
③電気使用量報告
  • ・電気の需要の平準化の報告(昼間/夜間/平準化時間帯〔夏期・冬期の昼間〕に分けて電気使用量を報告)
  • ・電気の需要の最適化の報告(月別又は時間帯別〔30分又は60分単位〕での電気使用量を報告
  • DR(ディマンドリスポンス=電気の需要の最適化)(※)を実施した日数の報告

※①上げDR:再エネ余剰時等に電力需要を増加させる
 ②下げDR:電力需給ひっ迫時に電力需要を抑制させる

改正法では主に3つの変更をしています。

1つ目は、取組むべき省エネの範囲を変更したことです。

従来は、化石エネルギーの省エネのみを対象としていました。化石エネルギー、すなわち、石油、揮発油、可燃性天然ガス、石炭などを指します。これらの省エネだけに取組めばよく、例えば太陽光などの再生可能エネルギーについては、極端に言えば、どれだけ浪費しても本法に基づく指導等はできなかったのです。
しかし、改正により、化石エネルギーの省エネだけでなく、非化石エネルギーの省エネにも取組むことが求められることになりました。非化石エネルギーとは、黒液、木材、廃タイヤ、廃プラスチック、廃プラスチック、水素、アンモニア、太陽熱などの非化石熱、太陽光発電などの非化石電気等を指します。

このように、取組む対象の「省エネ」が非化石エネルギーにも拡大されたので、今後、中長期計画や定期報告をまとめる際には、化石エネルギーだけでなく、非化石エネルギーの省エネについても記載する必要があります。

2つ目は、目標設定・報告の対象に非化石エネルギーへの転換を追加をしたことです。

従来は、大規模にエネルギーを使用する「特定事業者」等に対して、省エネの中長期計画や定期報告の提出を義務付けていました。
改正により、省エネの中長期計画、定期報告の提出を引き続き義務付けるとともに、非化石エネルギー転換の中長期計画、定期報告の提出も新たに義務付けることになったのです。

この2つ目の改正点は、今回の法改正の最大のポイントと言えるでしょう。
これまでは、省エネの判断基準(「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」など)に基づき、省エネの取組みを計画し、実施状況を報告していましたが、これに加えて、非化石エネルギーへの転換の判断基準(「工場等における非化石エネルギーへの転換に関する事業者の判断の基準」など)に基づき、非化石エネルギーへの転換の取組みを計画し、実施状況を報告することが義務付けられました。

例えば、工場等に対する電気に関する事項への取組みとして、非化石電気の使用に対応した設備の選定、非化石比率の高い電気の調達、電力証書等の活用を促しています。
目標部分において特定事業者等が中長期的に努力し、計画的に取り組むべき事項としては、①供給された電気及び自家発電による電気の使用量に占める非化石エネルギーの割合に関する目標の設定、②国が目安となる水準を定める指標に関する目標の設定、③その他業態特性や固有の事情等を考慮した指標に関する目標の設定を定めています。

様式への具体的な記載例については、下記の参照サイトのパンフレットの中に書かれているので、それに沿いながらまとめていくとよいでしょう。

また、鉄鋼業(高炉・電炉)、セメント製造業、製紙業(洋紙・板紙)、石油化学業(石油化学系基礎製品製造業・ソーダ工業)、自動車製造業の5業種8分野については、取組みの目安が定められています。これら業種に属する企業は、その目安に対する目標の設定、計画策定、実績報告を行うことになります。

3つ目は、電気使用量報告の規定を変えたことです。
従来は、「電気の需要の平準化」の報告を義務付けていました。これは、昼間/夜間/平準化時間帯(夏期・冬期の昼間)に分けて電気使用量を報告するというものです。
これについて、改正により、「電気の需要の最適化」の報告に切り替えました。電気使用量の報告については、月別又は時間帯別(30分又は60分単位)での電気使用量とするとともに、DRを実施した日数の報告も求めています。
「DR」とは、「ディマンドリスポンス(電気の需要の最適化)」のことです。「上げDR」(再エネ余剰時等に電力需要を増加させる)と「下げDR」(電力需給ひっ迫時に電力需要を抑制させる)それぞれの実績報告を行うことを求めています。

改正後の新制度に基づく中長期計画書の提出期限は、特定事業者が2023年7月31日、特定荷主が同6月30日です。新制度に基づく定期報告書の提出期限は、特定事業者が2024年7月31日、特定荷主が同7月1日です。
最近、下記の参照サイトなどにおいて、改正省エネ法に関する詳しいパンフレット等が公開されました。これらを確認し、特定事業者など規制対象の企業は、中長期計画の策定などを早急に始めることが求められます。

◎改正省エネ法の説明動画、省エネ法の手引き(工場・事業場編、荷主編)を公開しました。(資源エネルギー庁)
⇒ https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/index.html

(2023年5月)

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