環境コンサルタント
安達宏之 氏
9月、ついにISO14001:2015年版が発行されました。
このニュースに接したISO認証取得企業のご担当者の中には、「さて、ではわが社は何からやればいいのだろうか」と思った方もいるかもしれません。今号では、現在のISO14001:2004年版から2015年版に移行させるスケジュールについて考えてみましょう。
まずISO14001が2004年版から2015年版へ移行するスケジュールをまとめてみます。ISOは、前述の通り9月に発行されました。今後、JIS規格(JIS Q 14001:2015)が11月下旬頃に発行される予定です。
移行の期限はISO発行後3年と定められているので、2018年9月が期限となります。
企業を審査し、認証を与える審査登録機関は、この期限を見据え、登録企業に対する移行審査のスケジュールを定めています。
移行期限が2018年9月だとしても、期限間近に審査を実施し、是正処置を伴う不適合が検出されれば、期限までの移行が難しくなってしまいます。したがって、どの審査登録機関も、移行期限より数カ月前に移行審査の期限を設けるなど、余裕を持ったスケジュールを示していることでしょう。
以上を踏まえて、各企業の移行スケジュールを考えてみます。
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |||||
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9月 | 11月 | 1月 | 1月 | 1月 | 3月 | 5月 | 9月 | |
ISO移行期間 | ISO発行 | JIS発行 | 移行期限 | |||||
ある企業の予定 | (事前調査) | 移行に向けた本格検討開始※ | 2015年版でのEMS運用開始 | 同月までに内部監査、マネジメントレビューを終了 | 移行審査を受ける | 審査登録機関による認証 |
(※)2016年の1年間において、①現在のEMSと2015年版の要求事項の差分を検討、②2015年版仕様の素案の作成、③素案を社内で検討(環境委員会で議論)し、2015年版のEMSを完成させる。
できる限り早めに移行審査を終える方法も考えられますが、ここではとりあえず移行期限の半年前の2018年3月に移行審査を終えることを目標に組み立ててみます。
なお、審査終了後、正式に移行が決定するまで1カ月程度はかかるとすれば、2015年版の認証取得は2018年4月となります。
審査登録機関は、移行審査を実施する条件として、2015年版に基づいてEMSをある程度運用した実績を求めてくることでしょう。
基本的には、マニュアル等の仕組みを2015年版に切り替え、それを運用し、内部監査やマネジメントレビューまでを行うことが審査を受ける条件となるかと思います(具体的には各審査登録機関へお問い合わせください)。
社内のEMSを2015年版に切り替えてから、活動の実績を積み重ね、そのマネジメントレビューを行うまでの期間は、企業によって大きく異なります。
ある企業がこの期間を検討したところ、社内におけるEMSの仕組みや業務の都合上、臨時の内部監査等を行うことができないために、最短で1年かかってしまうことが明らかになりました。つまり、少なくても2017年初頭には2015年版に切り替えなくてはなりません。
そうなると、2015年版への切替えに向けた検討期間は、2016年早々にスタートさせた場合でも1年間となります。 すなわち、2016年中に、(1)現在のEMSと、2015年版の要求事項の差分を検討する、(2)2015年版仕様の素案をまとめる、(3)素案を社内で検討する―を行い、2015年版のEMSを完成させることになります。
この企業のように、移行に向けた本格検討開始から2015年版でのマネジメントレビューを終了させるまでに2年間かかる例がある一方、もちろん、それを数カ月で終わらせる企業の例もあることでしょう。
とはいえ、次回お伝えするように、現行版から2015年版への移行は簡単ではありません。マニュアル等の改訂とともに、その試行、社内への周知徹底が必要です。2015年版では経営層の関与も重視されるので、経営層との調整時間も考慮しなければならないので、移行に向けた時間はそれなりにかかると考えておいたほうが無難です。
期限間際になって慌てぬよう、早めに取り掛かることが肝要です。 まだ取り組みを始めていない企業では、審査登録機関にも相談のうえ、最低限、移行に向けた大まかなスケジュールを検討・立案し、自分たちがいまどのような状況にいるのかを把握することをお勧めします。
(2015年09月)