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EMSの具体的な活動の姿を示す~ISO14001:2015年版「6.1.4(取組みの計画策定)」を読む

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

ISO14001:2015年版の細分箇条6.1.4「取組みの計画策定」では、組織に対して、次の3つの取組みを計画することを求めています。
①著しい環境側面
②順守義務
③リスク及び機会

この細分箇条は2004年版では存在しなかったものです。

そのため、この対応に悩む担当者も少なくありません。「取組みの計画」を求めているということで、環境目標やその取組みの計画の策定とは別に、新たな何らかの計画を策定するのではないかと考えている方もいました。

しかし、規格全体を読む中で、この細分箇条の位置づけを考えると、ここでは新たな要求事項を定めているものではないことがわかります。

ここでは、箇条6において決定してきた、著しい環境側面、順守義務、リスク及び機会の3つについて、目標展開や運用管理などにおいてしっかり計画化して実行してくださいということを求めているにすぎません。

事実、この細分箇条では、上記事項に続けて、こうした計画化すべき取組みについて、EMSの目標・計画(細分箇条6.2)、支援(箇条7)、運用(箇条8)、監視・測定・分析・評価(細分箇条9.1)に統合させて、実施することを求めています。 これを見れば、この細分箇条の場所に新規に何か新しいことを求めているわけではないことがわかります。いわば、計画化すべき取組みの交通整理を行っているわけです。

さらに、この細分箇条では、計画化すべき取組みの展開方法として、EMSプロセスの中だけで統合・実施するのではなく、「他の事業プロセス」への統合・実施も可能であるとしています。
「他の事業プロセス」には、EMSプロセスの他のものとして、例えば品質や労働安全衛生のマネジメントシステムのプロセスもあるでしょうし、それ以外の本業の各種プロセスもあるでしょう。

例えば、化学物質の管理という取組みがある場合、EMSの中で対応する方法のみが認められるということではなく、労働安全衛生委員会における対策として実施することや、サプライチェーン対策として実施することなど、多様な方法を認めているのです。

狭いEMS活動とせずに、必要であれば、有効なプロセスをうまく活用するように促していると言えるでしょう。

この他に、計画化された取組みについて、その有効性を監視等することにより評価することを求めています。

また、取組みの計画化に当たっては、技術上の選択肢、財務上・運用上・事業上の要求事項を考慮することも求めています。

計画化すべき事項をしっかり計画化し、それを6.2以降の規定の中で、着実に活動していくことを確認する場が、この細分箇条と言えます。

EMSの具体的な活動の姿を示す場が、本細分箇条なのです。

(2016年10月)

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