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災害廃棄物について考える

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BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

ちょっと、ちょっと、この記事ってBUNさんのとこ?大変な被害ですね。BUNさんは大丈夫だったの?
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出典:2022年9月3日 山形新聞

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お陰様で・・・と言うと被害に遭われた方に申し訳ないんだけど、BUNさんの自宅はなんの被害も無かったんだ。水道が数日断水しちゃったけど。
それはそれで不便だったわよね。
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ただ、その期間、BUNさん自身は札幌に出張してて帰ったら家族からさんざん嫌味を愚痴られましたけど。
そりゃそうよ。「あんただけ楽しい思いしてきて。こっちは大変だったんだから。」って言いたくもなるわよ。
それにしても、「災害」って昔に比べるとなんか多くなってきている感じがするなぁ。災害廃棄物の処理ってどうなっているんだろう?
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実は、この災害の時も気になって、発災からは一ヶ月ほど経っていたんだけど、災害廃棄物の臨時集積所に行ってみたんです。その時の状況が、ちょうどこの記事。本来は町の「ユリ園」という憩いの公園であるはずの駐車場なんだけどね。
すごい量ねぇ。どの位あるのかなぁ。
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BUNさんの経験上、ざっと見て3~5千㎥くらいかなぁ。災害廃棄物って災害が起きて直後にわかるってもんじゃないからね。家を片付けてそれから搬出したりするのもあるから、これからも増えていくかも知れないし。
いったい、全国ではどのくらい発生しているんだろう?
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それについては、数年前になるけど次の記事がデータを載せているよ。
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出典:2020年8月10日 読売新聞

どれどれ?東日本大震災では3,100万トン。2018年の西日本豪雨では200万トンかぁ。膨大すぎて想像もできないなぁ。
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最近の産業廃棄物の年間埋立量が毎年約900万トンだから、東日本大震災では4年分、西日本豪雨では3ヶ月分。10トンダンプだと西日本豪雨でも20万台ってことだね。
その膨大な災害廃棄物ってどういうふうに処理されているんだろう?
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昔々は現場にそのまま埋立することがほとんどで、今でも再開発事業をすると遺跡になって発掘されるときもある。
ポンペイの遺跡は有名よね。
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でも、そうなるとその土地はしばらくは使えなくなる。そこで、昭和、平成の時代になると、埋立地に運んで処分するようになった。しかし、近年は災害が多発するようになり、そうなると最終処分場の残存容量はあっと言う間に無くなっていく。そのため、平成27年に災害対策基本法とともに廃棄物処理法も改正を行って、災害廃棄物であっても出来る限り減量化、再生化を図るという「非常災害により生じた廃棄物の処理の原則」という規定を定めたんだ。
そうは言っても災害廃棄物は一時に大量に、そしていろんな物が混じり合って出てしまうでしょ。
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そうだね。木くずだけに分別しても、通常の木材チップのようには活用しにくいみたいだね。
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出典:2022年9月5日 循環経済新聞

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家電リサイクル法の対象のテレビや冷蔵庫もリサイクルルートに乗せるのはなかなか難しいようだね。それに、災害廃棄物は公衆衛生、伝染病のリスクもあるからできればなるべく早く処分したい。当面は、相当な比率で最終処分場で埋め立てせざるを得ないでしょうね。
その受け皿なんだけど、災害廃棄物って一般廃棄物なんでしょ。市町村だけで大丈夫なのかなぁ。
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災害廃棄物は事業活動を伴わずに発生する。だから、一般廃棄物であり、一般廃棄物の統括的責任は市町村にあることから、災害廃棄物の処理は一義的には市町村にある。でも、リサさんの疑問の通り、市町村の処理施設だけでは限界がある。それにさっきも言ったとおり、災害廃棄物は平常時の一般廃棄物と違って、一時に大量に、そして平常時であれば産業廃棄物になるような汚泥や建設木くず、がれき類が多い。そのために、法令も改正してきているんだ。
たとえば?
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平成15年の時に、産業廃棄物処理施設で一般廃棄物も受け入れ可能にする制度を作った。さらに、平成27の改正で災害廃棄物を受け入れるときはその制限をさらに緩和したんだ。
処理施設の方は対応するとしても「業許可」の関係はどうなの?
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それについては平常時の一般廃棄物でも「市町村委託」という制度があり、「市町村が委託する時は一般廃棄物処理業許可不要」という規定が廃棄物処理法スタート時からある。これを活用して、日ごろは一般廃棄物処理業をやっていない産業廃棄物処理業者や土木建築業者に委託する、ということが可能なんだ。
そうはいっても災害が大規模になるほど、地元の市町村じゃ対応出来ないよね。
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そういった大規模災害も想定して、平成27年の改正で、実質上、市町村が国に業務委託できる規定も作っているんだ。
へぇぇ、制度的にはだいぶ整備してきているんですねぇ。災害が起きたら、まずは何をさておき、人命が最優先だから地元の市町村では、そちらに人手を取られて、廃棄物についてはどうしても後回しになってしまうわよね。そういった制度は必要よね。
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最近、国が推し進めている施策には「災害廃棄物計画」の策定がある。「計画」、特に行政が策定する「計画」というとややもすると絵に描いた餅のようなものもあるけど、市町村の災害廃棄物処理計画は、さっき話したような事柄を具体的に想定しておくことがポイントだね。
と言うと?
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たとえば、どの程度の水害が起きれば、木くず、がれき類、家電製品・・・・がそれぞれこの地域からはどの程度出る。それを一時的にはどこそこの仮置き場に集積させる。そして、それぞれどういった処理施設に誰に搬入してもらう。こういった具体的な計画が求められる。
その際、既存の一般廃棄物処理業者さんにはどのような役割をどの程度果たしてもらう。産業廃棄物処理業者にはどうか?さらに県外の業者の活用はどうするか?こういったことを想定しておく必要があるね。
そうは言っても、計画を策定する市町村が、勝手に想定しても実効性は無いわよね。それぞれのプレーヤーに納得、承知しておいてもらわないと。
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そこで効果的なのが「協定」だね。だから現在は多くの自治体で処理業協会、組合等と「災害廃棄物協定」を締結しているんだ。協定の相手は市町村や都道府県の枠を超えて締結するときもある。
災害ってなかなか予測が付きにくい要素も多いでしょうけど、それでも今までの経験を生かしてできるだけ実効性のある計画や協定にしていくことが大事なんでしょうね。
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災害廃棄物はまだまだ課題が多いけど、今日のところはこの程度にして、機会があればまた取り上げることにしましょうかね。

(2022年09月)

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