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ブローカー行為について考える

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BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

BUNさん、BUNさん、こんな記事が出てたんですよ。でも、何回読んでも難解。
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ほぉー、「何回」に「難解」。リサさんもBUNさんに感化されてだいぶダジャレが上手くなったね(^o^) で、どんなところが難解なのかな。
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出典:2022年4月18日 循環経済新聞

「処分」って中間処理か最終処分でしょ。そもそも、処分業の許可が無ければ処分出来ないんだから、物理的にも処分できないんじゃないの?
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そんな疑問が出てくるとは、ダジャレだけじゃなく、廃棄物処理法についてもだいぶ勉強してきていると見えるね。この事案は、その次に掲載している記事も合わせて見ると全体像が見えてくるよ。
どれどれ?さっきの記事と同じ、三重県四日市市釆女町地内の解体現場が発生場所で時期も同じってことになると、この二つの記事は同じ事案って考えてほぼ間違いないわね。
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そうだねぇ。ちなみに、今回のように疑問に思った事案については、必ず「原典」、で確認しておくことも必要だよ。このケースでは三重県庁のホームページだね。
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このように2つの行政処分は1つの事案だったことがわかる。リサさんの質問で特に必要なのは「行政処分の理由」なので、ここは大きくしてみてみようか。
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どれどれ。えぇと、「物」は解体建設廃棄物ね。それをB工業が処分業の許可を持たない株式会社Cに処分を委託した。また、収集運搬もC社に委託したけれど、こちらは書面による契約書がなかった。さらに、マニフェストも交付しなかった。
これを受け手のC社の立場で見ていくと、C社は処分業の許可を持っていないのにB工業から「処分」を受けた。そして、マニフェストが無いのに収集運搬を引き受けた、ってことね。ん~、今ひとつ掴めきれないかな。
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そういうときは絵を描いてみるんですよ。次の図は建設系の廃棄物のイメージ図。
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建設廃棄物の排出者は誰だったかな?
それは勉強したわ。廃棄物処理法第21条の3第1項の規定により、工事の元請業者よ。今回の事案で言えばB工業が元請だから、このB工業が排出者ね。
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「そうだねぇ。だから、B工業自身が自分で運んだり処分していれば許可は要らない。ところが、実際は自分ではやらずにC社に「処理」を委託した。
「処理」、つまり、収集運搬も「処分」も頼んだってことね。
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これは想像なんだけど、建設系では今でも「徒弟制度」というか、「親方と弟子」とでも言うか、そういった慣習が残っていて、親方から「おい、これおまえんとこで始末しておいてくれ」と言われると、「わかりました親方。オレが始末しておきます」みたいなやりとりがある。
なるほど。「おまえんとこでやれ」これが「委託」。「おれがやっておきます」これが「受託」となる訳かぁ。
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そうだね。B工業は、条文で規定する「収集運搬」も「処分」も委託した。C社は「収集運搬」も「処分」も受託した。ここからがちょっとややこしくなるよ。C社は収集運搬業の許可は持っていた。
そうよねぇ。収集運搬業の許可停止処分を受けたくらいだから確実に収集運搬業の許可は持っているわね。
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だから、収集運搬業については「無許可」は問われていない。マニフェストを使わなかったことが違反、とされている。
なるほど。だから、行政処分理由に「収集運搬無許可」は無くて、「マニフェスト無交付受託」となっているのね。「処分」についてはどうなの?
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B工業の行政処分については「無許可業者に委託」は簡単にわかる。ところが、C社は「無許可で受託はしたが、現実には処分行為はやっていない。」おそらく、正規の「処分業の許可」を持っている業者に搬入したんだろうね。
建設廃棄物の処分業と言えば、木くずやコンクリートの破砕業者や木くず、紙くずの焼却業者、そして埋立業者さんよね。
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もし、この処分業者も違反行為をやっていたなら、三重県庁は一緒に処分業者も行政処分したと思う。ところが、記事にも県庁ホームページにも処分業者のことは触れられていない。そこで、「処分業者は違反は無かった」と推察したわけさ。
でも、そうするとC社は「収集運搬」行為は実際にやったけど、「処分」行為は実際にはやっていないんでしょ?それって違反じゃないんじゃないの?
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この「無許可受託」がいわゆる「ブローカー行為」になるんだね。「仲介行為」ではあるんだけど、排出者には「オレがやる」と言っているわけだ。
仲介行為でも、「私は処分業の許可を持っていませんから、処分業者のZ社を紹介します。」というのはいいのね。
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そうだね。その上で排出者である元請と処分業者が直接「処分契約書」をかわしているのなら違反にはならない。この事案ではB工業は口頭でC社に「やっとけ」と委託し、C社は「オレんとこでやっときます」と言ったんだろうね。だから「処分行為まで受託した」となったんだと思う。
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なるほど。全体像がわかってきたわ。整理してみるね。
四日市市内で解体工事があった。
工事の発注者は廃棄物処理法上は無関係だから、記事には登場していない。
工事の元請はB工業。B工業が排出者。排出者なら適正に委託しなければならなかったのに、契約書もマニフェストも無いままに、まるごとC社に委託した。
ただ、C社は収集運搬業の許可だけは持っていた。
よって、収集運搬に関しては「無許可委託」は問われずに、契約書を締結していないとして「委託基準違反」。
マニフェストを交付していなかったとして「管理票不交付」。
そして「処分」に関しては、処分業の許可を持っていないC社に委託したので「無許可業者委託」。
受け手のC社は、収集運搬業の許可は持っていたので、収集運搬業に関しては「無許可」にはならない。しかし、マニフェストが交付されていない産廃を受託したとして「管理票無交付受託」。そして、「処分」に関しては、「処分業」の許可が無いのに受託した。しかし、実際には処分行為はやっていない。そこでいわゆる「ブローカー行為」である「無許可受託」。
処分業者は、おそらく正規の許可業者なので、違反行為は無かった。こんなところかな。
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そうだねぇ。まともな処分業者なら、マニフェストが無い運搬業者や委託契約が無い人物からの産廃は受け取らない。だから、これも推測だけど受託したC社が排出者としてマニフェストを交付したり、処分業者と契約していたりしたんじゃないかな。
なるほど。処分業者はマニフェストが付いてきた産廃を受け取るときに「今日搬入してきた、この産廃の排出者は、本当にあなたですか?」なんて一回一回確認はしないものね。余程状況がおかしくない限りは、さすがに、そこまでは無理よね。
でも、排出者として行政処分されたB工業って許可停止になったくらいだから、許可持ってるのよね。そんな人物が「処分業の許可」が無い人物に委託するんだろうか?
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さっきも言ったけど、これが建設業界にまだ残っている悪しき慣習かなぁ。ついつい、昔のくせで「おい、やっとけ」。「はい、やっときます」ってなっちゃうんでしょうね。もちろん、大多数の建設業者さん、産廃処理業者さんは注意しているけどね。
発注者は廃棄物処理法上は無関係者とは言え、万一にも不法投棄になってたりすると名前が出ちゃう可能性もあるわね。建設工事の発注の時は確かな元請業者を選ばないとダメね。
じゃ、またね。
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(2022年11月)

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