大栄環境グループ

JP / EN

アスベスト廃棄物について考える

Author

BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

BUNさん、BUNさん、こんな記事が出てたんですよ。大変な被害ですね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
そうだねぇ。ただ、この裁判に出ているのは氷山の一角。次の記事も読んでみて。
第9回。「アスベスト廃棄物について考える」 画像1

出典:2022年5月31日 読売新聞

第9回。「アスベスト廃棄物について考える」 画像2

出典:2017年5月29日 読売新聞

BUN先生キャラクター画像
掲載されたのは数年前だし、メインは検査技術についてなんだけど、いくつか注目すべきデータを掲載している。
どれどれ。「アスベスト建材を使った民間の建築物が約280万棟、年間6万棟が解体されている。」って書いてあるわ。すごい数ね。どうしてこんなにリスクのある物質が、どうして世の中にこんなに出回ってしまったの?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
じゃ、一つ一つ説明していこうか。まず、「こんなにリスクのある物質が」ってことだけど、アスベストは一般には極めて安全な物質として扱われていたんだ。
と言うと?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
アスベストの日本語は「石綿」。まさに石の綿。石だから変化しない。腐らないし錆びないし。それに燃えない。野原や河川敷に石ころが転がっていても特段悪さはしないでしょ。
まさに「路傍の石」よね。気にもとめないわ。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
それに、後で話すけどアスベストによる症状は潜伏期間が長いため、病気の原因として認識されることも希だったみたいだね。
だから昔はデメリットはほとんど気にとめられず、メリットだけが注目された。
アスベストのメリットって?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
2番目の記事の注釈にあるけど「耐熱性」「防音性」、それに記事には書いていないけどさっき話したとおり「腐食性」も無く、化学変化しないってこともある。だから、中年以上の人は覚えている人もいると思うけど、昔は学校の化学実験の時にアルコールランプの上に乗せる金網にも使われていた。(現在の「ケミカル金網」にはシリコンが使用されていて、もちろんアスベストは使われていないよ。)
第9回。「アスベスト廃棄物について考える」 画像3
大量に使われていたのは、やはり建材かなぁ。ボイラー室の壁や天井に灰色の綿のような物が吹き付けられていた。あれが「吹き付けアスベスト」。ボイラー室は火の粉が飛び火災の危険性がある。また、ボイラー、ブロアーなどから騒音が出るけど綿状に吹き付けてあるので防音効果もある。
防火、防音効果があり錆びなくて丈夫、まさに理想の建材ね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
その性質を利用して、スレート板や石膏ボードにも使われた。強度が増すようにとアスベストが塗り込められた製品があったらしい。
それでこんなに多くの建築物に使用されることになったのね。じゃ、次にデメリット、リスクはどんなことなの?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
これも2番目の記事に書いてあるけど、中皮腫や肺がんを引き起こすこと。
どうして引き起こすの?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
それはまさにアスベストの形状に起因している。
これがアスベストの顕微鏡写真の模式図。形はストローの両端をカッターで斜めに切ったような状態。そして、大きさはだいたい髪の毛の5千分の一。
第9回。「アスベスト廃棄物について考える」 画像4
中空なうえに空洞なので一旦舞い上がると沈まずに浮遊する。
浮遊しているために吸い込んでしまう。吸い込んだアスベストは肺胞に達して突き刺さる。10年20年という長い潜伏期の後に中皮腫と言った肺がんの一種を引き起こす。これがアスベストのリスク。
なるほど。浮遊して吸い込むから危ないのね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
そう。だから、アスベストの廃棄物は廃棄物処理法上は大きく2分類に分けられるんだ。飛散して吸い込まれやすいのを「廃石綿等」という特別管理産業廃棄物。一方、アスベストは存在しているけれど、塗り込まれていたりして通常なら飛散しない「非飛散性」の「石綿含有産業廃棄物」という普通の産業廃棄物。
となると、吹き付けアスベストは飛散性だから特別管理産業廃棄物。スレート板や石膏ボードは普通の産業廃棄物となる訳ね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
そう。ただ、石綿含有産業廃棄物は普通の産業廃棄物ではあるんだけど、他の産業廃棄物にはない特別ルールがある。
どんなルール?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
処理の途中で破砕や切断等をしてはいけないって基準があるんだ。たとえば、石膏ボードを運搬している途中で「ちょっと長いなぁ」なんてパキッと折ったりしてはいけないってルールだね。
なるほど。石膏ボードやスレート板の中にアスベストが含有していたとしても、塗り込めている訳だから、その状態なら飛び散らない。飛び散らなければリスクは無い。ところが、パキッと折った瞬間に塗り込められているアスベストが飛び散らないとも限らないってことね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
そのとおり。だから、石綿含有産業廃棄物は普通の産業廃棄物の許可で取り扱われるんだけど、委託契約書やマニフェストには「石綿含有産業廃棄物」と特記しなければならないんだ。
そうか、それを明確にするために許可証にも「石綿含有産業廃棄物を含む」とか「含まない」とかわざわざ特記しているのね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
保管場所の掲示板にも石綿含有産業廃棄物を保管するときは明示しなければならないというルールだね。当然ながら特別管理産業廃棄物である飛散性のある「廃石綿等」はもっと厳しい基準があるよ。
どんな?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
発生時、すなわち建物の解体の時から労働安全関連の法令や大気汚染防止法などの規制を受け厳重に管理しながら排出されるし、埋立処分の時は、二重梱包や薬剤による安定化が規定されているんだ。
廃棄物処理法上、アスベスト廃棄物と同じようなルールの廃棄物は他にないの?
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
平成29年の改正以降は「水銀廃棄物」が同じような扱いになったね。水銀廃棄物も廃棄物処理法上は大きく「廃水銀等」という特別管理産業廃棄物と「水銀使用製品産業廃棄物」という普通の産業廃棄物に分類される。そして、普通の産業廃棄物である「水銀使用製品産業廃棄物」については、委託契約書やマニフェスト、保管場所での表示は特記しなければならないし、「途中で破砕や切断してはならない」という基準がある。
あっ、言われてみればちゃんとやっていたわ。蛍光灯と他の廃棄物は別に扱っていて、当然ながら途中で割れたりしないように保管しているわ。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
水銀廃棄物はその他にもいろいろ特殊なルールがあるから、別の機会に取り上げることにしようか。
そうねぇ。今回はアスベストの話だったわね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
平成18年に労働安全衛生法施行令が改正され、アスベストを重量比で0.1パーセントを超えて含有する全ての製品について、製造・輸入・譲渡・提供・新規の使用等が禁止されました。だから、アスベスト製品が今後増加することはない。しかし、冒頭で話したとおり、膨大な量のアスベスト製品が世の中に存在し、今後、建築物の建て替えなどの時にアスベスト廃棄物が排出される事になる。最近でもアスベスト廃棄物に関する事件は度々起きています。
第9回。「アスベスト廃棄物について考える」 画像5

出典:2021年2月22日 循環経済新聞

第9回。「アスベスト廃棄物について考える」 画像6

出典:2021年12月6日 循環経済新聞

適正に取り扱っていれば、それ程リスクのあるものじゃないでしょうけど基準に合わない取り扱いとなると怖い存在なんですね。
りさキャラクター画像
BUN先生キャラクター画像
まぁ、それはアスベスト廃棄物に限らず廃棄物全般に言えることだけどね。
アスベスト廃棄物もなかなか難しいでしょ。次回はもう少し簡単な記事を見つけてきてね。
~~(^^)/

(2023年01月)

PAGE TOP