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排水基準の有害物質規制が続々強化!~規制基準の中身もしっかり見直しを

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

水質汚濁防止法の規制対象となっている事業所(特定事業場)は、全国で約27万もあります。環境規制の中で本法の規制はポピュラーなものと言えるでしょう。

本法の対象企業が社内管理用ツールとしている法規制一覧表などを見ると、「水質汚濁防止法の排水基準の順守」などの項目を掲げた上で、「別紙」などで規制物質や規制値を掲げている例が少なくありません。

ところが、排水基準の対象となる物質や値が追加・変更されても、それに気づかずに、「別紙」を改訂していない企業が散見されます。その結果、排水基準違反になりかねない運用に陥っている場合もあります。最近では、排水基準の有害物質規制が次々に強化される傾向にあるので十分に注意したいところです。

平成24年には、有害物質にトランス-1,2-ジクロロエチレン、塩化ビニルモノマー及び1,4-ジオキサンが追加されました。関連して、本法の特定施設として次の2施設が追加されました。
(1)界面活性剤製造業の反応施設(1,4-ジオキサンが発生するものに限り、洗浄装置を有しないものを除く)
(2)エチレンオキサイド又は1,4-ジオキサンの混合施設
また、 1,4-ジオキサンについては0.5mg/Lとする排水基準も定められました。ただし、5業種には2~3年の間、暫定排水基準が設定されました(27年1月30日、このうち27年5月に適用期限を迎える4業種について、2業種について一般排水基準へ移行し、残る2業種について暫定排水基準値を強化して30年5月まで延長する案が公表されています)。

26年12月には、カドミウムの排水基準が強化されました。カドミウム及びその化合物の排水基準について、従来0.1mg/Lとされていたところを0.03mg/Lへ厳しくしたのです。
なお、金属鉱業など4業種については暫定排水基準が設定されました(金属鉱業の場合であれば、28年11月30日までは0.08mg/Lの緩い値を設定など)。

さらに、27年1月30日、中央環境審議会の排水規制等専門委員会より、トリクロロエチレンの排水基準を強化する報告書案が公表されました。

トリクロロエチレンについては、WHOの飲料水の暫定ガイドライン値などを踏まえ、23 年に水道水質基準が規制強化されています。26年11月には、行政目標となる水質環境基準のトリクロロエチレンの基準値について0.03 mg/Lから0.01 mg/Lへ強化されました。

報告書案では、新しい環境基準(0.01mg/L)の10倍値(0.1mg/L)を排水基準とすることが適当とする考え方が示されました。また、地下水の水質の浄化措置命令に関する浄化基準については0.01mg/Lの値が示されました。
なお、特定事業場の地下浸透基準値は従来通り(0.002mg/L)に据え置くことが適当とされました。また、いずれの業種に対しても暫定排水基準は設定されないということです。

このように規制基準は、法改正によってその項目や値が変わります。こうした“当たり前の変化”にも目を配り、環境法に対応することが求められます。

(2015年3月)

▶︎ トリクロロエチレンの排水基準改正関係(環境省)
http://www.env.go.jp/press/100274.html

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