福島第一原子力発電所の事故からもう少しで2年半。事故により放出された放射性物質に対処するため、環境法も大きく変わりましたが、現在どのような政策の体系となっているのかを確認しておきましょう。
もともと、環境基本法には、放射性物質による環境汚染を防止するための措置について、原子力基本法等の法律に対応を委ねるという規定がありました。 つまり、放射性物質による環境汚染については、環境基本法の適用範囲から外すことになっていたのです。
具体的には、原子力基本法の体系下にある、原子炉等規制法や放射線障害防止法などの規制を受けてきました。
ところが事故発生により放射性物質が一般環境の中に大量に放出されるに至り、もはや環境法から適用を除外する余地がなくなってしまいました。 平成24年1月に全面施行された放射性物質汚染対処特措法では、事故によって放出された放射性物質に汚染された廃棄物の処理や除染の枠組みを定めています。
ここで注意すべきことの一つに、放射能濃度が8,000Bq/kg以下の廃棄物の処理については、同法ではなく、廃棄物処理法が適用されることになっていることです。 廃棄物処理法2条1項では、放射性物質に汚染された廃棄物を適用除外とする規定がありますが、特措法によって「当分の間」読み替えられています。
この点について詳しくは、次の通知の9-10p.をご覧ください。
▶︎ 特措法と廃棄物処理法が適用される範囲について(PDF)
⇒http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/no111228002.pdf
さらに平成24年9月からは、原子力規制委員会設置法により、環境基本法も改正され、原子力基本法等に委ねる旨の規定が削除されました。 現在では、放射性物質による環境汚染を防止するための措置が環境基本法の対象とされています。
平成25年6月21日、「放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律」という長い名称の法律が成立・公布されました。 これは、大気汚染防止法などの個別の環境法について、依然として、放射性物質による環境汚染について適用除外とする規定が置かれていたので、こうした適用除外規定を削除するものです。
具体的には、大気汚染防止法と水質汚濁防止法における適用除外規定を削除し、環境大臣が放射性物質による大気汚染・水質汚濁の状況を常時監視することになりました。また、環境影響評価法における適用除外規定も削除し、 放射性物質による汚染についても環境影響評価を行うことになりました。施行期日は前者が公布日から6カ月を超えない範囲内で政令で定める日で、後者は公布日から2年以内で政令で定める日とされています。
このように、放射能を巡る環境法の動きはまだまだ収束しそうもありません。引き続きその動向にはしっかりと注意を払っておくことが必要です。
▶︎ 放射性物質環境汚染防止関係整備法(環境省)
⇒http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16574