平成29年6月、環境省はついに「水銀廃棄物ガイドライン」を公表しました。
10月1日からスタートする新・水銀規制の具体的な対応方法が記載されており、多くの事業者が待ち望んでいたガイドラインでした。
しかし、環境省は、ガイドライン公表についての報道発表すらホームページで行っていなかったと思います。いわばひっそりと公表するという、率直に言って理解に苦しむ公表方法でした。
とはいえ、これに基づく対応方法を企業内で検討・実施しなければ、法から逸脱しかねないので、企業の環境部門は十分にガイドラインを熟読することが求められます。
まず、ガイドラインを読みながら、水銀廃棄物対策の全体像を確認しましょう。
水銀廃棄物のうち、産業廃棄物に該当するものは、次の3つに分類されます。
・特定施設で生じた廃水銀等(製品製造等の試験研究をする研究所など)
・回収した廃水銀
②水銀汚染物(一部が、特別管理産業廃棄物)
・特別管理産業廃棄物(特定施設から排出、基準超過)
・水銀含有ばいじん等(産廃)
〇ばいじん等のうち水銀15mg/kg超えて含有
〇廃酸・廃アルカリのうち水銀15mg/l超えて含有
※上記のうち、一部は水銀回収を義務付け
③水銀使用製品産業廃棄物
・水銀電池、蛍光ランプ等の37種類など
※上記のうち、一部は水銀回収を義務付け(水銀体温計など21種類)
ガイドラインでは、上記3種類の廃棄物の処理方法について詳細に解説しています。企業担当者は、まず自社がどの分類の廃棄物を出しているのかをチェックし、該当するものの対応方法を検討・実施することになります。
また、前回の記事(【第50回】改正廃棄物処理法施行規則がついに公布!)で書いたように、多くの企業が関係する新規制は、このうち、水銀使用製品産業廃棄物です。
前回記事では、主に規制対象が何かについて紹介しました。その中には、蛍光灯のような多くの事業所から排出されるものも含まれることにも触れました。
では、ガイドラインでは、水銀使用製品産業廃棄物の排出事業者が行うべきこととして何を解説しているのでしょうか。
企業担当者が特に押さえておくべき点に絞って紹介してみます。
◆個々の水銀使用製品産業廃棄物を判別する具体的な方法を提示している。例えば、蛍光灯(蛍光ランプ)の場合、日本照明工業会のウェブサイトに掲載されている見分け方を参照するようにと指摘している。
◆水銀使用製品には、水銀使用製品の組込製品も該当する場合があるが、蛍光灯など所定の水銀使用製品を組み込んだ製品は対象にならない。しかし、ガイドラインでは、対象外であっても、容易に取り外せるものは取り外して廃棄し、その際はそれを水銀使用製品産業廃棄物として扱うことを求めている。
◆水銀使用製品産業廃棄物のうち、水銀体温計、スイッチ及びリレー、気圧計、湿度計など21種類については水銀の回収が義務付けられている(主に産廃処理業者に適用される処理基準)。処理委託する際、排出事業者は処理委託先へその旨を処理伝えることを求めている。
◆処理委託をするときは、「水銀使用製品産業廃棄物の処理を業として行うことができる者として都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者」に処理を委託することを求めている。※筆者注:現時点では、許可証を見ても、どの産業廃棄物処理業者が処理委託可能かを知ることはできない。処理業者や行政当局としっかりとコミュニケーションをとって、処理委託可能かどうかを排出事業者が見極めるという難しい対応を迫られることになる。
◆処理委託の際は、契約書やマニフェストに水銀使用製品産業廃棄物である旨の記載をする。処理状況を確認し、安定型最終処分場に処分されないことを含めて、適正処理されるために「必要な措置」を講ずることを求めている。
◆適正処理に必要な情報については、環境省の「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(WDSガイドライン)」を活用して行うことを求めている。
◆処理委託前に保管する際は、掲示板に水銀使用製品産業廃棄物を保管する旨を記載することや、他と混合しないよう仕切り等を設けることを求めている。蛍光灯などが破損した場合は、密閉容器等に入れて飛散防止措置を講じることなどを求めている。
10月1日施行までに、これらの点もしっかりと踏まえた対策を構築し、実行に移してください。
(2017年07月)
▶︎ ◎水銀廃棄物ガイドライン(環境省)
⇒https://www.env.go.jp/recycle/waste/mercury-disposal/h2906_guide1.pdf