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改正土壌汚染対策法、30年4月施行の詳細決まる~施設設置者による土壌汚染状況調査への協力とは?

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

平成29年12月27日、土壌汚染対策法施行規則や「汚染土壌処理業に関する省令」などの改正省令が公布されました(以下、「改正省令」と略)。これらは、30年4月1日に施行されます。

この改正省令は、29年5月19日に公布された改正土壌汚染対策法(以下、「改正法」と略)の施行に関連するものです。

改正法については、本連載の第47回目で取り上げました(「一時免除中の工場等の土壌汚染も規制へ!」)
 そこでは、改正法のポイントとして、①土壌汚染状況調査の実施対象となる土地の拡大、②汚染の除去等の措置内容に関する計画提出命令の創設、③リスクに応じた規制の合理化の3つがあると提示しました。

 実はこれら①~③の施行については、「公布の日から2年以内で政令で定める日」とされており、もう少し先の話です。
 改正法では、上記①~③とは別に、④土地の形質変更の届出・調査手続の迅速化、⑤施設設置者による土壌汚染状況調査への協力についての規定も整備され、これら④と⑤などが30年4月1日に施行されることになります。

 まず、④と⑤の改正について解説しましょう。

 ④について、本法では、3000平方メートル以上の土地の形質を変更する際、まず都道府県等への届出が義務付けられています。都道府県等は、その届出された土地について、行政保有情報をもとに汚染のおそれを判断し、汚染のおそれがある場合は、汚染調査を命じることになっています。

 ところが、届出後に都道府県等が汚染のおそれを判断し、調査命令を経て調査を行うことになると時間がかかってしまいます。

 そこで、改正法では4条2項を新設し(従来の2項は3項へ移動)、届出前に、土地所有者等の全員の同意を得て、汚染状況について指定調査機関に所定の調査をさせ、形質変更の届出に併せて、その結果を都道府県等に提出することができるようにしました。
 これによって、都道府県等による汚染のおそれの判断が迅速化できると考えたのです。届出時にこの調査結果の提出があった場合には、4条3項に基づく汚染調査結果の報告命令の対象とはならなくなります。

 今回の改正省令では、「土地所有者等の全員の同意」の方法を定めました。同意を得る際には、土地の形質変更の場所を記載した書面により行うものとしたのです。なお、その同意については、調査請負契約の発注者が土地所有者等であることを証する書類により代えることも可能とされました。

 次に⑤について、本法には新たに62条の2が追加されました。
 これは、有害物質使用特定施設を設置していた者は、汚染調査を行う指定調査機関の求めに応じて、施設で製造・使用・処理していた特定有害物質の種類等の情報を提供するよう努めることを求めました。

 本法では、有害物質使用特定施設における調査について、土地所有者等に義務が課されています。
 一方、有害物質使用特定施設設置者と土地所有者が異なる場合、設置者の協力が得られない場合に、使用等されていた物質や位置の特定に支障を生じていることがありました。そこで、上記の努力義務規定を設けたのです。

 努力義務規定とはいえ、かつての有害物質使用特定施設の設置者に対して、協力することが法律で明示的に求められることになったので、ますます設置者の責任は重くなったと言わざるをえません。
 また、現在、土壌汚染対策法の対応を求められていない事業者であっても、有害物質使用特定施設を設置している場合は、将来の対策リスクに備えて、日頃からの管理徹底をさらに行うべきでしょう。

 なお、今回の改正省令では、上記⑤に関連する事項はありません。
 ただし、改正省令では、上記以外についても、次の点についての規定が整備されました。
 ・指定が解除された要措置区域等の台帳
 ・汚染土壌処理業の許可の申請など
 ・指定調査機関の技術管理者証の交付期間の延長など
 ・管理票の写しの電磁的記録による保存

 このように、改正法は、①~③の施行た動きとともに、④、⑤などの30年4月施行分の動きもありますので、見逃さないようにしたいものです。

(2018年01月)

◎土壌汚染対策法の一部を改正する法律の一部の施行等について(環境省水・大気環境局長)
http://www.env.go.jp/hourei/add/f045.pdf

◎土壌汚染対策法施行規則の一部を改正する省令等の公布及び意見募集(パブリックコメント)の結果について(環境省水・大気環境局土壌環境課)
http://www.env.go.jp/press/104978.html

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