改正省エネ法が、2018年12月1日に施行しました。
この改正概要については、本連載ですでに解説していますので詳しくは触れませんが(第60回コラム)、(1)荷主規制の強化、(2)企業連携による省エネ評価制度の創設を柱としています。
上記のうち(2)は特例措置であり、企業にとっては規制緩和の改正と言えます。これに対して、(1)は規制強化であり、注意が必要です。特にネット小売事業者は新たな規制対象となりましたので、適切な対応が求められます。
ところで、(1)の対策の中で、「準荷主」という新しい概念が登場しました。
聞き慣れない言葉ですが、これは、到着日時等を適切に指示することのできる貨物の荷受け側を指します。
荷主ではなく荷受け側なので、当然本法の「荷主」には該当せず、これまでは何の規制もありませんでした。
しかし、多くの事業場面では、荷受け側が到着する貨物について到着日時などを指示することが見られます。こうしたときに到着日時等を適切に指示しないことにより、貨物が無秩序に到着し、手待ち時間が発生する場合があります。
筆者が工場や事業場を訪問すると、門の外に多数のトラックが待機しているという場面をよく見かけます。
ある調査によれば、1運行(運転の開始から終了までの一連の乗務)あたりの手持ち時間は、1時間超が55.1%、2時間超が28.7%もあるそうです。しかも、荷受け側の都合による手持ち時間の発生状況が全体の半分を超えているそうです。
そこで、改正法では、貨物の到着日時などを指示することができる荷受け側を「準荷主」と位置づけ、貨物輸送の省エネへの協力を求めました。
具体的には、本法103条2項により、準荷主は、荷主が実施する輸送関係の省エネに資するよう、貨物の受取りや引渡しを行う日時などの指示を適切に行うよう努めなければならないこととされました(努力義務)。
12月に入ると、具体的な取り組み方法をまとめた「準荷主ガイドライン(荷主が実施する措置によるエネルギー使用の合理化に資する準荷主の指示に関するガイドライン)」が公表されました。
その全体像は、次の図表のとおりです。
図表:準荷主ガイドラインの全体像
「準荷主」: 貨物輸送事業者との契約関係はないものの、貨物の受取又は引渡しを行う日時及び場所の指示を行うことができる事業者 ※「指示を行うことができる」:荷主と貨物輸送事業者との契約で、受取、引渡しの日時や場所に一定の幅が許容され、日時や場所について指示できる |
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取組事例 | 1 | リードタイムの見直し |
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2 | 発注ロット・発注頻度の見直し及び発注量の平準化・最適化 | |
3 | 大型輸送機器の受け入れ体制の確保 | |
4 | 計画的荷積み・荷卸しの推進 | |
5 | ユニットロードシステム化の推進 | |
6 | 関連インフラの整備 |
ガイドラインによれば、まず、準荷主とは、「貨物輸送事業者との契約関係はないものの、貨物の受取又は引渡しを行う日時及び場所の指示を行うことができる事業者」を指します。
「指示を行うことができる」とは、「荷主と貨物輸送事業者との契約において、受取、または引渡しの日時や場所に一定の幅(例えば午前中、先方の工場へ配送等)が許容されていて、その日時や場所について指示(例えば10時に工場内の指定場所等)を行うことができるということ」とされています。
ガイドラインでは、本法の関係する条文解釈を示すとともに、省エネに向けて準荷主が取組むことができる具体的な事例を提示しています。
具体的には、省エネな輸送方法選択や利用効率の向上に分類し、次のような取組みが示されています。
(1)リードタイムの見直し
〇貨物の適性を踏まえ、必然性のない翌日配送を見直し、翌々日配送などに改めることを含め、曜日及び時間指定の適正化に努め、モーダルシフトや積載率向上が図れる。
(2)発注頻度・発注ロットの見直し及び発注量の平準化・最適化
〇貨物の適性を踏まえ、多頻度・小ロット発注の見直しや発注量の平準化・最適化に努め、大型輸送手段の選択や、積載効率向上が図れる。
(3)大型輸送機器の受け入れ体制の確保
〇車両の大型化及びトレーラー化並びに船舶の大型化等により、荷主が貨物輸送事業者に対し、便数を削減して発注できるように、大型輸送機器の受け入れ体制の確保に努める。
(4)計画的荷積み・荷卸しの推進
〇荷待ち時間の短縮のため、予約受付システム等の活用による計画的荷積み・荷卸しの推進に努める。
(5)ユニットロードシステム化の推進
〇発着地におけるトラック積込み・積卸し作業や検品作業の効率を向上するため、一貫パレチゼーションを中心としたユニットロードシステム化の推進に努める。
(6)関連インフラの整備
〇交通流の円滑化のために、事業者や地方公共団体等と協力して、荷捌き場、駐停車場所、運転手控え室及び進入出路の整備に努める。
改正省エネ法における準荷主の規定は努力義務ですが、省エネ効果が少なからず上がるということなので、該当する事業者には、積極的な対応が求められます。
(2018年12月)
「準荷主ガイドライン(荷主が実施する措置によるエネルギー使用の合理化に資する準荷主の指示に関するガイドライン)」(資源エネルギー庁)
⇒http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/ninushi/pdf/junninushi.pdf