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フロン排出抑制法を改正へ!~機器廃棄時の規制を大幅強化

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 2019年3月19日、フロン排出抑制法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律)の改正法案が閣議決定され、通常国会へ提出されました。

 改正法案は、HFC(ハイドロフルオロカーボン)規制を強化する内容です。

 HFCは「代替フロン」とも呼ばれています。オゾン層を破壊するフロン(特定フロン)に代わり、冷媒として広く利用されています。
 この代替フロンは、オゾン層を破壊しないものの、強い温室効果を有しています。具体的には、二酸化炭素の数十倍から1万倍超の温室効果を持っており、地球温暖化防止のために対策が求められています。

 しかし、その排出は増加し続け、2017年度の速報値では、前年度比 7.6%増、2013年度比 42.5%増となっています。
 今回の改正法案は、こうした状況を踏まえてHFCの対策強化に踏み切ったものなのです。

 2月に経済産業省と環境省の審議会がとりまとめた報告書「フロン類の廃棄時回収率向上に向けた対策の方向性について」(2019年2月・産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会フロン類等対策WG・中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会合同会議)が公表されました。改正法案は、本報告書にて提示された対策の方向性を基に取りまとめられたものです。
 フロン排出抑制法の規制には、フロン冷媒を使用する業務用冷凍空調機器の廃棄時の規制があります。
 機器ユーザーは、機器の廃棄等を行おうとする際、自ら又は他の者に委託して、機器に冷媒として充填されているフロン類を第一種フロン類充填回収業者に引き渡さなければなりません。

充填回収業者に引き渡されたフロン類は破壊業者又は再生業者に引き渡されて破壊又は再生することとされており、これによりフロン類の廃棄時の大気放出を防止しています。

 しかし、フロン類の廃棄時の冷媒回収率は、本法施行以降、10 年以上3割程度に低迷しており、直近でも4割弱に止まっていました。
 こうした状況が続けば、前述したようなフロン類の排出増加を抑えることができません。そこで、報告書では、廃棄時回収率の向上対策についての意見をとりまとめ、それを踏まえて改正法案がまとめられました。

 改正法案の概要は、次の図表の通りです。

図表:改正フロン排出抑制法案の概要

改正の目的:廃棄時におけるフロン類の回収率向上

関係者が相互に確認・連携(ユーザーも規制強化)
1 機器廃棄の際の取組 〇都道府県の指導監督の実効性向上
 ユーザーがフロン回収を行わない違反に対する直接罰の導入
〇廃棄物・リサイクル業者等へのフロン回収済み証明の交付を義務付け
(充塡回収業者である廃棄物・リサイクル業者等にフロン回収を依頼する場合などは除く。)
2 建物解体時の機器廃棄の際の取組 〇都道府県による指導監督の実効性向上
 ・建設リサイクル法解体届等の必要な資料要求規定を位置付け
 ・解体現場等への立入検査等の対象範囲拡大
 ・解体業者等による機器の有無の確認記録の保存を義務付け
3 機器が引き取られる際の取組 〇廃棄物・リサイクル業者等が機器の引取り時にフロン回収済み証明を確認し、確認できない機器の引取りを禁止
(廃棄物・リサイクル業者等が充塡回収業者としてフロン回収を行う場合などは除く。)

 このうち、多くの事業者にとって特に気をつけるべき改正のポイントは、「1 機器廃棄の際の取組」でしょう。
 本法の対象機器となるフロン類が充填されている業務用エアコンや冷凍冷蔵ショーケースなどを利用する事業者はけた違いに多くいるため、「1」の規制強化が適用される事業者も自ずと多いからです。

「1」では、まず、都道府県の指導監督の実効性向上を掲げ、対象機器のユーザーに対してフロン回収義務違反への直接罰を導入するとしています。

 具体的には、対象製品の廃棄等を行おうとするユーザーは、原則として、第一種フロン類充塡回収業者に対し、そのフロン類を引き渡すことを義務づけ、これに違反した場合、50万円以下の罰則に処するという罰則を設けました。

 次に、廃棄物・リサイクル業者等へのフロン回収済み証明の交付を義務付けています。廃棄機器を引き取る者が機器の回収作業が実施されたかを確認するため、ユーザーから機器を引き取る者に対して回収作業実施済みの証明書が届く仕組みを整備するものです(機器を引き取る者に回収作業を依頼する場合を除く)。

 このように、対象機器を廃棄しようとする場合、従来よりも規制が強化されることになるので十分な注意が必要となるのです。

 さらに、前述の報告書には、次のような記述も見られます。

「ユーザーが廃棄した機器の有無を、都道府県による事後の立入検査でも把握可能とするため、現行法に基づき使用中の機器について作成・保管することとされている点検記録簿について、機器廃棄の情報を付記した上で、機器廃棄後も一定期間保管することとする必要がある。」

 現在の本法では、点検記録簿の保管期限については、機器の廃棄までとされています。これを、「機器廃棄後も一定期間保管」することを義務付けようとしているのです。

 2015年に施行された本法について、順守に向けた社内システムを整備しきれずに、いまだに法に逸脱する事業者が散見されます。点検記録簿についても、適切に保管していない事業者が少なくありません。
 改正法の成立・施行までにどのように制度設計が行われるかについても注視し、着実に順守していくことが求められています。

(2019年4月)

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