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プラスチック資源循環戦略を策定!~企業のプラスチック対策はどうなる?

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 連日のように「プラスチック」が重大な環境問題であるとして、様々なニュースで取り上げられています。企業の環境担当者もこの問題に高い関心を抱いています。

 周知のように、中国などアジア各国が環境問題を理由に廃プラスチックの輸入禁止に踏み切っています。国内には、廃プラスチックがだぶついています。
 そうした中で、2018年6月のG7(先進7カ国)サミットにおいて、政府は、海洋のプラスチック削減目標を示した「海洋プラスチック憲章」の署名を見送り、国際社会で大きな批判を受けました。国内でも、一気にプラスチック問題が注目を集めるようになったのです。

 確かに、プラスチック問題は、もはや避けては通れないものです。日本は、ワンウェイの容器包装廃棄量が一人当たりで世界第2位。また、世界全体で見れば、年間数百万トンを超える廃プラスチックが海洋に流出し、2050 年までに魚の重量を上回るプラスチックが海洋環境に流出することが予測されているのです。

 2019年5月31日、政府からプラスチックに関する2つの戦略・プランが公表され、大きな話題を呼んでいます。これらは、実質的には、日本が議長国を務める6月開催のG20大阪サミットにおいて主導権を確保することが狙いでしょうが、企業の今後のプラスチック対策を考える上で見逃せない事項もいくつが盛り込まれていますので、そのポイントを確認していきましょう。

 公表文書の1つは、「プラスチック資源循環戦略」です。
 「3R」(リデュース・リユース・リサイクル)とともに「Renewable」(再生可能資源への代替)を基本原則に据え、プラスチックの資源循環を総合的に推進するための戦略がまとめられています。

 戦略の項目として、リデュース、リサイクル、再生材バイオプラ、海洋プラスチック対策などが掲げられ、その中には、ワンウェイプラスチックの使用削減を図るために、次のような記述も見られます。

 「レジ袋の有料化義務化(無料配布禁止等)をはじめ、無償頒布を止め「価値づけ」をすること等を通じて、消費者のライフスタイル変革を促します。」

 この点については、6月3日の環境大臣の記者会見で、レジ袋無償配布禁止を法令で義務化することが示されています。今後、法制化に向けて本格的に動き出すことでしょう。

 また、同戦略では、目指すべき方向性として、次のようなマイルストーンが提示されています。すでにいくつもの企業において、これらマイルストーンのうち、自社が関連しうる項目を抽出し、自社が取り組むべき活動テーマを検討しています。

図表:プラスチック資源循環戦略が示した方向性(マイルストーン)

1 リデュース 〇消費者はじめ国民各界各層の理解と連携協働の促進により、代替品が環境に与える影響を考慮し、2030年までに、ワンウェイのプラスチック(容器包装等)を累積25%排出抑制
2 リユース・リサイクル 〇2025年までに、プラスチック製容器包装・製品のデザインを、技術的に分別容易かつリユース可能又はリサイクル可能なものへ(難しい場合にも、熱回収可能性を確実に担保)
〇2030年までに、プラスチック製容器包装の6割をリユース又はリサイクル
〇2035年までに、すべての使用済プラスチックをリユース又はリサイクル、それが技術的経済的な観点等から難しい場合には熱回収も含め100%有効利用
3 (再生利用・バイオマスプラスチック) 〇2030年までに、プラスチックの再生利用(再生素材の利用)を倍増
〇2030年までに、バイオマスプラスチックを最大限(約200万トン)導入

 プラスチック資源循環戦略と同日に発表されたもう1つの文書は、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」です。

 ここでは、①プラスチックごみの回収・適正処理の徹底、②環境中に排出されたごみの回収、③海洋流出しても影響の少ない素材(海洋生分解性プラスチック、紙等)の開発・素材転換、④途上国等における海洋プラスチックごみの効果的な流出防止に貢献、⑤海洋プラスチックごみの実態把握や科学的知見の充実などが提示されています。

 アクションプランでは新規の施策は打ち出されていないようです。しかし、これを踏まえてG20大阪サミットで海洋プラスチック問題が再び大きな議題として取り上げられるので、引き続き注目すべきでしょう。

 ちなみに、海洋プラスチック問題への企業の取り組みを考えるにあたって、2018年6月に制定された「改正海ごみ法」も参考なるでしょう。
 この法律は「海岸漂着物処理推進法」とも呼ばれ、正式名称は「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」です。

 改正海ごみ法では、事業者の責務として、次の条文が追加されました(11条の2)。

「事業者は、マイクロプラスチックの海域への流出が抑制されるよう、通常の用法に従った使用の後に河川その他の公共の水域又は海域に排出される製品へのマイクロプラスチックの使用の抑制に努めるとともに、廃プラスチック類の排出が抑制されるよう努めなければならない。」

 「通常の用法に従った使用の後に河川その他の公共の水域又は海域に排出される製品」とは、例えば、マイクロプラスチックを意図して組み込んだ歯磨き粉や化粧品などの製品を指します。責務規定とはいえ、こうした製品にマイクロプラスチックを含める製造方法には、今後ますます厳しい目が注がれることなるでしょう。

 さらに、海洋へのマイクロプラスチック対策として、廃プラスチックそのものの排出抑制が法律の条文に明記されていることも無視できません。

 プラスチックは、生活や事業活動に便利な素材であり、一気に社会に普及しました。そのプラスの側面をやみくもに否定するのもどうかとは思いますが、一方で、そのマイナスの側面にこれだけの指摘が出てきているのも事実です。
 取り巻く状況を改めて冷静に認識し、何らかの対策を検討・実施する段階に来ていると言えます。

◎「プラスチック資源循環戦略」の策定について」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/106866.html

◎「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」の策定について」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/106865.html

◎「海岸漂着物処理推進法」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/water/marine_litter/law.html

(2019年6月)

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