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改正フロン排出抑制法が2020年4月施行!~対象機器の管理者は何を準備する?

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 2019年6月、フロン排出抑制法の改正法が成立しました。
 その施行は2020年4月1日となりますが、その対応準備をしていますか?

 本法は、業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器を管理する事業者も規制対象にしています。工場や大きなオフィスだけでなく、小さな事務所や倉庫などでも、これら機器を使用しているでしょうから、対象事業者の数が抜きんでて多いのが本法の特徴です。

 これら対象機器のユーザーは、すべての対象機器について3か月に1回以上の簡易点検をしなければなりません。また、7.5kW以上の対象機器については1年または3年に1回以上の専門家による定期点検をしなければなりません。これら点検記録には保存義務もあります。

 また、事業者単位で年間1000CO2-トン以上のフロン類を漏洩した場合は国への報告義務もあります。そのためには、漏洩量を社内で算定する必要もあります。

 さらに、整備時におけるフロン類の充填・回収について第一種フロン類充填回収業者に委託しなければなりません。
 対象機器の廃棄時には、第一種フロン類充填回収業者にフロン類を引き渡し、許可を持つ破壊業者等による破壊等を行うために、回収依頼書や委託確認書の交付・保存や、引取証明書の保存などの義務があり、こうした行程管理制度によりフロン類を放出させないようにしています。

 2020年4月施行の改正フロン排出抑制法の目的は、対象機器の廃棄時におけるフロン類の回収率を向上させることです。
 そのために、ユーザーに対しても、廃棄時における規制強化を行うことになりました。その概要は、次の図表のとおりです。

図表:2020年4月からのユーザー義務の主な変更点

項目 〜2020年3月 2020年4月〜
1 罰則強化 フロン回収をせずに廃棄した場合、指導・勧告・命令を経て、罰則が適用 フロン回収をせずに廃棄した場合、直ちに罰則(50万円以下の罰金)が適用
2 点検記録の保存期間 点検の記録は、機器の廃棄時まで保存 点検の記録は、機器を廃棄した後も3年間保存
3 廃棄物・リサイクル業者へ引き渡す場合 第一種フロン類充填回収業者からの引取証明書のコピーを渡す(フロン回収の証明)
4 解体工事を依頼する場合 元請業者から事前説明された書面を3年間保存

 従来から、フロン類を回収せずに機器を廃棄することは認められていませんでしたが、今回の法改正により罰則が強化されることになります。

 具体的には、従来の規制では、フロン類を回収せずに廃棄した場合、行政の指導や勧告、命令を経て、それでも従わない場合に罰則が適用されるというものでした。これは、一般には「間接罰」と呼ばれるものです。
 これに対して、改正後は、フロン類を回収せずに廃棄した場合、直ちに罰則が適用されることになります。「直接罰」または「直罰」と呼ばれる手法が採用されたのです。フロン類を未回収のまま対象機器を廃棄することに対して、自治体や警察の対応が格段に厳しくなることになります。

 次に、改正法は、ユーザーに対して従来とは異なる対応手順を求めていることにも注意が必要です。

 1つ目は、簡易点検や定期点検の記録の保存期間が延長されます。
 従来は、機器の廃棄時まで点検記録を保存することになっていましたが、これが機器を廃棄した後も3年間保存することが義務付けられるようになります。

 具体的には、「第一種特定製品の管理者の判断の基準となるべき事項」(平成26年経済産業省、環境省告示第13号)の改正告示に基づき、「第一種特定製品の管理者は、管理第一種特定製品ごとに、点検及び整備に係る…記録簿…を備え、当該管理第一種特定製品の廃棄等を行い、当該管理第一種特定製品に冷媒として充填されているフロン類の第一種フロン類充填回収業者への引渡しを完了した日から3年を経過するまで、保存すること」になっています。

 また、この記録簿には、充填されているフロン類の種類や量、点検の実施年月日などを記載しなければなりません。
 今回の改正では、それらに加えて、「管理第一種特定製品の廃棄等が行われる場合において、フロン類の引取り又はフロン類が充填されていないことの確認を行った年月日及び当該フロン類の引取り又はフロン類が充填されていないことの確認を行った第一種フロン類充填回収業者の氏名(法人にあっては、その名称及び当該引取り又は確認を行った者の氏名を含む。)」の記載もしなければなりません。

 2つ目は、廃棄物・リサイクル業者へ対象機器を引き渡す場合、第一種フロン類充填回収業者からの引取証明書のコピーを渡すことが義務付けられます(本法45条の2第1項)。

 3つ目は、解体工事を依頼する場合、元請業者から事前説明された書面を3年間保存することが義務付けられます(本法42条3項)。

 本法は、従来から管理者に簡易点検やその記録保存など詳細な義務を課しているため、多くの企業では、その管理手順書をまとめていたり、法規制の一覧表に実施事項をまとめていたりしています。

 2020年4月からは、上記のような新規制がスタートするので、それまでの間にそれら管理手順書などを適切に改訂し、対応ルールを整備することが求められます。

◎「機器管理者の皆様へ(業務用のエアコン・冷凍冷蔵機器を廃棄する際の規制が強化されます)」(環境省)
⇒ http://www.env.go.jp/earth/furon/files/kikikanrileaflet.pdf

◎「フロン排出抑制法の概要」(環境省) ※上記を含む各種パンフレットがあります。
⇒ http://www.env.go.jp/earth/furon/gaiyo/sanko.html

(2020年1月)

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