2015年7月頃にISO14001が大きく変わる予定です。改正案は、現在「国際規格原案(DIS)」という段階のものであり、来年の4月頃までに「最終国際規格原案(FDIS)」が出されることになり、今後も改正内容が変更される可能性はあります。ただし、その全体像やポイントは大きくは変わらないだろうと言われています。
ISO14001認証の取得企業は、今回の改正によって自社のEMSに何らかの変更を求められてきます。効率的で効果的なEMSの変更に取り組むために、規格改正のポイントをしっかりと見極めることが大切です。
そこで、本連載では数回にわたって規格改正のポイントについて解説していきます。すでに専門家による規格改正の解説がいくつか行われていますので、ここでは、規格用語をできるかぎり避けて、一般の方にもわかりやすい解説を試みてみます。
ISO14001は、1996年に発行後、2004年に改正が行われており、今回の改正は2回目の改正となります。ただし、2004年の改正は取り組むべき事項を増やさないという約束の下に行われたものであり、マイナーチェンジにすぎないものでした。これに対して今回の改正は、全体構成が変わるとともに、新たな要求事項がいくつも増えた、いわばフルモデルチェンジと言っていい大きな改正です。
今回の改正により、規格の全体構成が大きく変わります。現在、多くの企業では、マニュアルを作成してEMSを運用しています。そのマニュアルは、規格の項番に合わせて、「4.1一般要求事項→4.2環境方針→4.3.1環境側面→4.3.2法的及びその他の要求事項→4.3.3目的、目標及び実施計画……」などという順番で記述されていることでしょう。
今回の改正では、規格の全体構成が次のように変わろうとしています。
改正案(2015年版の国際規格原案) | 注目 | 現状(ISO14001:2004年版) |
---|---|---|
1 適用範囲 | ||
2 引用規格 | ||
3 用語及び定義 | ||
4 組織の状況 | ||
4.1 組織及びその状況の理解 | ★ | |
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | ★ | |
4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定 | 4.1 一般要求事項 | |
4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定 | 4.1 一般要求事項 | |
4.4 環境マネジメントシステム | ||
5 リーダーシップ | ||
5.1 リーダーシップ及びコミットメント | ★ | |
5.2 環境方針 | 4.2 環境方針 | |
5.3 組織の役割、責任及び権限 | 4.4.1 資源、役割、責任及び権限 | |
6 計画 | 4.3 計画 | |
6.1 脅威及び機会に関連するリスクへの取組み | ||
6.1.1 一般 | ||
6.1.2 著しい環境側面 | 4.3.1 環境側面 | |
6.1.3 順守義務 | ★ | 4.3.2 法的及びその他の要求事項 |
6.1.4 脅威及び機会に関連するリスク | ★ | |
6.1.5 取組みのための計画策定 | ||
6.2 環境目的及びこれを達成するための計画策定 | 4.3.3 目的、目標及び実施計画4.3.3 | |
6.2.1 環境目的 | ||
6.2.2 環境目的を達成するための取組みの計画策定定 | ||
7 支援 | 4.4 実施及び運用 | |
7.1 資源 | ||
7.2力量 | 4.4.2 力量、教育訓練及び自覚 | |
7.3 認識 | ||
7.4 コミュニケーション | 4.4.3 コミュニケーション4.4.3 | |
7.4.1 一般 | ||
7.4.2 内部コミュニケーション | ||
7.4.3 外部コミュニケーション | ||
7.5 文書化された情報 | 4.4.4 文書類 | |
7.5.1 一般 | ||
7.5.2 作成及び更新 | 4.4.5 文書管理4.4.5 文書管理 | |
7.5.3 文書化した情報の管理 | ||
4.5.4 記録の管理 | ||
8 運用 | 4.4 実施及び運用 | |
8.1 運用の計画及び管理 | 4.4.6 運用管理 | |
8.2 緊急事態への準備及び対応 | 4.4.7 緊急事態への準備及び対応 | |
8 運用 | 4.4 実施及び運用 | |
9 パフォーマンス評価 | ★ | 4.5 点検 |
9.1 監視、測定、分析及び評価 | 4.5.1 監視及び測定 | |
9.1.1 一般 | ||
9.1.2 順守評価 | ★ | 4.5.2 順守評価 |
9.2 内部監査 | 4.5.5 内部監査 | |
9.3 マネジメントレビュー | 4.6 マネジメントレビュー | |
10 改善 | ||
10.1 不適合及び是正処置 | 4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置 | |
10.2 継続的改善 |
一見してこれまでの構成と大きく異なっていることがわかるかと思います。マニュアルを規格の項番に合わせるのであれば、大きな改訂が必要になってきます。 もちろんマニュアルを規格の項番に合わせてまとめることは要求されていません。ただし、その場合であっても、マニュアル等のどの箇所が改正規格の要求事項を満たしているのかを審査を受ける側は理解しておかなければなりません。 また、改正案のうち、特に注目すべき項目について★印を付けてみました。構成が変わっただけでなく、内容も少なからず変わったことがわかるのではないでしょうか。
内容上の改正のポイントは、大きく言って次の4点となります。
(1)仕組みだけでなく結果も重視する(環境パフォーマンス)
(2)自社が抱える課題を踏まえた取り組みを行う(外部課題・内部課題)
(3)経営者の関与を強化する(リーダーシップ)
(4)法令順守を強化する(順守義務)
次回以降、これら改正のポイントについて解説していきます。
(2014年11月)
[注]
・正確な改正規格の内容を把握されたい方は、日本規格協会から2015年版の国際規格原案の邦訳版が販売されているのでそちらをご参照ください。
・改正規格の内容はまだ確定していません。本連載は2014年11月時点の内容です。