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ISO14001:2015年版への移行作業、3つのコツ~環境マニュアル等の見直しをどう進めるか

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

前号では、ISO14001:2015年版への移行作業の全体スケジュールについての考え方をご紹介しましたが、今号では、それを踏まえて、具体的な移行作業を行うに当たって企業が特に押さえておきたい“3つのコツ”をご紹介しましょう。

◆コツ1 文書見直し方向性を固める
まず、自社の環境マネジメントシステム(EMS)で使用している文書全体の見直しをどのように行うかという方向性を固めます。

その検討点の一つは、マニュアルをどうするかということです。
2015年版では、「マニュアル」という言葉は消えましたので、各企業が環境マニュアルのようなEMSの基本的な文書を作ることは要求事項ではなくなりました。 自社で使用している他の文書で規格の要求事項に対応できていればマニュアルは不要となり、本業に即したEMSの推進にプラスになる可能性があります。

一方、マニュアルを無くすことで、規格の要求事項が自社のEMSにどのように反映されているか見えづらくなり、活動に支障が出る弊害もありえます。
そのことも考慮しているのでしょう。多くの企業では、現在のマニュアルについて2015年版に対応するよう見直したうえで基本文書として残す方向で検討しているようです。

また、久しぶりの文書大幅見直しの機会となるので、これを活用して、大幅な電子化を推進するなど業務効率化に向けたチャンスとして考えることも大切でしょう。

この際、2015年版がリーダーシップ強化を掲げていることも考慮し、基本的な方向性についてトップの関与を確保すると、その後の作業がスムーズに進みます。

◆コツ2 マニュアル等の構成案を固める
2004年版の項番が、2015年版では大きく変わります。例えば、「4.3.1環境側面」は「6.1.2環境側面」になります。

多くの企業の環境マニュアル等は、便宜的に規格の項番に合わせた構成となっているので、マニュアル等の見直しの際に、2015年版に沿って新たな項番を振り、構成を大きく変えるかどうかという判断が迫られます。

当然のことですが、規格の要求項としては、ISOの構成・項番通りにマニュアル等をまとめることを求めていないので、無理に変更する必要はありません。

ただし、数年後、新たな担当者がマニュアル等を見たときに、2015年版の規格を容易に参照できるような工夫をどう施すかという視点は持っておきたいものです。
多くの企業では、2015年版の項番に合わせて、マニュアルを見直す模様であるのも、その点を意識してのことでしょう。 いずれにしても、これらの考え方をまとめておくことです。

◆コツ3 トップの指示からEMSを2015年版へ切り替える
以上の作業を経て、環境管理責任者やISO事務局において、ある程度、マニュアル等の見直しを終えた後は、いよいよ自社のEMSを2015年版に切り替えます。 切り替えるに当たっては、マニュアル等を見直すだけでは十分ではありません。

2015年版では、要求事項として、自社を取り巻く「外部及び内部の課題」(箇条4.1)や「利害関係者のニーズ及び期待」(4.2)を決定し、それなどに関連する「リスク及び機会」(6.1.1)も決定することを求めています。
特に4.1と4.2の内容は経営に関わる内容なので、各部門で決定するというよりも、経営トップの考え方や経営計画などの中から導きだされるものです。

すなわち、(マニュアル等を見直した上で)社内において2015年版の運用に切替えるスタート地点は、経営トップからこれらの考え方を引き出すことにあります。 経営会議の一部として臨時のマネジメントレビューを設けるのもいいでしょうし、環境管理責任者等で固めた案をトップに承認してもらうのもいいでしょう。方法は様々ですが、「トップ指示をスタートにする」ことがコツとなります。

(2015年10月)

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