大栄環境グループ

JP / EN

EMSは周囲の期待に応えているか? ~ISO14001:2015年版「4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解」を読む

BUN先生アイコン画像

環境コンサルタント
安達宏之 氏

ISO14001:2015年版の箇条4.2は、「利害関係者のニーズ及び期待の理解」を定めています。

組織に対して、環境マネジメントシステム(EMS)に関連する利害関係者が誰なのかを決定することを求めています。その上で利害関係者がどのような「ニーズ及び期待」を求め、さらにそのうち組織の順守義務がどれに当たるのかを決定することも求めています。

各企業で行うべき作業としては、まず利害関係者を特定することです。“EMSに関連した利害関係者”というように規格に書かれているからと言って、利害関係者を限定すべきではありません。

2015年版は本業とEMSを統合することを求めており、かつ、この箇条は、前回解説した「4.1 組織及びその状況の理解」と同じカテゴリーの要求事項だからです。本業に関わる利害関係者と考えるとよいでしょう。

また、利害関係者をあまり細分化して特定していく必要もありません。
附属書AのA.4.2では、組織は、関連すると決定した内部及び外部の利害関係者から表明されたニーズ及び期待についての「一般的な(すなわち、詳細ではなく、高いレベルで)理解を得ることが期待されている」と述べています。

このように、利害関係者がどのようなことを組織に期待しているのかを経営的なレベルで理解してEMSを運用することを求めているのです。

各社のCSRレポートには、利害関係者(ステークホルダーなどと記載されている例が多い)が誰であり、どのようなことをその企業に期待しているかをまとめてあるページがあります。4.2で求めていることは、このような作業を行っていくことなのです。

利害関係者を例示すると、顧客はもちろん、地域の住民の方々、株主、従業員、行政、サプライヤーなどが挙げられるでしょう。NGOやNPOも挙げることができるでしょう。利害関係者のニーズや期待としては、例えば顧客であれば、「価格の安い環境配慮型製品の開発・販売」などがあるかもしれません。
CSRレポートなどを発行していない企業で検討する際は、いくつかの企業のCSRレポートを確認することをお勧めします。

この箇条4.2で決定したことについて、規格は文書化を要求していませんが、4.1と同様に、組織の決定を求めているので文書化することが自然です。CSRレポートでの関連箇所の明示や、マネジメントレビューの記録による文書化など、効率的な方法を考えるとよいでしょう。

さらに規格では、利害関係者のニーズのうち、順守義務となるものを決定することも要求しています。その方法としては、上記の文書に明示する方法があります。
あるいは、ここでの決定事項は箇条6.1.1において、それに関連した「リスク及び機会」を決定し、EMS活動として展開されていくことになるので、例えば、目標の一覧中に4.2に関連した順守義務を掲げることをもって、それを担保するという方法もあるでしょう。

いずれにしても、利害関係者の求めていることをEMS活動に確実に反映させることがポイントとなります。

(2016年02月)

PAGE TOP