大栄環境グループ

JP / EN

「リーダーシップ」をEMSにどう反映させるか?~ISO14001:2015年版「5.1リーダーシップ」を読む

BUN先生アイコン画像

環境コンサルタント
安達宏之 氏

ISO14001:2015年版の箇条5.1「リーダーシップ」に関する基本的な捉え方については、本連載の第4回目の記事で解説しました。
今回は、このリーダーシップを、自社のEMSに具体的にどのように反映させるべきかについて述べてみましょう。

箇条5.1は、冒頭で、「トップマネジメントは、次に示す事項によって、環境マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。」という一文を掲げています。

「トップマネジメントは……を実証しなければならない。」という表現は、 “わかりづらく、いかにもISOっぽい文章”という企業のISO担当者のため息が聞こえてきそうです。

しかし、全体を通して読めば、この箇条は、トップマネジメント(最高経営層。社長など)に対して、本業と組み合わさった効果的なEMS活動を推進していくために、いくつかの実施すべき事項を掲げながら、リーダーシップをきちんと発揮することを求めているものにすぎません。

では、こうした“シンプルな要求事項”をどのようにEMS活動で展開していけばいいのでしょうか。

自社のEMSをISO14001:2015年版に移行させようとしている実例を見ていると、そのやり方は様々です。
おそらく最も多いタイプは、この箇条5.1を新マニュアルにそのまま記載するものです。外部審査対策としてやりやすいのかもしれません。

ただし、これではEMSの形骸化に拍車がかかるおそれが大きいと思われます。箇条5.1の要求事項は、ここで示されている文言の文書化を直接求めているわけでもありません。

効果的なEMSを求めるのであれば、自社の経営の仕組みを頭に描きながら、社長がEMSにリーダーシップを発揮できる具体的な仕組みをどのように整備するかを意識して2015年版への対応を図るといいでしょう。

ある企業では、環境マニュアルに箇条5.1に関する最低限の記載をした上で、EMSの会合において、箇条5.1の実施事項を一つひとつ取り上げながら、EMS活動のどの場面で具体的に実施されるべきものかを確認する作業を行いました。

例えば、箇条5.1の「a)環境マネジメントシステムの有効性に説明責任を負う。」という点について、従来は、環境管理責任者(総務部長)がEMSについて社員へ訓示する程度でした。
議論の結果、この企業では対応を改めました。年に1回は社長が直接社員へ語りかける場を設けることや、ホームページ上に環境への取組みについて社長の言葉を載せることが決められたのです。
社長にEMSへの最終的な責任があることを改めて内外に示すことになったのです。

また、「c)組織の事業プロセスへの環境マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする。」という点について、マネジメントレビューの中で、「本業にEMS活動が適切に落とし込まれているかどうか(無駄な活動がないかどうか)」を確認する機会を設けることが決められました。

箇条5.1への具体的な対応方法は、他にもいろいろと考えられるでしょう。
ポイントは、規格の難解な言葉を自分たちなりに“翻訳”して、具体的な活動に落とし込んでいくことです。

(2016年04月)

PAGE TOP