大栄環境グループ

JP / EN

自社の課題に向き合ったEMSを~外部・内部課題、利害関係者のニーズ・期待とは?

BUN先生アイコン画像

環境コンサルタント
安達宏之 氏

改正ISO14001の国際規格原案(DIS)では、これまでには無かった「4.1組織及びその状況の理解」と「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」という箇条があります。

4.1では、組織に対して、外部と内部それぞれの課題を決定することを求めています。
これら課題には、(1)組織に影響を与え得る環境状況、(2)組織の影響を受け得る環境状況が含まれるということです。

外部の課題の例を挙げれば、地球温暖化が考えられるでしょう。例えば、食品産業であれば、地球温暖化によって生産地や品種、需要等に大きな変化が出る可能性があり、現にそれらの検討をしている企業も少なくありません。

内部の課題の例としては、人材不足が挙げられる場合もあるでしょう。例えば、豊富な経験を有していた団塊世代の大量退職によって、事業所の管理体制が弱体化しているという声をよく聞きますが、これは環境マネジメントシステム(EMS)にも大きな影響を与えるものです。

4.2では、組織に対して、利害関係者のニーズや期待が何かを決定することを求めています。利害関係者とは、顧客や地域住民、サプライヤー、行政、投資家、社員などを指します。
例えば、顧客から自社の製品に対してさらなる環境配慮が求められているかもしれません。こうしたニーズや期待を決定することになります。

このように、4.1や4.2では、EMSを運用する際に組織を取り巻く全体状況をよく見据えて行うことを求めていると言えるでしょう。
4.1や4.2で決定されたことは、EMSの適用範囲(4.3)を決定する際の考慮事項となるとともに、6.1(脅威及び機会に関連するリスクへの取組み)などを通してEMS活動全体に影響を与えるものとなります。

また、4.1や4.2で掲げられていることは、経営課題と言えるものであり、必然的に経営層の何らかの関与が必要となってきます。
こうした性格を持つこれら要求事項について、おそらく、どのように既存のEMSの仕組みを改めて担保するかを悩むEMS担当者がいることでしょう。

ここで気をつけておきたい点としては、通常、経営層であれば、自社を取り巻く状況を検討し、それを踏まえて経営を行っているということです。それがCSRレポート等により公表されている場合もあれば、公表もされず、文書化もされていない場合もあるでしょうが、経営層が何もこれらを考えていないことや、社員に何も伝えていないということは、一般に考えづらいと私は思います。

そうであれば、EMS担当者に求められることは、経営層が決定した外部・内部課題や利害関係者のニーズ・期待が自社のどこにあるのかを探り当てて、それをEMSに落とし込んでいくことだと思います。経営層により深くEMSにコミットしてもらうことも重要です。少なくても、EMS担当者が経営層の意向を確認することなく作り上げるようなものではないのです。
なお、4.1も4.2も、文書化そのものは要求事項となっていませんので、無理をして文書化する必要はありません。

(2015年02月)

PAGE TOP