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「変更」「委託」「ライフサイクル」に注意~ISO14001:2015年版「8.1運用の計画及び管理」を読む

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

ISO14001:2015年版の細分箇条8.1では、環境マネジメントシステム(EMS)の運用管理について規定しています。

まず、EMSの要求事項を満たし、細分箇条6.1や6.2で特定した取組みを実施するために必要なプロセスを管理等することを求めています。
「6.1や6.2で特定した取組み」とは、①リスク及び機会、②著しい環境側面、③順守義務、④環境目標などがあります。この8.1では、これらに関連するプロセスの管理を求めているわけです。

ISO14001:2004年版では、著しい環境側面に関する運用管理のみを求めていたので(4.4.6)、その範囲はかなり広がったと言えるでしょう。

8.1ではさらに、プロセスに関する運用基準を設定するとともに、その運用基準に従ってプロセスの管理を実施することを求めています。
また、これらの文書化について、「プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつために必要な程度」で、それを求めています。

一見したところ、要求事項が大幅に増えたようにも見えますが、確立したプロセスについて、運用基準が無いことや運用基準に従わない管理は、一般に考えづらいことです。
「プロセス」という言葉がわかりづらければ「仕事」という言葉に置き換えて考えてみてください。定められた仕事に一定のルールが無いことやルールに従わない仕事の進め方は考えづらいでしょう。

しかも、規格は上記の通り、これらの文書化についても、組織が「必要な程度」と判断したもののみを求めているので、本細分箇条は、組織にかなりの裁量を与えています。
自分たちなりに、上記の要求事項を満たしているかを確認し、足りないと判断した事項のみ活動に追加していけばよいでしょう。

以上を前提に、8.1では、さらに次の3つのことを求めています。

1つ目は、計画した「変更」を管理し、意図しない「変更」によって生じた結果をレビューし、必要に応じて、有害な影響を緩和する処置をとることです。
これは、規格の附属書AのA.1で記載している「変更のマネジメント」を求めているものです。

私自身、マネジメントシステムがうまく機能しない企業に出くわすことがあります。その原因を探っていくと、事業活動や企業を取り巻く法規制などの「変化」を見過ごし、未対応のままEMSを運用していることに行き着くことがあります。 規格では、プロセスの様々な「変更」についてもしっかりマネジメントすることを求めたわけです。

2つ目は、外部委託したプロセスが管理されている又は影響を及ぼされていることを確実にすることです。 また、管理又影響の方式・程度はEMSの中で定めることを求めています。

昨今の事業活動では外部委託は当たり前の行為となっていますが、これもしっかりマネジメントしなさいということです。管理の方式・程度は、組織の自由裁量となりますが、少なくてもどのように定めているのかを説明することができなくてはなりません。

3つ目は、ライフサイクルの視点に従って、次の4点を行うことを求めています。
必要に応じて、ライフサイクルの各段階を考慮して、製品・サービスの設計・開発プロセスで環境上の要求事項を確実に反映させる
必要に応じて、製品・サービスの調達に関する環境上の要求事項を決定する
請負者を含む外部提供者に、関連する環境上の要求事項を伝達する
製品・サービスの輸送・配送、使用、使用後の処理及び最終処分に伴う潜在的な著しい環境影響に関する情報を提供する必要性について考慮する

以上の3点について、いずれも全く対応していない企業は無いかと思います。

しかし、対応が不十分な企業は少なくありません。これらへ前向きに取り組むことによって、自社のシステム改善に役立てるとよいでしょう。

(2017年05月)

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