ISO14001:2015年版の細分箇条9.1.2は「順守評価」です。
環境法などの順守義務を満たしていることを評価するために「必要なプロセス」を確立し、行うことを求めています。
また、次の3つを行うことも求めています。
①順守を評価する頻度を決定すること
③順守状況に関する知識及び理解を維持すること
さらに、順守評価の結果の証拠を記録しなければなりません。
上記のうち、③を除けば、旧規格の要求と大きく異なるところは実質的に無いと思います。
多くの企業では、年に1回か2回程度、順守評価の手順を定め、順守義務が満たされているかどうかをチェックし、その記録を行っていることでしょう。
それは、これからも継続していくべきです。
ただし、そうしたプロセスが形骸化していないかどうか、今回の規格改正を機に、改めて検証すべきだと思います。
訪問先の企業において、順守評価結果の記録を見ると、すべての項目に「〇」が付いているにもかかわらず、なぜ「〇」にしたのかを質問しても、明確な回答が得られないことが少なくありません。
しかし、一般論として言っても、物事を「評価」するということは、ある種の基準があるから評価できるわけです。あるいは、根拠が明確ではない評価は、「評価」とは言えないでしょう。
そうした「順守評価」が多いのが、現在の順守評価の実情なのではないかと感じています。
では、どうすれば、こうした形骸化した順守評価を改善できるのか。
対策はいくつも考えられます。
例えば、多くの企業では、日ごろから法順守に取り組む者が、同時に順守評価を行うケースが見られますが、自ら実施していることについて「〇」「×」を付すというのを改めることが挙げられます。
内部監査と順守評価を合体させて、社内の第三者が効率的にチェックする仕組みを構築している企業もあります。
さらに、この対策のためにも、私は上記③に注目すべきだと思っています。
③は、順守義務に関する旧規格の要求事項には無かった、追加された要求事項です。
順守義務への対応としては、特に詰めて検討しておくべき箇所となります。
順守評価が形骸化している原因を分析すると、順守評価者の環境法に対する力量が決定的に不足していることに行き着くことが多くあります。
その方の勉強不足を問題だと言っているわけではありません。
担当者が力量を確保するための仕組みがないことを問題だと言いたいのです。
力量を確保するための仕組みには様々なものがあるでしょう。
社内の教育研修のプログラムにしっかりと環境法教育を組み込むことは必要です。
筆者自身も関わっている「環境法令検定」を関係者に受けさせることで、力量の客観性を保とうとする企業も出てきています。
なお、③については、順守評価を行う者に対して力量を確保することを求めているわけですが、一方で、規格の附属書A.7.2では、「順守評価を実施する」という力量の他に、「環境影響又は順守義務を決定し、評価する」という力量も掲げています。
その意味では、順守に関する力量を、単に順守評価者のみに求めているわけではなく、より広く、環境法等の順守に関わる者たちに対する力量確保を求めていると言えます。
法順守の項目は、EMSの中でも特に形骸化が著しいと感じます。
それを防ぎ、環境法違反の経営リスクを減らすために、積極的に本細分箇条を活用すべきです。
(2017年08月)