大栄環境グループ

JP / EN

「なぜ?」を繰り返し、実効性のある是正処置を~ISO14001:2015年版「10.2 不適合及び是正処置」を読む

BUN先生アイコン画像

環境コンサルタント
安達宏之 氏

ISO14001:2015年版の細分箇条10.2では、「不適合及び是正処置」について定め、「不適合」が発生した場合の是正処置の方法などに関する要求事項が掲げられています。

「不適合」とは、規格は別の場で「要求事項を満たしていないこと」と定義づけた上で、注記の中で、「不適合は、この規格に規定する要求事項、及び組織が自ら定める追加的な環境マネジメ ントシステム要求事項に関連している」(3.4.3)と定めています。

つまり、規格要求事項を満たしていないことと、自ら順守すべき事項として定めた事項を満たしていないことが「不適合」となります。

時折、「環境目標の未達成」が不適合となっている企業があります。目標の中には「環境配慮商品の前年比10%アップ」など自らの努力だけでは達成しえないこともある目標を掲げている場合、「環境目標の未達成」が不適合となると、かなり負担の重い(対応しづらい)是正処置をせざるをえなくなります。

しかし、規格の要求事項の中に「環境目標を達成しなければならないこと」は含まれていません。この要求事項は、あくまでも企業自らで設定したものなのです。もしこうしたことまでも不適合とする実利が無いのであれば、変更または廃止することも一考でしょう。

変更の方法としては、「環境目標の未達成」を「環境目標が未達成であるにもかかわらず、何ら対応方法を検討していない」などとすることが考えられます。

さて、「不適合」が発生した場合、組織は、まず、不適合に対処し、必要な場合は修正するための処置などを行わなければなりません。
「修正するための処置」とは、例えば「油の流出」を不適合としている場合、応急処置として油の流出をまずは止めることが挙げられるでしょう。

さらに、その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするため、不適合の原因を明確にするなどした上で、その原因を除去するための処置をとらなければなりません。

前述の「油の流出」であれば、「なぜ油が流出してしまったのか」という原因を追い求めるのです。
例えば、その原因が貯蔵タンクの設置場所が流出しやすい箇所にあったことが判明したのであれば、その原因の除去、すなわち、流出しにくい箇所への設置場所の変更という対応が見えてきます。

全国に複数の事業所を持つある企業の内部監査結果を確認したところ、産業廃棄物のマニフェストの記載ミスがいくつかあり、「不適合」とされていました。
是正処置報告書によれば、その原因を「担当者の記入ミス」と片付け、是正処置は「ミス防止を指示」となっていました。

しかし、ミスの状況を確認してみると、どの事業所でも、担当者が変更していたにもかかわらず、マニフェストの記入・確認方法に関する引継ぎが十分行われていませんでした。
つまり、直接的な原因は「担当者の記入ミス」なのかもしれませんが、「なぜ(複数の)担当者が記入ミスを起こしたのか」と考えれば、「担当者変更時の引継ぎ不足(教育プログラムの抜け)」がその原因と言えるでしょう。

そうなると、再発を防止するための是正処置は明確になってきます。教育プログラムの中に引継ぎ者等へのマニフェスト教育を組み込み、実施することです。

これも、項目ごとに指示する必要はなく、これら要素を指示事項に含めることを求めています。

実際の不適合への対応を見ていると、こうした原因究明が甘く見えるケースが少なくありません。
しかし、これでは、再発防止にはつながりません。常に「なぜか?」を繰り返しながら、原因を深掘りする姿勢が重要です。

さらに規格では、とった是正処置の有効性をレビューするとともに、必要な場合には、環境マネジメントシステムの変更を行うことも求めています。
また、是正処置の結果などは文書化した情報として保持しなければなりません。

(2017年11月)

PAGE TOP