2015年7月、改正ISO14001の最終国際規格案(FDIS)が公表されました。
これまで示されていた国際規格原案(DIS)と比べてみると、改正への基本的な考え方はもちろん、主な要求事項について大きな変更はないと考えられます。
FDISの目次は次のとおりです。
4. 組織の状況 | 8. 運用 |
---|---|
4.1 組織及びその状況の理解 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定 4.4 環境マネジメントシステム |
8.1 運用の計画及び管理 8.2 緊急事態への準備及び対応 |
5. リーダーシップ | 9. パフォーマンス評価 |
5.1 リーダーシップ及びコミットメント 5.2 環境方針 5.3 組織の役割、責任及び権限 |
9.1 監視、測定、分析及び評価 9.1.1 一般 9.1.2 順守評価 9.2 内部監査 9.2.1 一般 9.2.2 内部監査プログラム 9.3 マネジメントレビュー |
6. 計画 | 10. 改善 |
6.1 リスク及び機会への取組み 6.1.1 一般 6.1.2 環境側面 6.1.3 順守義務 6.1.4 取組みの計画策定 6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定 6.2.1 環境目標 6.2.2 環境目標を達成するための取組みの計画策定 |
10.1 一般 10.2 不適合及び是正処置 10.3 継続的改善 |
7. 支援 | |
7.1 資源 7.2 力量 7.3 認識 7.4 コミュニケーション 7.4.1 一般 7.4.2 内部コミュニケーション 7.4.3 外部コミュニケーション 7.5 文書化した情報 7.5.1 一般 7.5.2 作成及び更新 7.5.3 文書化した情報の管理 |
DISとの最大の違いは、6.1の「リスク及び機会への取組み」でしょう。従来は、「脅威及び機会に関連するリスク」と表記されていましたが、これを改めたのです。
実は、「リスク及び機会への取組み」という用語は、今回の改正の下敷きとなっている「附属書SL」に出てくる用語です。
附属書SLは「共通テキスト」とも呼ばれ、ISO9001やISO14001などの規格ごとに従来、章の構成や用語などがバラバラであったことを改めて、統合したマネジメントシステムとして運用したい組織が複数の規格を利用しやすくするようにするために、共通部分の指針を示したものです。
ISO9001の改正では、従来から「リスク及び機会への取組み」という用語を使用していましたが、ISO14001のDISではこれを「脅威及び機会に関連するリスク」としていました。
今回、これを附属書SLの通り、元の用語に戻したわけです。他の規格と統合してISO14001を運用する組織にとってはわかりやすく、朗報となります。
「リスク及び機会」とは「潜在的で有害な影響(脅威)及び潜在的で有益な影響(機会)」と定義づけられています。
組織は、次に関連したリスク及び機会を決定し、その取組みのための計画を策定し、実施することが求められます。
(1)環境側面
(2)順守義務
(3)外部及び内部の課題
(4)利害関係者のニーズ及び期待
現在の見通しでは、このFDISへの投票が9月まで行われ、9月中旬にはISが発行され、さらに11月にはJISが発行されることになります。
自社のEMSをISO14001:2015年版に対応するよう、本格的に検討をスタートさせる企業も出てきました。いよいよ、2015年版への対応が現実味を帯びてきたと言えるでしょう。
(2015年07月)