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処理業

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BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

 「初めて廃棄物処理に関係する」という方々を対象に「そもそも、なんで、こんなルールになっている?」という視点で廃棄物処理を眺めてみるという、おおらかな感じでお付き合いいただきたいコラムです。
 1回目には「廃棄物処理の概要」、2回目は「処理業の許可」の話をさせていただきました。
 では、そもそも「処理業」ってなんでしょうか?
 まずは「業」から考えてみたいと思います。
 法律や行政の解説書を見ますと「業」とは、「不特定多数」、「反復継続」、「営利目的」、この3要素が揃ったときが「業」となる、というんですね。
 私が参考にしたのは「旅館業法」「興行場法」「公衆浴場法」の解説です。
 実は私が最初に担当したのは、旧厚生省の管轄であった、「旅館業法」「興行場法」「公衆浴場法」「理容師法」「美容師法」「クリーニング業法」の「営業六法」と称される業務でした。
 特に「旅館業(はたご)」「興行場(見世物)」「公衆浴場(風呂や)」は昔々からある商売ですから、歴史的な先人の経験もあり、面白い(ためになる)通知もあるんです。
 たとえば、大道芸はどこから興行場法の許可が必要になるか?と言った。これなどは、廃棄物処理法の14条(産業廃棄物処理業許可)と15条(処理施設設置許可)の概念、線引きにもとても参考になる考え方などが示されています。
 まぁ、その辺の話は追々と。

処理業1 処理業2

 で、この営業六法の疑義応答に「業」の考え方が示されていて、それが「不特定多数」、「反復継続」、「営利目的」、の3要素。
 たしかに、「人を宿泊させる」と言う行為について考えてみると、「困っている人を一晩だけタダで泊めてやった。」この行為が「旅館業法無許可」で有罪になるか?と言えば、100人中100人が、「それは許可なんか要らないでしょう」と判断すると思います。
 まさに、「困っていたその人物だけ」→「特定少数」。「一晩だけ」→「反復継続性無し」。「タダ」→「非営利」と3要素共に該当しない。
 しかし、これが徐々に慣例化してくる。「あの家は困っている人が居れば幾ばくかのお礼を包むだけで誰でも泊めてくれるそうだ。」さて、この状態になった時、あなたは「旅館業の許可」は必要だと思いますか?不要だと思いますか?なかなか、判断に困りますよね。「程度問題」なんじゃないかと。
 旅館業についても、時代と50共に様々な形態が出てきて判断に苦しんだようです。
 戦前までは原則通りの3要素を厳格にやっていたようですが、戦後間もなくして「共済組合の宿」というものが出てきた。この施設は「宿泊する人物」は、「その企業に所属している社員」に限定。経費は共済組合から出るので宿泊した人物その者からは徴収しない。施設としては「社員の福利厚生」を目的としているので「営利目的では無い」。
 「業の3要素」と照らし合わせると、「特定多数」、「反復継続」、「非営利」となり純粋に該当するのは「反復継続性」だけになる。
 そこで、昭和24年の通知で「業許可の対象となる業」を次のようにしたんです。
 「公衆衛生を目的とする法律においては、「業」とは、社会性をもって反復継続的に行われる行為」(趣旨)。
 この定義ですと、「料金」や「不特定」は必須要件ではなくなり「反復継続性」のみが「業」の要因となります。ただし、新たに「社会性をもって」という文言がありますから、たとえば「家族限定」や「隣近所のお付き合い程度」レベルは対象外となりますね。
 廃棄物処理法は昭和45年に成立していますが、当時の担当省庁は厚生省であり、当然、廃棄物処理法の前身である清掃法や汚物掃除法の所管も厚生省でした。
 そういったこともあり、廃棄物処理法のものの考え方、概念、理念は前述の「営業六法」の色合いも色濃くあるんだろうなぁと感じています。
 「廃棄物処理業許可」についても、時折「あの行為は無許可では無いのか?」といったクレームが寄せられることがあります。そういった時は、まずは3要素「不特定多数」、「反復継続」、「営利目的」について調査し、それでも判別が着かないケースでは「社会性をもって反復継続的に行われる行為」かどうかを見ていました。まぁ、処理料金を徴収してだれかれ問わず廃棄物を受け入れている、なんてパターンは、誰が見ても「そりゃ、許可、要るだろ」と判りますけどね。
 さて、次が、そもそも「処理業」の「処理」とはなんだ?、ですね。
 日本語の辞書によると「処理とは物事を取りさばいて始末をつけること。」とあるようです。
 廃棄物処理法は昭和45年に誕生し、平成3年の時に大改正が行われたのですが、
 「処理業」はこの大改正から、条文では「処理業」=「処分業」+「収集運搬業」とされました。
 ちょうどその時期に発出された「通知」にこのような記載があります。

 感染性廃棄物の適正処理について(平成四年八月一三日通知、関係箇所のみ抜粋)
 廃棄物の処理とは、廃棄物が発生してから最終的に処分されるまでの行為、すなわち、廃棄物の「分別」、「保管」、「収集」、「運搬」、「再生」及び「処分」までの一連の流れの行為をいう。
 また、この「処分」には、廃棄物を物理的、化学的、生物学的な方法により、無害化、安全化、安定化させるために行う「中間処理」と、最終的に自然界に還元することを意味する「最終処分」とがある。なお、最終処分には「埋立処分」と「海洋投入処分」がある。

 現実には、なかなか判断に苦しむようなグレーゾーンもありますが、「処理」は概ねこんなところかなぁと思います。

(2024年10月)

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