大栄環境グループ

JP / EN

廃棄物処理業許可

Author

BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

 「初めて廃棄物処理に関係する」という方々を対象に「そもそも、なんで、こんなルールになっている?」という視点で廃棄物処理を眺めてみるという、おおらかな感じでお付き合いいただきたいコラムです。
 ここまで、「一般廃棄物、産業廃棄物の区分」や「特別管理」について話をしました。今回は第3回で概略を説明しました「処理業許可」を掘り下げて勉強していきたいと思います。
 廃棄物処理法の「処理業許可」は、大きく6種に分かれます。
 1.一般廃棄物収集運搬業
 2.一般廃棄物処分業
 3.普通の産業廃棄物収集運搬業
 4.普通の産業廃棄物処分業
 5.特別管理産業廃棄物収集運搬業
 6.特別管理産業廃棄物処分業
 です。なぜ、このように分類しているかですが、いくつか要因があるようです。
 まず、一般廃棄物と産業廃棄物を別にしている要因ですが、これはそもそも「理念」が違うからでしょう。
 産業廃棄物は純粋に「排出事業者責任」、「廃棄物を排出しているあなたが自分の責任で処理するべきである」という「理念」です。
 一方、一般廃棄物の典型的な「物」は、第2回と第5回にもちょっと書きましたが「日常生活から出てくるうんち」「おしっこ」「生ごみ」です。そのため、産業廃棄物のように純粋に「排出事業者責任」、「廃棄物を排出しているあなたが自分の責任で処理するべきである」という「理念」では処理ができません。
 皆さんも「あなたが出したウンチなんだからあなたが処理してください」と言われても、現代の世の中ではできないですよね。
 そこで、「国民一人一人の個々人では処理ができないから、みんなで共同で処理しよう」となる。この「国民の共同体」でもっとも小さい公共団体が「市町村」。地方自治法などでは「基礎的地方団体」などと呼ぶようですが。
 ですから、「廃棄物の処理」という視点では「市町村」は「一人一人の国民の集合体」という面があるのです。そこで、一般廃棄物については排出者である国民の集合体である「市町村」に処理責任を負わせている、ということのようです。
 そこで、一般廃棄物処理業の許可権限は市町村、産業廃棄物の許可権限は国から法律上業務を委託されている(「法定受託事務」)都道府県としたようです。
 次に、「収集運搬業」と「処分業」を分けたのは、その業務内容、必要な機材、知識が大きく異なっているためと思われます。
 「収集運搬業」は、もちろん廃棄物処理についての基本的な知識は必要ですが、「運ぶだけ」ですので、中間処分、最終処分に求められる「物理的」「化学的」「生物学的」な処理機材や知識よりは車両・運搬等の要素が大きいからでしょう。加えて、後述しますが「処理業許可」は、その行為を行う地域(自治体)ごとに許可が必要ですので、「処分業(中間処分、最終処分)」は、その処理施設が設置されている自治体1つだけの許可で済みますが、「運搬」は積み下ろしを行う自治体毎の許可が必要です。また、収集運搬は排出事業者に出向く必要があることから、必要な業者数が違ってきます。
 現に、現在、産業廃棄物の収集運搬業許可の数は約23万件、一方、処分業の許可件数は約1万3千件となっています。このようなことから、「収集運搬業」と「処分業」を別にしたのかなぁと思っています。
 また、「普通の産業廃棄物処理」と「特別管理産業廃棄物」は、前回(第7回)お話ししたようには、そのリスクが異なっているということから、別許可にしたのだと思います。
 ここで疑問に思う人もいらっしゃると思います。それは、「特別管理一般廃棄物」という分類はあるのに、「特別管理一般廃棄物処理業」は制定していないという点です。
 これには特殊事情があります。まず、「特別管理一般廃棄物」は「一般廃棄物」とは言うものの、現在では普通の家庭生活からはまず発生しない、特殊な「物」ばかりなのです。
 そのため、第14条の4第17項で「特別管理産業廃棄物処理業の許可業者は、(性状的に同じ種類の)
 特別管理一般廃棄物の処理を行うことができる」旨を規定していますので、現実社会としては、それ程支障のある事態にはなっていません。(法令の解釈や実運用上課題はありますが。詳細に興味のある方は拙著「廃棄物処理法、許可不要制度」等を参照して下さい。)
 ちなみに、平成3年の大改正(平成4年7月施行)までは、「特別管理」自体がなかったこと、「処理業」は収集運搬と処分を包含していたことも有り、「処理業許可」は、「一般廃棄物処理業」と「産業廃棄物処理業」の2種類しかありませんでした。
 次に、この「処理業許可」ですが、「どこで有効でしょうか」という話をします。
 前述のとおり、一般廃棄物は市町村、産業廃棄物については都道府県の許可にしています。日本には数多くの許可や免許という制度があり、一つの自治体で降ろした許可や免許が日本全国で有効という制度もあります。
 たとえば、運転免許証なんかはそうですね。栃木県の公安委員会の運転免許証で山形県では自動車の運転が出来ないってことは無いですね。日本全国有効なわけです。
 ところが、廃棄物処理業の許可はそうじゃないんです。許可を下ろした自治体だけで有効。だから、栃木県の産業廃棄物の収集運搬業の許可を持っていたとしても、山形県ではなんの役にも立たない。山形県で産業廃棄物を扱うなら山形県の許可を取りなさい、となるのです。ただし、通過するだけの県の許可は不要です。

廃棄物処理業許可1

<対話で学ぶ廃棄物処理法の挿絵から>

 なので、日本全国で産業廃棄物の収集運搬を行う時は一都一道二府43県の許可が必要になります。
 大変なのは一般廃棄物の方です。一般廃棄物は市町村の許可ですから、市町村毎に許可を取らなくてはならず、日本全国で一般廃棄物の収集運搬を行う時は全国約1700市町村の許可が必要ということにになります。事実上「不可能」と言ってもいいでしょうね。これが昔ながらの「うんち」「おしっこ」「台所からの食べ残し」程度の話なら地元の2、3の市町村の許可でもやれていたでしょうけど、バイオマス発電や広範囲でのリサイクル事業となると相当困難になってきます。
 そこで、近年は一定の要件の下に「許可不要」とする制度も多くなってきました。各種リサイクル法や環境大臣の広域認定制度などがこれにあたります。(詳細は、拙著「許可不要制度」参照(^o^))
 さて、先ほど「産業廃棄物は都道府県の許可」と述べたのですが、一部例外があります。
 それは、「廃棄物処理法政令市」です。これは廃棄物処理法の政令で規定している「市」で、ほとんどの中核市以上がこれになります。現在、全国では70以上の政令市があります。
 この政令市の中で「処分業(中間処分、最終処分)」を行う時、さらに「積替保管」を含んで収集運搬を行う時は政令市の許可、となります。
 積替保管というのは、排出事業者からは軽トラなどで集め、遠くの処分場に運ぶために大型ダンプに積み替える。いわゆるストックヤードですね。この積替保管施設が政令市の中にある場合は、都道府県の許可ではなく、政令市の許可、となります。

廃棄物処理業許可2

<対話で学ぶ廃棄物処理法の挿絵から>

(2025年03月)

PAGE TOP