2024年通常国会において、「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」が審議中です(2024年4月24日時点)。
本法は、2024年2月16日に中央環境審議会から環境大臣に対して意見具申された「脱炭素型資源循環システム構築に向けた具体的な施策のあり方について(意見具申)」を踏まえたものです。
この意見具申では、脱炭素型資源循環システムの構築が急務であり、その実現に向けて制度的・予算的対応を総合的かつ速やかに講じていくべきであると述べています。
そのシステムとして、高度な資源循環の取組みに対して国が認定を行い、廃棄物処理法に基づく各種手続きの迅速化を図ることを求めています。
また、設備導入支援などの各種投資促進策を実施すべきと提起しています。
本法の概要は、次の図表の通りです。
「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」の概要
法律名「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」 | |
基本方針 |
○再資源化事業等の高度化を促進するため、国として基本的な方向性を示し、一体的に取組を進めていく必要があることから、基本方針を策定、公表する。 ※「再資源化事業等の高度化」: 4つの措置を講じることにより、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出量の削減の効果が増大すること |
再資源化の促進 | ○資源循環産業全体の底上げを図るため、再資源化事業等の高度化の促進に関する廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を策定、公表する。 |
○特に処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化の実施状況を報告させ、これを環境大臣が公表する。 | |
再資源化事業等の高度化の促進 | ○次の先進的な再資源化事業等の高度化の取組みを環境大臣が認定する制度を創設する
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●気候変動対策を強化するための法律
本法における「再資源化」とは、廃棄物の全部又は一部を部品又は原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすることであり、一般的な意味内容と言えます。
しかし、「再資源化事業等の高度化」とは、物の製造、加工又は販売の事業を行う者の需要に応じた再資源化事業の実施その他の再資源化事業の効率的な実施のための措置など、4つの措置を講じることにより、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出量の削減の効果が増大することをいいます(第2条第1項、第2項)。
つまり、本法では、単なる再資源化の拡大を図るだけでなく、「再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出量」を削減させるという、気候変動対策の促進を求めているのです。
本法のタイトルには、「気候変動」「地球温暖化」「脱炭素」などの文言は見られないとはいえ、意見具申を踏まえた気候変動対策の強化を定めた法律なのです。
実際に、我が国の温室効果ガス排出量を削減することを考えたとき、全排出量のうち資源循環が貢献できる余地がある部門の割合は36%になるとされており、決して小さなものではありません。
●産廃処分業者に判断基準に基づく取組みを求め、報告義務を課す
本法では、再資源化事業等の高度化を促進するため、国が基本方針を策定します。目指すべき目標を定め、資源循環産業の発展に向けた施策の方向性を提示します。
環境大臣は、資源循環産業全体の底上げを図るため、再資源化事業等の高度化の促進に関する廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を策定します。
この判断基準の詳細は、環境省令で定めることになっています。今後、廃棄物処分業者は、判断基準に沿った取組みが求められることになります。
また、特に処分量の多い産業廃棄物処分業者の再資源化の実施状況を報告させ、これを環境大臣が公表します。
対象となる要件は、産業廃棄物処分業者であって、その処分を行った産業廃棄物の数量が「政令で定める要件」とされています。
判断基準に照らして著しく取組みが不十分であるときは、環境大臣は必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができ、正当な理由がなく勧告に従わなくなった場合は、措置命令を出すこともできます。違反した場合は、50万円以下の罰金に処するなどの罰則もあります。
●認定事業者には廃棄物処理法の特例を措置
さらに、先進的な再資源化事業等の高度化の取組みを環境大臣が認定する制度を創設します。
具体的には、次の3つの事業が認定の対象となります
- ①高度再資源化事業: 需要に応じた資源循環のために実施する再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分の事業
- ②高度分離・回収事業: 廃棄物から高度な技術を用いた有用なものの分離及び再生部品又は再生資源の回収を行う再資源化のための廃棄物の処分の事業
- ③再資源化工程の高度化: 廃棄物処理施設の設置者であって、その施設において、再資源化の実施の工程を効率化するための設備その他の工程から搬出される温室効果ガスの量の削減に資する設備の導入
これらの認定を受けると、廃棄物処理法の特例を措置されます。
具体的には、①・②については、廃棄物の収集運搬業や処分業の許可を受けることなく、再資源化に必要な行為について業として実施することができます。
③については、廃棄物処理法に基づく施設変更の許可が不要となります。
国としては、上記①~③の事業に対して必要な支援をしていき、再資源化事業等の高度化を促進するということでしょう。
このように脱炭素社会の実現に向けて、資源循環産業にも変革を求め、国がテコ入れをしていくことになりました。
排出事業者にとっても、自社から発生した廃棄物等の処理などに伴う温室効果ガスの排出抑制には今後ますます留意せざるをえないので、本法の今後の動向に目を離してはならないでしょう。
◎「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/press_02916.html
(2024年05月)