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蛍光灯が2027年末までに製造禁止へ ~LEDへの切替えを計画的に進め、脱炭素の潮流に乗る

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 2024年12月、蛍光灯が2027年までに製造禁止されるというニュースが大きく報じられました。

 これは、同月24日、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令」(水銀汚染防止法施行令)が閣議決定され、27日に公布されたことを受けたものです。

 健康被害や環境汚染となる水銀を国際的に規制しようと、2003年、「水銀に関する水俣条約」(水俣条約)が採択されました。我が国は2016年に批准し、同条約は2017年に発効しています。
 条約では、その前文で水俣病の教訓を取り上げつつ、水銀鉱山からの一次産出、輸出入の規制、水銀添加製品の製造・輸出入、水銀を使用する製造工程などの規制を定め、途上国への資金メカニズムを創設するなど、包括的な水銀対策を定めました。

 わが国では、この条約を踏まえ、国内対策を強化しました。
 大気汚染防止法を改正し、廃棄物焼却炉等の水銀排出施設への規制措置を定めたり、廃棄物処理法施行令等を改正し、蛍光灯などの水銀使用製品産業廃棄物の廃棄方法を変えたりしています。
 その対策強化の一環として、今回の法改正の対象である水銀汚染防止法が制定され、条約の発効とともに施行されています。

 水銀汚染防止法では、水銀使用製品の製造等の規制措置があります。
 このうち、「特定水銀使用製品」については、製造の禁止を定めています。対象となる製品は、酸化銀電池、空気亜鉛電池、スイッチリレー、蛍光ランプ、非電気式計測器などであり、製品ごとに水銀含有量の基準値等があります。
 なお、「外国為替及び外国貿易法」(外為法)により、これらの輸出入も原則禁止とされています。

 今回の水銀汚染防止法施行令の改正では、次の図表の通り、一般照明用の蛍光灯とともに、水銀を含む電池等を特定水銀使用製品に追加したものです。

製造禁止となる品目(蛍光灯を含む一覧)

品目 規制開始
1 ボタン形亜鉛酸化銀電池及びボタン形空気亜鉛電池 2026年1月
2 一般照明用のコンパクト形蛍光ランプ(CFL.ni) 2027年1月
3 一般照明用の電球形蛍光ランプ(CFL.i) 2026年1月又は2027年1月
4 電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL) 2026年1月
5 電気式の圧力計(溶融圧力トランスデューサ、溶融圧力トランスミッターと溶融圧力センサ)※1 2026年1月
6 一般照明用の直管形蛍光ランプ(LFLs) 2027年1月又は2028年1月
7 2、3、6以外の一般照明用の蛍光ランプ(環形蛍光ランプ等)(NFLs) 2027年1月又は2028年1月

※1 水銀を含まない適当な代替製品が利用可能でない場合において、大規模な装置に取り付けられたもの又は高精密度の測定に使用されるものを除く。


出典:環境省資料をもとに作成

 このうち、各種の蛍光灯の規制開始日と該当する蛍光灯の型番例を示したものは、次の図表の通りです。

製造禁止となる品目(蛍光灯を含む一覧)

ランプの種類 電球形蛍光ランプ コンパクト形蛍光ランプ 直管形蛍光ランプ 蛍光ランプ(左記以外)
●改正前
政令制定時(規制開始日)
30W以下、水銀 5mg超(2018年1月) <三波長形蛍光体>60W未満水銀 5mg超
<ハロりん酸塩蛍光体>40W以下水銀 10mg超(2018年1月)
規制無し
●改正後
2024年政令改正により追加されたもの(規制開始日)
30W以下、水銀含有5mg以下(2026年1月) 30W以下、水銀含有5mg以下(2027年1月) <三波長形蛍光体>(上記を除くすべて)(2028年1月)
<ハロりん酸塩蛍光体>(上記を除くすべて)(2027年1月)
<三波長形蛍光体>全て(2028年1月)
<ハロりん酸塩蛍光体>全て(2027年1月)
30W超、全て(2027年1月)
蛍光ランプ
形番例
EFA、EFG、EFD、EFT FPL、FDL、FML、FPX、FDX、FHT、FHP FL、FLR、FHF、FSL FCL、FHD、FHC

出典:経済産業省資料をもとに作成

 これらの図表の通り、2027年末までに、一般照明用の蛍光灯などの製造・輸出入が段階的に禁止されることになります。

 注意すべき点としては、次のことがあると思います。

  • ○「蛍光灯の製造禁止」などのタイトルで大きく報道されたが、今回の禁止は蛍光灯に限られているものではない。2027年までに禁止対象となるものには、ボタン形亜鉛酸化銀電池及びボタン形空気亜鉛電池、電気式の圧力計(溶融圧力トランスデューサ、溶融圧力トランスミッターと溶融圧力センサ)もある。

  • ○禁止される行為は、これらの製造・輸出入の禁止であり、事業所での使用そのものが禁止されたわけではない。期限前に製造された在庫製品の販売も禁止されたわけではない。

  • ○期限が設定されたことにより、2027年までに対象製品が手に入りにくくなり、いずれ手に入らなくなる。

 工場やオフィス等で蛍光灯をLED照明に切り替える動きは続いているものの、蛍光灯をまだ使用している企業は、一部を含めれば少なくないと言えるでしょう。
 法改正を踏まえて、速やかにLED照明に切替える計画を立て、実施すべきでしょう。

 器具交換やランプ交換など様々な方法がありますが、工事を要する場合もあります。不適切な取付けにより火災等の事故が発生することもあります。あらかじめ調査することが必要です。

 周知の通り、LED照明は、蛍光灯と比べて、消費電力が少なく、寿命が長いものです。
 例えば、一般社団法人日本照明工業会のウェブサイトによれば、工場・倉庫で使用するベース照明タイプの照明をLEDに切替えると、約72%の省エネ率となり、年間電気料金が約67万円削減できる試算の事例も紹介されています。
 これは、脱炭素(カーボンニュートラル)の視点からもその切替えは大きなメリットがあるといえるでしょう。

 まだ切替えていない企業では、水銀規制の強化と脱炭素の動きを踏まえ、急ぎその対応が求められています。

◎「「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/press_04170.html

◎「規制の対象となる製品について」(経済産業省)
⇒ https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/mercury/seihin.html#FLAMP

(2025年02月)

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