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「脱炭素」で、資源有効利用促進法も改正 ~GX推進法・資源有効利用促進法の改正②

Author

環境コンサルタント
安達宏之 氏

 前号では、2025年2月に閣議決定されたGX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)と資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律)の改正法案のうち、GX推進法の改正について解説しました(「二酸化炭素の排出量取引を義務化へ ~GX推進法・資源有効利用促進法の改正①」参照)。
 今号では、後者の資源有効利用促進法の改正について解説します。

 資源有効利用促進法は、平成12年に制定された法律です。資源が大量に使用されていることと、使用済物品等や副産物が大量に発生していること、その相当部分が廃棄されている状況を踏まえて制定されました。

 主に10業種・69品目について、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取組みを求めています。
 主務大臣は判断基準に照らして事業者に指導・助言ができます。生産量や販売量が一定規模以上の事業者に対する勧告や命令、命令違反への罰則の規定もあります。

 今回の改正内容に入る前にまず確認すべきは、本法の改正が脱炭素に関連した法律であるGX推進法とセットで改正されるということです。

 従来は、気候変動と資源循環は分けて論じられ、制度設計が行われてきました。しかし、最近では、カーボンニュートラル(脱炭素)、サーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャーポジティブ(自然再興)の3つを統合的に捉えて政策を立案するというアプローチが増えてきました。

 今回の改正は、まさにこのアプローチを取り入れ、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを統合的に捉え、サーキュラーエコノミーをさらに促進させるためのものです。

 改正法案の概要は、次の図表の通りです。

改正資源有効利用促進法の概要

1 再生資源の利用義務化
  • 〇政令で「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」を指定する
    ※対象製品は未定(プラスチック等の再生材を想定)
  • 〇主務大臣は、対象製品の製造・販売等をする事業者の判断基準を定める(事業者は判断基準に沿って対応)
    ➡主務大臣は指導・助言
  • 〇対象製品の生産・販売量が一定規模以上の事業者に、計画の提出及び定期報告を義務付ける
    ※規模要件は未定(政令で定める)
    ➡未提出等の場合、罰金。また、主務大臣の命令違反にも罰金
2 環境配慮設計の促進
  • 〇資源有効利用・脱炭素化の促進の観点から、特に優れた環境配慮設計の認定制度を創設
    ※解体・分別しやすい設計、長寿命化につながる設計等を認定
3 GXに必要な原材料等の再資源化の促進
  • 〇事業者による回収・再資源化が義務付けられている製品について、高い回収目標等を掲げて認定を受けた事業者に、廃棄物処理業の許可を不要にする
4 サーキュラーエコノミーコマースの促進
  • シェアリング等のサーキュラーエコノミーコマース事業者の類型を新たに位置付け、対象事業者に資源の有効利用等の観点から満たすべき基準を設定

 改正事項は主に4つあります。
 1つ目は、再生資源の利用義務化です。
 「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」の製造・販売等をする事業者の判断基準が定められ、対象事業者はこの判断基準に沿った対応が求められます。主務大臣は、必要な指導・助言ができます。

 この対象製品は政令で定められることになっています。
 本改正を審議した経済産業省の審議会の報告書では、プラスチック等の再生材を想定しています(末尾の参考資料を参照)。

 対象製品の生産・販売量が一定規模以上の事業者には、計画の提出や定期報告が義務付けられます。未提出等の場合は罰則の対象となります。
 計画等の提出義務となる規模要件は政令で定められます。

 対象事業者の取組みが著しく不十分な場合は、主務大臣による勧告や命令の対象となります。命令違反には罰則もあります。

 2つ目は、環境配慮設計の促進です。
 資源有効利用・脱炭素化の促進の観点から、特に優れた環境配慮設計の認定制度が創設されます。環境配慮設計とは、解体・分別しやすい設計、長寿命化につながる設計等を指します。

 「対象指定製品」の製造事業者等は、希望する場合、主務大臣に設計認定を申請します。主務大臣は、資源有効利用や脱炭素化促進に関する設計指針に適合してときは設計認定をします。

 対象指定製品とは、本法で従来から定められている指定省資源化製品(現在は家電、パソコン等)、指定再利用促進製品(現在は家電、複写機等)とともに、今回の法改正で追加される指定脱炭素化再生資源利用促進製品となります。

 認定を受けると、認定製品にはその旨の表示ができるようになります。また、設備投資への金融支援などの特例も構想されています。

 3つ目は、GXに必要な原材料等の再 資源化の促進です。
 本法では、従来から、事業者による自主回収や再資源化が義務付けられている製品を「再資源化製品」として、認定制度を設けていました。
 今回の法改正により、高い回収目標等を掲げて認定を受けた事業者に、廃棄物処理業の許可を不要にする特例措置が新たに設けられることになりました。

 4つ目は、サーキュラーエコノミーコマース(CEコマース)の促進です。
 CEコマースとは、シェアリング、サブスクリプションなどのサービス化、リペア、リマニュファクチャリング、リファービッシュなどの長期利用、リユースなど二次流通を指します。
 こうした事業を行う者の類型を新たに位置付け、資源の有効利用等の観点から満たすべき判断基準を新たに設定することになりました。

 このように、資源有効利用促進法は、「脱炭素化」を組み込み、措置内容が強化されることになります。
 また、大量生産・大量消費・大量廃棄の一方通行の経済(線形経済)から、循環経済(サーキュラーエコノミー)に移行させるという国の「経済政策」の大きな変化の中で、本改正もあることを見逃してはなりません。単なる「環境政策」の変化だけではないのです。

 企業としても、廃棄物・資源循環対策を行う際には、「脱炭素化」の観点からの有効性を検討事項に加えるとともに、ビジネス環境の変化も見据えて対策を検討することが必須となります。

◎「「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました」(経済産業省)
⇒ https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250225001/20250225001.html

◎「成長志向型の資源自律経済戦略の実現に向けた制度見直しに関する取りまとめ」(産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会)
⇒ https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/pdf/20250213_1.pdf

(2025年05月)

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