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現場責任者・担当者の教育機会をつくる

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 機械器具を製造する企業を訪問しました。全国各地に数カ所の工場があります。
 環境法対応の仕組みとして、本社は自社に適用される法規制を一覧表にまとめるとともに、法改正の情報を工場に配信していました。また、各工場が法順守の活動を行い、年数回の順守評価のチェックも実施していました。

 各工場の環境法順守状況を確認したところ、ある工場ではほぼしっかりと順守できていました。しかし、別の工場では、届出が漏れていたり、産業廃棄物の保管場が荒れていたり、改正フロン排出抑制法の対応ができていなかったりと、課題が次から次に出てきました。

 課題のあった工場の方々と議論した際、工場長や現場の責任者のご発言から、あまりコンプライアンスに関心がないのかなと感じました。また、ご担当者は環境法順守における基本的な対応事項についてもご存じでないことが多く、力量に課題があると感じざるをえませんでした。
 本社の方に確認したところ、本社では、本社事務局内でのみ環境法教育を実施しているということでした。

 法順守すべき責任者や担当者の環境法対応の力量に課題のある企業は少なくありません。
 組織への環境法順守の仕組みの整備も求める国際規格ISO14001では、2015年版において、担当者の力量確保を要求事項の一つとしています。その効果もあり、力量確保のための環境法教育の機会をつくる企業が増えました。しかし、上記のように、未対応の企業もまだまだあります。

 次の図表のように、環境法教育のポイントと仕組みとしては、次のようなものが考えられ、現に各地の企業で実施されています。

環境法教育のポイントと仕組み(例)

仕組み(例)教育のポイント
実際に順守を担う者への教育訓練を定期的に行う 現場で業務として法順守に関わる社員向けの定期的な教育(法規制一覧表等により、業務と法の関係性を確認)
②法順守の評価をする者への教育訓練を定期的に行う 順守評価の実施前に教育を実施(特に上記①の者が評価作業を実施する場合は、セルフチェックになるので注意)
それぞれの階層の責任者への法順守認識強化の機会を定期的にもつ 法令違反のリスクを認識させるプログラムによる教育を実施
④上記それぞれの仕組みが機能しているかを定期的にチェックする 上記①~③が適切に運用されていることをチェックし、法改正等も把握できる力量確保のための教育を実施

 多くの企業において、ISO14001やエコアクション等の事務局に所属する社員に対しては、外部の環境法セミナーなどで教育を受けさせるなど、教育機会の確保が行われていると思います。

 ところが、現場責任者や現場担当者に対する教育が欠如しているケースが少なく、上記図表のように、その対策が求められているのです。図表に沿って説明していきましょう。

 まず、1つ目は「①実際に順守を担う者への教育訓練を定期的に行う」ことです。

 事業所の現場では、例えば、排水設備や化学物質の管理、廃棄物保管や危険物保管、フロン内蔵機器の点検など、業務として法順守に関わる社員が少なくありません。
 こうした社員に対しては、個々の業務が法令に関連していることを認識させ、“現場の都合”などで法に違反しないように繰り返し周知することが求められます。

 具体的な教育方法としては、法規制一覧表や各種手順書を参照させながら、自らの業務と法規制の関係性を確認させ、その順守の必要性を周知することなどが考えられます。

 2つ目は、「②法順守の評価をする者への教育訓練を定期的に行う」ことです。

 日頃の順守業務と、この評価作業を実施する社員が同じ場合である企業は少なくありません。そうなるとセルフチェックになり、常識的に考えてチェックが緩くなってしまいます。それを防ぐためにも、順守評価の実施前に本社事務局等が教育を実施するとよいでしょう。

 また、その際には、評価の結果、課題が出たとしても、それは「失点」では決して無く、外部から指摘される前に自ら課題を抽出できた「成果」であることを、本社事務局等が担当社員に伝えることも大切です。

 3つ目は、「③それぞれの階層における責任者への法順守認識強化の機会を定期的にもつ」ことです。

 これは、詳細な法規制の内容を教育するというプログラムを実施することではありません。法令違反には、罰則適用はもちろん、社会的な批判によるリスクもあり、経営上のリスクであるので、それを認識させるプログラムによる教育を実施すべきです。短い時間でもよいでしょう。

 ただし、その場では、ただ本社担当者が話すだけではなく、その教育の場には経営層にも関わっていただき、本業上のリスク回避のために環境法順守が必要であることを認識させる仕掛けが効果的と思われます。

 最後の4つ目は、「④上記それぞれの仕組みが機能しているかどうかを定期的にチェックする」ことです。

 本社事務局等の主管部門により、上記①~③が適切に運用されていることをチェックするとともに、法改正動向なども把握しなければなりません。そのための力量を確保するための教育が必要です。

 継続的に環境法順守をするには、仕組みが不可欠ですが、教育も仕組みの中にしっかり位置付けなければ形骸化します。
 くれぐれも、現場に丸投げすることのないようにしたいものです。

参考文献
安達宏之『企業と環境法 ~対応方法と課題』(法律情報出版)
http://www.kankyobu.com/sp/book3.htm

(2020年09月)

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