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法令違反を見つけたときにどうするか?

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

ある鉄鋼業の工場を訪問し、工場内の設備を確認していたところ、水質汚濁防止法の特定施設に該当するものがいくつか出てきました。

「結構、対象設備があるんですね」と話すと、ご担当者は、ため息をついて語り始めました。

「実は昨年の内部監査で、このうち、〇〇と△△の設備について届出をしていないことが発覚したんです。でも、設置したのは既に10年以上前ですし、今さら行政に言うわけにもいかず、どうしたらいいものかと…」

「え? そのまま届出していないんですか?」

「はい……」

法令順守は、企業経営の「基本のキ」です。
しかしながら、時に法令違反が起きることも無いとはいえません。特に、環境法については、軽微なものを含めれば、法令違反が起きやすい分野です。

冒頭の事例のように、筆者も、率直に申し上げて、しばしばそうした現場を見てきています(なお、冒頭の工場では後日、行政への届出を済ませました)。

では、違反を見つけたとき、企業(担当者)はどのように対応すべきなのでしょうか?

次の図表では、環境法違反が発覚した際の対応方法の例をまとめたものです。
(なお、以下の記述は、法令違反をしないことがそもそも基本であり、違反した場合は速やかに是正すべきであることを前提にしています。また対応方法も一つの例にすぎないことをあらかじめお断りしておきます。)

環境法違反のときの対応方法の例

No.環境法違反の事例汚染の有無対応方法の例
1 工場近隣住民から騒音の苦情があったので測定したところ、騒音規制法の規制基準を超過していた(年1回の測定では超過していない)。 あり 重大な違反である。直ちに行政に報告し、謝罪と早急な対策を講じることを約束する。後日、行政の指導の下に対策を実施する。
2 工場近隣住民から騒音の苦情があったので測定したところ、騒音規制法の規制基準を超過していた(年1回の測定では超過していない)。 あり 違反である。住民に謝罪と報告を行うとともに、直ちに行政に報告し、対策を協議する。
3 水質汚濁防止法の特定施設の届出について、一部の設備の届出を行っていなかった。事業場の排水基準順守には問題なかった。 なし 違反である。早急に、再発防止策の方向性をまとめ(未届出の施設のリストアップ、設備導入時の法令チェックの仕組み整備など)、行政に報告し、対策を協議する。
4 産廃の保管場所ではない所に産廃が置かれていた。仮置き場としていたが、いつの間にか恒常的な置き場と化していた。飛散・流出のおそれはなかった。 なし 違反である。早急に、仮置き場を法令上の産廃保管置き場と位置づけ、所定の看板や囲いを設置する。特に、飛散・流出が発生しないかどうかチェックする。また、必要に応じて行政に報告し、対策を協議する。

これらの事例は、いずれも筆者が過去に全国様々な工場・事業所で見聞きしてきたものです。
いずれも法令違反であり、対策を講じなくてはいけないものですが、それを実施するに際しては特に環境汚染の有無に注目するとよいでしょう。

1つ目の事例は、大気汚染防止法違反のものです。

ばい煙排出基準を継続して超過していることを隠すために、測定記録を改ざんしていたというものなので、悪質な事案と考えるべきでしょう。
10年以上前、大手企業においてもこうした事案が次々に発覚し、大気汚染防止法や水質汚濁防止法が改正され、改ざん防止への措置が強化されました。

この場合は、悪質であり、かつ、現実に環境を汚染している(基準を超えている)ことになりますので、直ちにできる限りの対策を講じるべきです。
一般的には、直ちに行政に報告し、謝罪と早急な対策を講じることを約束することでしょう。

2つ目の事例は、騒音規制法違反のものです。
年1回の測定では、基準値を超えていなかったものの、近隣住民から騒音の苦情があったので測定したところ、基準を超過していたというものでした。

これも環境汚染の有無で考えれば、基準を超えているので直ちに対応が必要です。
しかも近隣住民の指摘があったことを踏まえれば、持続的な操業も視野に入れ、行政への報告とともに、住民への謝罪を含む地域コミュニケーションも求められると思います。

3つ目の事例は、水質汚濁防止法違反のものです。
一部の特定施設を届出していなかったというものです。

環境汚染の有無で考えれば、事業場からの排水そのものに問題がないということであれば、汚染は生じていないことになります。
そこで、一般的に言えば、早急に、未届出の施設を社内でリストアップするともに、設備導入時の法令チェックの仕組みを整備するなど、現状把握と再発防止策を取りまとめたうえで、行政に報告し、対策を協議するとよいでしょう。

4つ目の事例は、廃棄物処理法違反のものです。
産業廃棄物の保管場所ではない所に産廃が置かれていたものであり、同法の産廃保管基準に抵触します。

環境汚染の有無で言うと、飛散・流出のおそれはなかったということなので、汚染は生じていません。産廃保管基準のうち、掲示板や囲いの設置を行っていないことが違反箇所となります。

この場合は、早急に、仮置き場を法令上の産廃保管置き場と位置づけ、所定の看板や囲いを設置することが求められるでしょう。
また、飛散・流出が発生しないかどうかは繰り返しチェックすべきです。現場の報告だけに基づき「飛散・流出なし」と判断せず、第三者的な視点でのチェックを行うことが無難です。そのうえで、必要に応じて行政に報告し、対策を協議するとよいでしょう。

一言で「法令違反」と言っても、その内実は様々です。
もちろん、できるのであれば、すべての法令違反に対して直ちに対応すべきです。
ただし、重大な違反と軽微な違反を「法令違反」と同列に位置付けて対策を講じてしまうと、重大な違反が霞むリスクがあります。対策にはある種のメリハリが求められると思います。

その際は、「環境汚染の有無はないかどうか」を第一のポイントと捉え、地域や行政との関係性も考慮しながら対策を検討するとよいでしょう。

参考文献
安達宏之『企業と環境法 ~対応方法と課題』(法律情報出版)
http://www.kankyobu.com/sp/book3.htm

(2021年01月)

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